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似た薬の違い 心不全 利尿薬

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『セララ』と『アルダクトン』、同じミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の違いは?~女性化乳房の副作用と相互作用

回答:性ホルモンに関連した副作用の少ない『セララ』、相互作用リスクの低い『アルダクトン』

 『セララ(一般名:エプレレノン)』と『アルダクトン(一般名:スピロノラクトン)』は、どちらも高血圧や心不全に使う「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)」です。

 『セララ』は、性ホルモンに関連した副作用の少ない薬です。
 『アルダクトン』は、他の薬と相互作用を起こしにくい薬です。

 そのため、基本的には『セララ』の方がよく使われますが、他で使っている薬が多く相互作用リスクを避けたい場合などには『アルダクトン』が選ばれます。

 

回答の根拠①:性ホルモン関連の副作用が少ない「エプレレノン」

 「エプレレノン」と「スピロノラクトン」は、どちらもレニン・アンジオテンシン系の最下流にある「アルドステロン」の作用をブロックすることで、血圧を下げたり、心臓や腎臓を保護したりする効果を発揮する「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)」です。

 「スピロノラクトン」は、ミネラルコルチコイド受容体だけでなく、よく似た構造の「アンドロゲン(男性ホルモン)」や「プロゲステロン(女性ホルモン)」の受容体にも作用してしまいます。そのため、「スピロノラクトン」を使っていると、男性では胸が膨らんでしまう女性化乳房、女性では月経不順といった性機能に関する副作用を起こすことがあります。
 一方で「エプレレノン」は、ミネラルコルチコイド受容体だけを選択的に阻害するよう改良されているため、こうした性ホルモンに関連した副作用が大幅に少なくなっています1,2,3)。

 「エプレレノン」や「スピロノラクトン」は、高血圧や心不全などの治療で長期に渡って使い続ける薬です。性ホルモンに関連した副作用が少ない「エプレレノン」は、「スピロノラクトン」よりも治療を挫折しにくく、継続しやすい薬4)と言えます。

 1) N Engl J Med.348(14):1309-21,(2003) PMID:12668699
 2) J Hypertens.29(5):980-90,(2011) PMID:21451421
 3) Ther Adv Chronic Dis.15:20406223241239775,(2024) PMID:38511069

 4) BMC Cardiovasc Disord.24(1):489,(2024) PMID:39271992

 

高血圧や心不全に対する効果は、「エプレレノン」が優れる?

 「スピロノラクトン」と「エプレレノン」の高血圧や心不全に対する効果は、どちらもあまり変わらない3,5)とされてきましたが、近年は「エプレレノン」の方が優れる4,6,7)というデータも増えてきています。
 そのため、特に相互作用リスクが問題にならなければ「エプレレノン」を使う機会が多くなってきています。

 5) Heart Fail Rev.25(2):161-171,(2020) PMID:31364027
 6) Value Health.15(3):420-8,(2012) PMID:22583451
 7) Kardiologiia.64(9):70-79,(2024) PMID:39392269

 

回答の根拠②:CYP3A4の影響を受けない唯一のMRA、「スピロノラクトン」

 現在、MRAとしては4種の薬が用いられています。

※現在使われているMRA
『アルダクトン(一般名:スピロノラクトン)』
『セララ(一般名:エプレレノン)』
『ケレンディア(一般名:フィネレノン)』
『ミネブロ(一般名:エサキセレノン)』

 このうち「スピロノラクトン」以外の薬はすべて代謝酵素CYP3A4によって代謝・分解されます8,9,10)。そのため、CYP3A4阻害作用を持つ薬と併用すると薬の血中濃度が上昇し、高K血症などの副作用を起こしやすくなります。このことから、「スピロノラクトン」以外のMRAは、CYP3A4阻害作用を持つ薬とは併用禁忌や併用注意に指定されています。

 一方で、「スピロノラクトン」の代謝・分解には代謝酵素CYP3A4がほとんど関係しない11)ため、CYP3A4阻害作用を持つ薬と一緒に使っても特に大きな問題にはなりません。つまり、「スピロノラクトン」は併用薬の多い人でも”選択肢から外れにくいMRA”と言えます。

 8) セララ錠 インタビューフォーム
 9) ケレンディア錠 インタビューフォーム
 10) ミネブロ錠 インタビューフォーム

 11) アルダクトンA錠 インタビューフォーム

 

薬剤師としてのアドバイス:性機能に関するトラブルは、早めに医師・薬剤師に相談を

 「スピロノラクトン」による性ホルモン関連の副作用は、基本的に薬を減量・中止すれば1~2ヶ月ほどで元に戻ります。ごく稀に持続するケースもありますが、そういった場合にはホルモン療法による治療もできます4)。

 性機能に関する副作用は、医師や薬剤師にも相談しにくいかもしれません。しかし、薬の副作用としてはかなりメジャーなもののため、「こんな相談をして変に思われないだろうか?」と不安に感じる必要はありません。早く対処した方が早く解決しますので、遠慮なく声をかけてもらえたらと思います。

 なお薬局では、例えば同性の薬剤師を指名することや、個室での相談を願い出るなど、話をしやすい環境を整えてもらうことも可能な場合がありますので、一度相談してみてください。

 

ポイントのまとめ

1. 『セララ(エプレレノン)』は、性ホルモンに関連した副作用が少なく、治療を継続しやすい
2.『アルダクトン(スピロノラクトン)』はMRAで唯一、CYP3A4の影響をほとんど受けないため、併用薬の多い人でも使いやすい
3. 性ホルモンに関連した副作用は、通常、薬の中止・減量で元に戻るため、早めに相談することが大切

 

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

エプレレノンスピロノラクトン
先発医薬品名セララアルダクトン
適応症高血圧症慢性心不全高血圧症(本態性、腎性等)、うっ血性心不全、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫及び腹水、栄養失調性浮腫、原発性アルドステロン症
用法1日1回1日数回
用量高血圧:1日50~100mg
心不全:1日25~50mg
1日50~100mg
薬価収載年2002年1959年
CYP3A4阻害薬との併用禁忌イトラコナゾール、リトナビル、エンシトレルビル等と併用禁忌
(※禁忌指定のないCYP3A4阻害薬と併用する場合、1日25mgを上限とする)
(特に制限なし)
女性化乳房の頻度2)4.5%21.2%
妊娠中の安全性評価オーストラリア基準【B3】オーストラリア基準【B3】
剤型の規格錠(25mg、50mg、100mg)錠(25mg、50mg)、細粒10%
先発医薬品の製造販売元ヴィアトリスファイザー
同成分のOTC医薬品(販売なし)(販売なし)

 

 

+αの情報①:利尿作用の違い

 「スピロノラクトン」と「エプレレノン」は、どちらも100mgで使えば利尿効果はおよそ同じくらいとされています12)。ただ、浮腫に対して保険適用があるのは「スピロノラクトン」だけです8,11)。

 12) Eur J Gastroenterol Hepatol.32(4):535-539,(2020) PMID:32044820

 

+αの情報②:「エプレレノン」をCYP3A4阻害作用のある薬と併用する場合

 CYP3A4阻害作用を持つ薬は非常に多いため、どうしても「エプレレノン」との併用を避けられないこともあります。その場合、「エプレレノン」を1日25mgと最少量で用いるのが一般的8)です。
 しかし、強力なCYP3A4阻害作用を持つ薬(例:リトナビル)の場合、「エプレレノン」を1日25mgの少量で使っていても重篤な高K血症を起こすことがある13)ため、併用は”禁忌”に指定されています。

 13) Int J STD AIDS.32(8):771-773,(2021) PMID:33629924

+αの情報③:アルドステロン・ブレイクスルーに対する効果

 ARBACE阻害薬などの薬は、それぞれの作用ポイントで昇圧システムのレニン・アンジオテンシン系をブロックし、血圧上昇を防ぐ効果を発揮します。ところが、これらの薬を使っていても別のルートからアルドステロンが増えてしまう(アルドステロン・ブレイクスルー)ことがあります。

 「スピロノラクトン」や「エプレレノン」といったMRAは、レニン・アンジオテンシン系の最下流をブロックするため、こうしたブレイクスルー現象による影響も防ぎ、血圧の上昇や心臓・腎臓へのダメージを軽減することができます14,15)。

 14) Hypertension.41(1):64-8,(2003) PMID:12511531
 15) Hypertens Res.36(10):879-84,(2013) PMID:23864056

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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