『ゲーベン』ってどんな薬?~銀の抗菌作用と、塗布量の目安
記事の内容
回答:銀の抗菌作用を利用した、耐性の生まれにくい塗り薬
『ゲーベン(一般名:スルファジアジン銀)』は、やけど・外傷でできた傷の感染予防に使用する、塗り薬です。
スキンケア用品や衣料品でも、”銀イオンによる抗菌作用や消臭作用”は広く宣伝されていますが、『ゲーベン』も銀による抗菌作用を利用した薬です。
こうした銀による抗菌作用は、耐性菌を生じにくく、また既に耐性を獲得してしまった細菌にも有効であることが特徴です。
『ゲーベン』は、他の塗り薬のように薄く延ばしてしまうのではなく、2~3mmの厚さでしっかりと傷口を覆うように塗布する必要があります。
回答の根拠①:菌と接触して抗菌力を発揮する、銀のはたらき
『ゲーベン』の抗菌効果は、有効成分「スルファジアジン銀」に含まれる銀が、細菌の細胞膜や細胞壁に対して直接作用することで発揮される、と考えられています1)。
このとき、薬が体内に吸収される必要はなく、皮膚の上で銀が菌と接触することで抗菌力を発揮します2)。
1) ゲーベンクリーム 添付文書
2) ゲーベンクリーム インタビューフォーム
銀を使ったスキンケア用品も、スプレーなどで皮膚に散布して効果が発揮されるのは、このためです。
回答の根拠②:耐性菌に対する影響、有効性
一般的に、皮膚に抗菌薬を外用した場合、内服よりも耐性菌が生じやすく3)、また頻繁に使用することで耐性菌が増加することが知られています4)。
3) 日皮会誌.103:643-648,(1993)
4) J Med Microbiol.54(pt 6):557-65,(2005) PMID:15888465
そのため、抗菌薬の外用剤は安易に使用できず、薬の選択も難しいという難点があります。
そんな中で『ゲーベン』は、細菌に対して耐性獲得を30代培養しても、耐性菌が生まれなかったことが報告されています2)。
これは、他の抗菌薬のように酵素を阻害するといった作用ではなく、銀が細胞膜や細胞壁に対して直接作用することが要因と考えられています。
また、『ゲーベン』は既に各種抗生物質に対する耐性を獲得してしまった菌や、多剤耐性菌に対しても、通常の使用量で十分な抗菌力を発揮することが報告されています5)。
5) Antimicrob Agents Chemother.4(5):585-7,(1973) PMID:4791493
薬剤師としてのアドバイス:2~3mmの厚さで、傷をしっかり覆うように使う
『ゲーベン』は、清潔にした指や手袋を使い、2~3mmの厚さで、傷をしっかり覆うように塗布して使います1)。
2~3mmの厚さというのは、思った以上に分厚く、たっぷりと使うことになります。他の塗り薬のように薄く延ばしてしまうと、効果が弱まってしまう恐れがあるので注意が必要です。
また、1日1回塗り直しをしますが、その際には残っている『ゲーベン』を綺麗に洗い落とす必要があります。昨日の薬の上から追加で塗布するわけではありません。
そのため、入浴時に傷口を清潔に洗い流し、入浴後に薬の塗り直しをする、という方法が一般的です。
ただし、特別な事情によって別の指示を受けている場合には、必ず主治医の指示に従うようにしてください。
+αの情報:軽度の熱傷には使えない理由
熱傷(やけど)は、重症度が4段階に分類されています6)。
Ⅰ度熱傷:赤くなって、少し痛むもの
浅達性Ⅱ度熱傷:赤い水ぶくれができ、強く痛むもの
深達性Ⅱ度熱傷:白い水ぶくれができ、痛み麻痺するもの
Ⅲ度熱傷:壊死が生じるもの
6) 日本熱傷学会 「熱傷診療ガイドライン」 (2009)
『ゲーベン』は、Ⅲ度熱傷の第一選択薬に指定されている、強力な局所抗菌薬です7)。
その一方で、軽症の熱傷では痛みを感じることがあるため使用しないこと、という注意書きがされています1)。これは、2004年の再評価の際、効能・効果の”中等度・重症熱傷”が”熱傷”とされたため、軽症熱傷に対する適応が外れてしまった、という背景があります2)。
しかし、そもそも軽症のものであれば、すぐに流水や氷で冷やし、痛みや腫れがあればステロイド外用剤やワセリンを使用する、といった対応で十分とも言えます。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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