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似た薬の違い 去痰・鎮咳薬

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『メジコン』と『アスベリン』、同じ咳止め薬の違いは?~効果・副作用の比較、使える年齢

回答:強力な『メジコン』、小さな子どもに使いやすい『アスベリン』

 『メジコン(一般名:デキストロメトルファン)』と『アスベリン(一般名:チペピジン)』は、どちらも咳を止める鎮咳薬(中枢性)です。

 『メジコン』の方が、咳止めとしての効果が強力です。
 『アスベリン』は、副作用が少なく、小さな子どもに使いやすい薬です。
メジコンとアスベリン3
 ただし、『メジコン』や『アスベリン』のような咳止めが全ての咳に効くわけではありません。風邪による咳に咳止めはほとんど効果がないほか、喘息逆流性食道炎・副鼻腔炎などの病気が原因で咳が出ている場合には、病気の根本的治療を行う必要があります。

回答の根拠①:『メジコン』の強力な鎮咳作用~「リン酸コデイン」との比較

 『メジコン』と『アスベリン』の鎮咳作用を同じ条件で比較したデータはありませんが、どちらも強力な咳止めである「リン酸コデイン」と比較した結果が報告されています。

 『メジコン』は10~20mg(通常1回量15~30mg)で、「リン酸コデイン」の15mg(通常1回量20mg)と同じ効果が得られる、とされています1)。つまり、『メジコン』は普通に使う量で、「リン酸コデイン」と同じくらいの効果だということです。
メジコン~リン酸コデインと変わらない効果
 実際、『メジコン』と「リン酸コデイン」の治療効果を比較した研究でも、優劣について様々な報告があることから、効果の強弱については明確な結論付けがされていません2)。

 1) メジコン錠 インタビューフォーム

 2) Chest.144(6):1827-38,(2013) PMID:23928798

 一方、『アスベリン』も「リン酸コデイン」と同じくらいの作用を発揮する、とされています3)。しかし、この時に使われた『アスベリン』の量は16mg/kgと、通常量よりかなり多い量です。(※『アスベリン』の通常量:1日60~120mgは、体重60kgの成人でも1~2mg/kg)
 つまり、『アスベリン』で「リン酸コデイン」と同じ効果を得るためには、かなり多い量を使う必要があることを意味しています。

 3) アスベリン錠 インタビューフォーム

 このことから、一般的な用量を考慮すると、「リン酸コデイン」に匹敵する効果を持つ『メジコン』の方が『アスベリン』よりも強力な咳止めであると言えます。

回答の根拠②:『アスベリン』が子どもに使いやすい理由

 『メジコン』は0歳3ヶ月から、『アスベリン』は0歳からの用量が設定されています4,5)。そのため、どちらも用法上は子どもに使うことができます。

 4) メジコン配合シロップ 添付文書
 5) アスベリン錠 添付文書

 しかし、『メジコン』は1~12歳の子どもに使うと3人に1人の割合で副作用が出るとの報告があります6)。また、海外では市販薬を高用量に改造したものが年少者に濫用され、「危険ドラッグの入り口」になっていることもあり、日本でも注意喚起が行われています7)。
 こうした背景から、『メジコン』が処方されるのは主に成人が中心で、あまり子どもには処方されていません。

 6) Indian J Pediatr.80(11):891-5,(2013) PMID:23592248
 7) 国立医薬品食品衛生研究所 「医薬品安全性情報」 Vol.3 No.11,(2005)

 一方、『アスベリン』には目立った副作用はなく5)、濫用のリスクも低いため、小児科や耳鼻科などで子どもによく使われています。
アスベリン~副作用と濫用リスク

『アスベリン』には去痰作用もある

 『アスベリン』には、咳を止めるだけでなく、痰を出しやすくする「去痰作用」があります3)。
 ただし単独では効き目が弱いため、痰が強く絡む場合には『ムコダイン(一般名:L-カルボシステイン)』や『ムコソルバン(一般名:アンブロキソール)』などの「去痰薬」を併用します。

薬剤師としてのアドバイス:咳が長く続く時は、原因の特定を

 咳は体力を奪い、また肋骨の骨折にも繋がるため、必要に応じて咳止めを使う必要があります。
 しかし、『メジコン』や『アスベリン』などの咳止めは、全ての咳に効果があるわけではありません。そのため、安易に咳止めを使うのではなく、まずは原因を明確にする必要があります。
咳止めが適さない慢性的な咳
 喘息による咳には、咳止めは逆効果になることがあります。そのためステロイドの吸入薬抗ロイコトリエン薬を使う必要があります。
 逆流性食道炎による咳には、PPIやH2ブロッカーといった胃酸を抑える薬が必要です。
 副鼻腔炎(蓄膿症)でも咳が続くことがありますが、ステロイド点鼻薬や抗生物質などを使った副鼻腔炎の根本的な治療が必要です。
 また他にも、子どもの咳の原因は家族の喫煙が原因であることもあります。就寝時に横になると咳が酷くなるのは心不全の兆候である場合もあります。

 咳止めを使っても良くならない場合は、薬を飲み続けるのではなく、咳の原因が何かを一度明確にし、根本的解決のための改善案を考える必要があります。

ポイントのまとめ

1. 『メジコン』は、「リン酸コデイン」と同じくらい強力な咳止め
2. 『アスベリン』は、目立った副作用や濫用のリスクがなく、0歳からの子どもにも使いやすい
3. 咳が長く続く場合は、咳止めではなく根本治療が必要

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆適応症
メジコン:感冒、上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)、急性・慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症に伴う咳嗽
アスベリン:感冒、上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)、慢性気管支炎、急性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難

◆用法
メジコン:1日1~4回
アスベリン:1日3回

◆小児用量の設定
メジコン:3ヶ月以上で設定されている
アスベリン:1歳未満から設定されている

◆飲み合わせの悪い薬(相互作用)
メジコン:MAO阻害薬、CYP2D6を阻害する薬、SSRI
アスベリン:なし

◆主な副作用
メジコン:眠気(自動車の運転等に対する注意喚起あり)
アスベリン:なし (注意事項:赤みがかった着色尿

◆剤型の種類
メジコン:錠(15mg)、散、配合シロップ
アスベリン:錠(10mg、20mg)、散、シロップ、ドライシロップ

◆製造販売元
メジコン:塩野義製薬
アスベリン:田辺三菱製薬

+αの情報①:『メジコン』の精神系への作用と臨床応用

 『メジコン』で、アルツハイマー型認知症による興奮状態を抑制できるという報告があります8)。

 また海外では、『メジコン』と「キニジン」の配合薬(NUEDEXTA)が、仮性球情動の治療薬として使われています。
 CYP2D6で代謝される『メジコン』と、CYP2D6阻害作用を持つ「キニジン」を併用することで、血中濃度の上昇と半減期の延長9)が起こり、NMDA受容体などへ持続した作用が発揮されると考えられています。

 8) JAMA.314(12):1242-54,(2015) PMID:26393847
 9) NUEDEXTA 添付文書

+αの情報②:感冒(風邪)の咳には、咳止めはほとんど効かない

 『アスベリン』や『メジコン』に限らず、「リン酸コデイン」なども含めた中枢性の鎮咳薬は、理論上、どんな咳にも効果がある薬ですが、感冒(風邪)の咳にはほとんど効果がありません10)。
 風邪で咳が出る際に、咳止めの薬を欲しくなる気持ちはわかりますが、あまり効果の期待できない薬をあれこれと服用することはお勧めできません。

 10) Cochrane Database Syst Rev. 2014 Nov 24;(11):CD001831 PMID:25420096

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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