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似た薬の違い ビタミン

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『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』、同じビタミンBの薬の違いは?~誘導体の違いと、ビタミンB2の配合意義

回答:細かな違いはあるが、適応症は同じ

 『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』は、いずれもビタミンB群の薬です。
ビタノイリンとノイロビタンとビタメジン~同じ適応症
 全ての薬にビタミンB群(B1・B6・B12)が入っています。『ビタノイリン』と『ノイロビタン』には、補助的にビタミンB2も配合されています。

 誘導体が異なるなど細かな違いはありますが、薬の適応症は同じで、厳密な使い分けは必要ありません。

回答の根拠①:使う目的、適応症は全て同じ

 『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』の適応症は、全て同じです1,2,3)。

※ビタノイリン・ノイロビタン・ビタメジンの適応症
食事からの摂取が不十分な際のビタミンB群の補給
ビタミンB群の欠乏による神経痛・筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・麻痺の症状改善

 1) ビタノイリンカプセル 添付文書
 2) ノイロビタン配合錠 添付文書
 3) ビタメジン配合カプセル 添付文書

 全てビタミンB群の補給や欠乏症の改善を目的に使う薬で、厳密な使い分けが必要なほどの違いはありません。

回答の根拠②:「ビタミンB2」の配合理由

 詳しいメカニズムはわかっていませんが、ビタミンB1類を投与した際、臓器内でビタミンB2濃度が減少することが報告されています。
 そのため、ビタミンB1類を大量あるいは長期で投与する際には、ビタミンB2を併用すべきとする意見もあります4)。

 4) ノイロビタン配合錠 インタビューフォーム

 『ビタノイリン』と『ノイロビタン』には、こうした理由から「リボフラビン(ビタミンB2)」が添加されています。

回答の根拠③:有効成分と誘導体の違い

 『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』の成分名は少しずつ異なります。
ビタノイリンとノイロビタンとビタメジン~組成の違い
 これは、同じ「ビタミンB1」にも、基本の形である「チアミン」と、その誘導体である「フルスルチアミン」や「ベンフォチアミン」といったものがあるからです。同様に、「ビタミンB6」にも3種、「ビタミンB12」にも4種の誘導体があります。

 厳密には、これら誘導体によって性質に多少の違いがありますが、これによって薬を使い分けなければならないほどの差ではありません。

※『ビタノイリン』の組成 1)
【ビタミンB1  】フルスルチアミン 
【ビタミンB6  】ピリドキサール
【ビタミンB12】ヒドロキソコバラミン
【ビタミンB2  】リボフラビン

※『ノイロビタン』の組成 2)
【ビタミンB1  】オクトチアミン
【ビタミンB6  】ピリドキシン
【ビタミンB12】シアノコバラミン
【ビタミンB2  】リボフラビン

『ビタメジン』の組成 3)
【ビタミンB1  】ベンフォチアミン
【ビタミンB6  】ピリドキシン
【ビタミンB12】シアノコバラミン

「ビタミンB1」に着目した違い

 ビタミンB1とは、「チアミン」とその誘導体の総称のことです。主に神経機能の維持に重要です。例えば「脚気」は、ビタミンB1の欠乏によって起こります。
 3つの薬には全てビタミンB1が含まれていますが、いずれもチアミン誘導体です。
ビタノイリンとノイロビタンとビタメジン~ビタミンB1
『ビタノイリン』に含まれるビタミンB1・・・フルスルチアミン
『ノイロビタン』に含まれるビタミンB1・・・オクトチアミン
『ビタメジン』に含まれるビタミンB1・・・・ベンフォチアミン

 『ビタノイリン』に含まれる「フルスルチアミン」は、「チアミン」と比べると消化管からの吸収が良く、血液中や臓器内に高い濃度で長時間維持される特徴があります1)。

 『ノイロビタン』に含まれる「オクトチアミン」は、ビタミンB6・B12との併用によって神経炎の改善効果、神経再生の促進効果が高かったことが報告されています2,5)

 5) 日本耳鼻咽喉科学会会報.(2):178,(1967)

 『ビタメジン』に含まれる「ベンフォチアミン」は、「チアミン」と比べると高い血中濃度を維持し、特に心筋・肝臓・腎臓・骨格筋などに高い濃度で維持される、という特徴があります3,6)

 6) Chem Pharm Bull.15(3):295-302,(1967) PMID:6075482

「ビタミンB6」に着目した違い

 ビタミンB6とは、「ピリドキサール」とその誘導体の総称のことです。主に神経伝達や皮膚の形成、ホルモン調節に関与し、不足するとてんかん、痙攣、貧血、口内炎などの原因となります。
 ビタミンB6は全部で3種あり、アルコール型を「ピリドキシン」、アルデヒド型を「ピリドキサール」、アミン型を「ピリドキサミン」と呼びます。全て、体内で「ピリドキサールリン酸」に代謝されて作用します。
ビタノイリンとノイロビタンとビタメジン~ビタミンB6
『ビタノイリン』に含まれるビタミンB6・・・ピリドキサール
『ノイロビタン』に含まれるビタミンB6・・・ピリドキシン
『ビタメジン』に含まれるビタミンB6・・・・ピリドキシン

 『ビタノイリン』に含まれる「ピリドキサール」は、「ピリドキシン」よりも種々の特性を持ち、より活性が高いとされています1)

「ビタミンB12」に着目した違い

 ビタミンB12とは、コバルト(Co)を含むビタミン類の総称です。主にアミノ酸代謝や葉酸合成に関与し、不足すると貧血や神経障害などの原因になります。

 ビタミンB12は、「シアノコバラミン」、「ヒドロキソコバラミン」、「アデノシルコバラミン」、「メチルコバラミン」の全部で4種類あります。
ビタノイリンとノイロビタンとビタメジン~ビタミンB12
『ビタノイリン』に含まれるビタミンB12・・・ヒドロキソコバラミン
『ノイロビタン』に含まれるビタミンB12・・・シアノコバラミン
『ビタメジン』に含まれるビタミンB12・・・・シアノコバラミン

 『ビタノイリン』に含まれる「ヒドロキソコバラミン」は、「シアノコバラミン」と比べて体内の貯留性に優れ、効果が持続するという特徴を持っています1)。

ビタミンB群が3種類も配合されている理由

 ビタミンB1・B6・B12は、それぞれを単独で使用するよりも、3種を併用した方が優れた治療効果が得られるとされています7,8)。
 このことから、現在使われている『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』にはこれら3種のビタミンB群が配合されています。

 7) ビタメジンカプセル インタビューフォーム
 8) ビタミン.49:308,(1975)

薬剤師としてのアドバイス①:水溶性のビタミンと、脂溶性のビタミンは区別する

 ビタミンには、水溶性のものと、脂溶性のものがあります。

※水溶性のビタミン:B、C、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ニコチン酸アミド
※脂溶性のビタミン:A、D、E、K

 このうち、水溶性のビタミンは大量に摂取しても尿として排泄されるため、身体に蓄積しにくく副作用も少ない傾向にあります。しかし、脂溶性のビタミンは身体に残りやすく、副作用や過剰症も起こりやすい傾向にあります。
 そのため、ビタミン剤やサプリメントを使う場合には、脂溶性のビタミンの摂り過ぎには十分注意するようにしてください。

薬剤師としてのアドバイス②:服用中は、尿の色が黄色くなることがある

 栄養ドリンクを飲むと、尿の色が濃い黄色になることがあります。これは飲料に含まれる「ビタミンC」が原因だと誤解している人が少なくありませんが、正しくは「ビタミンB2」によるものです。

 そのため、『ビタノイリン』・『ノイロビタン』を服用中は、尿の色が黄色くなることがあります。これは過剰になった「ビタミンB2」が排泄されているだけのことなので、心配の必要はありません。

 ただし、尿の色が変わることは体調変化や副作用の兆候という可能性もあるため、事前にどういった影響があるか薬剤師に確認しておくようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『ビタノイリン』・『ノイロビタン』・『ビタメジン』はビタミンB群の薬で、適応症は同じ
2. 『ビタノイリン』と『ノイロビタン』には、ビタミンB2も入っている
3. 同じビタミンBでも、誘導体によって性質に多少の違いがある

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆含まれるビタミンB群
ビタノイリン:B1・B6・B12・B2
ノイロビタン:B1・B6・B12・B2
ビタメジン:B1・B6・B12

◆適応症

ビタノイリン:ビタミンB群の補給、欠乏による神経痛、筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・末梢神経麻痺の改善
ノイロビタン:ビタミンB群の補給、欠乏による神経痛、筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・末梢神経麻痺の改善
ビタメジン:ビタミンB群の補給、欠乏による神経痛、筋肉痛・関節痛、末梢神経炎・末梢神経麻痺の改善

◆用法
ビタノイリン:服用回数の指定なし
ノイロビタン:服用回数の指定なし
ビタメジン:服用回数の指定なし

◆尿の着色に対する注意書き
ビタノイリン:あり (ビタミンB2による)
ノイロビタン:あり (ビタミンB2による)
ビタメジン:なし

◆剤型の種類
ビタノイリン:カプセル(25,50)
ノイロビタン:配合錠
ビタメジン:配合カプセル(B25,B50)、配合散、静注

◆製造販売元
ビタノイリン:武田薬品工業
ノイロビタン:アステラス製薬
ビタメジン:第一三共

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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