『アクディーム』・『ノイチーム』・『レフトーゼ』のリゾチーム製剤が、慢性副鼻腔炎に使えなくなる?~医薬品の再評価とは
回答:再評価指定で、慢性副鼻腔炎に対する効能・効果が削除
2015年12月11日付けで、『アクディーム』、『ノイチーム』、『レフトーゼ』等の「リゾチーム製剤」の適応のうち、慢性副鼻腔炎に対する効能・効果が削除される見込みとなっています1)。1) 日本新薬 リゾチーム塩酸塩製剤「アクディーム」「ノイチーム」「レフトーゼ」の慢性副鼻腔炎に係る効能・効果削除の承認の見込みについて
これは医薬品の再評価指定によるものです。実は効果が無かったものを、これまで薬としてずっと使っていた、という意味ではないことに注意が必要です。
また、気管支炎や気管支喘息に対しては従来通りに使用されます。
回答の根拠①:医薬品の再評価とは~古い医薬品も最新の水準で評価する
医薬品は、一度承認されたからといって、未来永劫そのまま使い続けられるわけではありません。 例えば技術や知識の進歩により、もっと効果の高い薬、もっと安全性の高い薬が登場し、古い薬に存在価値が無くなってしまうことがあります。
また、昔の評価基準では有用であっても、最新の医学・薬学の水準に照らし合わせると有用性が低下するといったケースもあります。
こうした問題を踏まえ、新薬だけでなく、古い薬に対しても常に有効性や安全性を評価する「再評価」という制度があります2)。
2) 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 最審査・再評価業務
「リゾチーム製剤」も、元々はペニシリンを発見したAlexander Fleming(アレクサンダー・フレミング)の研究で見つかった医薬品で、1960年代から使用されている非常に古い薬です。
これ以降、NSAIDsをはじめ炎症や腫れに対して効果の高い薬は多く開発されています。そのため、新しい薬と比較すると、慢性副鼻腔炎の腫れに対する「リゾチーム製剤」の存在価値が低くなってきていたことも事実です。
回答の根拠②:気管支炎や気管支喘息に対する効能・効果は継続
「リゾチーム製剤」には、炎症時の組織修復作用や、膿や痰などの分解・排出作用があります3)。3) ノイチーム錠 添付文書
今回の再評価でも、こうした薬理作用が否定されたわけではありません。
また、気管支炎や気管支喘息、気管支拡張症による痰切りに対しての効能・効果は、先述の再評価によっても有効性と安全性が認められ、その存在価値も十分に評価されています。
そのため、膿や痰を出しやすくする、といった目的では引き続き使用されます。
薬剤師としてのアドバイス:効果が無いのではなく、存在価値の低下と解釈すべき
先述のように、「リゾチーム製剤」は慢性副鼻腔炎に対して全く効果が無かったわけではありません。 しかし、販売開始から50年以上が経過し、医学・薬学の学問水準は大きく進歩しています。
当時は極めて有用な薬であっても、それから50年の間に新しい薬は無数に誕生し、「リゾチーム製剤」の存在価値も大きく変容しています。
そうした背景があり、現在では保険を使ってまで使うものではない、もっと他に良い薬が出ていますよ、といった解釈をするのが妥当です。
+αの情報:『ダーゼン』と『エンピナースP』
「リゾチーム」製剤と似たような作用を持つ消炎薬に、『ダーゼン(一般名:セラペプターゼ)』というものがありましたが、同様に2011年の再評価制度により販売が中止になっています。また、他に慢性副鼻腔炎に適応のある消炎薬として、『エンピナースP(一般名:プロナーゼ)』がありますが、これも現在再評価申請の最中です4)。
4) 科研製薬 「エンピナースPカプセル9000」及び「エンピナースP錠18000」の再評価申請に関するお知らせ (2015)
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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