天然由来成分だから安全・安心、これって本当?~天然であることと、安全であることは、全くの無関係
記事の内容
回答:間違い。天然であることと、安全であることは、何の関係もない
天然であることと、安全であることは完全に別の問題で、全く何の関係もありません。
この木の実は赤いから甘いです、というのと同様、何の根拠もありません。
確かに、天然由来成分のものには安全なものも多く存在しますが、危険なものもたくさんあります。同様に、人工でも安全なものと危険なものがあります。
安全か危険かを判断する時に必要な情報は、天然か人工かではなく、その物質そのものの性質です。
回答の根拠①:添加物としての危険性の例
「茶のしずく石鹸」では、「小麦加水分解物」という成分によって、重篤な小麦アレルギーを発症する事例が多数起こりました。
この「小麦加水分解物」とは、小麦を酵素などで分解処理した状態のものです1)。
1) 日本アレルギー学会 「旧・茶のしずく®」アレルギーについてのQ&A
これは、人が小麦に手を加え、人工的に分解物へと形を変えたものではありますが、そもそもの原料である小麦は天然のもののため、「天然由来成分」として扱うことができます。
この事実を例にするだけでも、「天然由来成分=安全・安心」は成り立たないということがわかります。
回答の根拠②:毒としての強さの例
例えば、フグ毒の「テトロドトキシン」は、1~2mgでヒトを死に至らしめる猛毒です。これは、自然界のフグが自然の状態で持っている、「天然」のものです。
一方、「青酸カリ」は150~300mgでヒトを死に至らしめる猛毒です。主に化学合成で作られる人工物ですが、「テトロドトキシン」の方が150倍近くも強い毒です。
毒でも完全な天然のものの方が強力なものがあります。そのため、「天然」の方が「人工」より安全である、ということは成り立ちません。
薬剤師としてのアドバイス:「天然」か「人工」かではなく、物質そのものの性質を確かめる
世の中には、あまりにたくさんのものが存在し、1つずつについて確かな安全性や潜在的なリスクを完璧に確認することは困難です。
確かに、甘味料や保存料など、人工の添加物が増え、環境ホルモンなどが大きく問題として取り上げられたため、人工のもの=危ない、という印象が強く残っているのも無理はありません。
しかし、人工=危ない、天然=安全、という安易な判断は非常に危険です。「天然だから安全・安心」という売り文句は、「赤い木の実は全て甘い」というくらい、論理が大きく破綻していることを知っておくべきです。
天然のどういった成分だから安全・安心なのか、天然のどういった成分だから避けた方が良いのか、自分の身を守るために、きちんと正しい知識を持って選別する必要があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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