『ムコスタ』と『セルベックス』、同じ胃薬の違いは?~胃粘膜保護薬の特徴と頓服NSAIDsとの併用
記事の内容
回答:効果がやや高めの『ムコスタ』、副作用が少なめの『セルベックス』
『ムコスタ(一般名:レバミピド)』と『セルベックス(一般名:テプレノン)』は、どちらも胃粘膜を守る胃薬です。
適応症や用法・値段もほとんど同じで、使い分けが必要なほどの大きな違いはありませんが、効果は『ムコスタ』がやや高め、副作用は『セルベックス』がより少なめな傾向にあります。

また、『ムコスタ』は錠剤、『セルベックス』はカプセル剤が中心のため、剤型の好みで選ばれることもあります。
回答の根拠①:「レバミピド」の高めな効果
「レバミピド」と「テプレノン」は、どちらも「胃粘膜保護薬」に分類される薬です。基本的に「胃粘膜保護薬」はPPIやH2ブロッカーといった「胃酸分泌抑制薬」よりも効果はやさしめとされています。
しかし、胃腸障害のリスクを抱えていないNSAIDs使用者など、特定の限定的な条件下では、「レバミピド」はPPIにも劣らない同等の効果を発揮することがあります1)。そのため、「胃粘膜保護薬」の中では「レバミピド」の効果はやや高めと考えられます。

1) Int J Gen Med.15:2835-2845,(2022) PMID:35300126
NSAIDs頓服時に活きる「食事の影響を受けない」という特性
NSAIDsによる胃粘膜障害を防ぐ効果は、「レバミピド」と「テプレノン」の両方で確認されています1,2)が、食後服用が基本の「テプレノン」3)に比べて、「レバミピド」は食事の影響を受けず、空腹時に服用しても効果に影響しにくい4,5)という特徴があります。
NSAIDsはそもそも空腹時を避けて服用する必要がある薬ですが、色々な事情で空腹に近い状態でNSAIDsを服用せざるを得ない場合には、併用する「胃粘膜保護薬」の存在が非常に重要になります。その際、空腹時では効果が弱まる恐れのある「テプレノン」よりも、効果が落ちにくい「レバミピド」の方が良い選択肢になります。

2) Front Med (Lausanne).8:647494,(2021) PMID:33898483/
3) セルベックスカプセル インタビューフォーム
4) Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol.21(6):267-70,(1983) PMID:6885198
5) ムコスタ錠 インタビューフォーム
回答の根拠②:「テプレノン」の少ない副作用
長期使用で骨粗鬆症や腎機能低下のリスクがある「PPI」、高齢者で”せん妄”の副作用が起こりやすい「H2ブロッカー」に比べると、「レバミピド」や「テプレノン」はどちらも副作用が少ない薬です。そのため、長期的な維持療法に使う薬として適しています。
特に「テプレノン」は、多くの研究でほぼ副作用が報告されておらず2)、一過性の軽い副作用すらも経験せずに使えることが多い薬と言えます。

薬剤師としてのアドバイス:剤型の違いも重要
「レバミピド」と「テプレノン」は適応症も用法も薬の値段もほぼ同じで、効果や副作用にも大きな違いはないため、どちらを使っても治療に大きな差は生じないと考えられます。
しかし、現在使われている製剤は「レバミピド」は錠剤、「テプレノン」はカプセル剤が中心です。そのため、こうした”剤型の違い”が重要な選択基準になることもあります。

どちらの薬を選んでも良い状況であれば、より無理なく服用できる剤型を選ぶ、という視点も重要です。
ポイントのまとめ
1.『ムコスタ(レバミピド)』は、特定条件下ではPPIにも負けない効果を発揮することがある
2. 空腹時服用でも効果が減弱しない『ムコスタ(レバミピド)』は、頓服のNSAIDsとも組み合わせやすい
3. 『セルベックス(テプレノン)』は、軽い副作用の心配も少なく、扱いやすい
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
レバミピド | テプレノン | |
先発医薬品名 | ムコスタ | セルベックス |
適応症 | 胃潰瘍、急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(びらん・出血・発赤・浮腫) | 胃潰瘍、急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(びらん・出血・発赤・浮腫) |
用法 | 1日3回 | 1日3回、食後 |
空腹時服用の影響 | 吸収は速まるがAUCには影響なし | AUCが23%低下 |
世界での販売状況 | 東アジア10ヵ国 | 日本、中国、韓国、タイなど |
剤型の規格 | 錠(100mg)、点眼液UD2% | カプセル(50mg)、細粒10% |
先発医薬品の製造販売元 | 大塚製薬 | エーザイ |
同成分のOTC医薬品 | (販売なし) | 『セルベール』など |
+αの情報①:胃粘膜保護薬が「PPI」より優れている点
「PPI」は、胃などの上部消化管を守る効果は高いですが、その反面、腸内細菌に作用することなどから下部消化管には悪影響を与える傾向にあります。実際、NSAIDsに「PPI」を併用していると小腸などの下部消化管で出血が起こりやすくなることが知られています6,7)。
こうした現象は、「レバミピド」や「テプレノン」といった胃粘膜保護薬では基本的に起こらない7)ため、特にハイリスクでない人の場合には、「PPI」よりも胃粘膜保護薬の方が適している可能性があります。

6) United European Gastroenterol J.11(9):861-873,(2023) PMID:37553807
7) Gut Liver.19(2):243-252,(2025) PMID:39748650
+αの情報②:「レバミピド」には目薬もある
「レバミピド」には、ドライアイの治療に用いる点眼薬もあります。『ヒアレイン(一般名:精製ヒアルロン酸)』よりも高い効果を期待できる薬として、『ジクアス(一般名:ジクアホソル)』などとあわせてよく使われています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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