『イトリゾール』の「パルス療法」、効果や副作用はいつまで続くの?~血液中と爪で異なる薬の残り方
回答:効果は1年以上、副作用は1週間程度で治まる
『イトリゾール(一般名:イトラコナゾール)』は、水虫の菌を退治する抗真菌薬です。外用剤では治りにくい爪白癬に対して、内服薬の「パルス療法」が非常に高い効果を発揮します。「パルス療法」では、1週間の服薬⇒3週間の休薬、というサイクルを3回繰り返します。
『イトリゾール』は、飲んで血液中に吸収された後、爪に移行します。その後、1年以上爪での水虫菌の増殖を抑え続けることが知られています。
一方で、爪に移行しなかった成分は血液中に留まらず、薬を飲み終えて7~8日も経てば身体から出て行ってしまいます。
そのため、「パルス療法」の効果は1年以上続きますが、副作用は1週間程度で治まると言えます。
回答の根拠:薬の爪への薬剤移行と、血中半減期
『イトリゾール』も他の薬と同様、服用するとまず消化管から吸収され、血液中に移行します。 このとき、『イトリゾール』はケラチンとの親和性が非常に高く、爪に移行しやすい特徴を持っています。そのため、血液中から爪へと薬剤が移行します。
爪では、「パルス療法」を終えてから1年後でも、白癬菌に対する有効濃度(MIC90:100ng/mL以上)を維持していることが報告されています1)。
1) 日皮会誌 114:55-72,(2004)
一方、『イトリゾール』の血中半減期(t1/2)は10~21時間です2)。そのため、薬を飲み終えて7~8日も経過すれば、爪に移行せず血液中に残っていた薬は全て出て行ってしまっている、と考えることができます。
2) イトリゾールカプセル 添付文書
薬剤師としてのアドバイス①:「パルス療法」が完了するまで、念のため併用薬には注意
『イトリゾール』には、一緒に服用できない薬が多数あります。一見、無関係に見える『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』のような睡眠薬とも併用することができません。通常は、「パルス療法」の3サイクル目が完了するまで(3サイクル目の休薬期間が終わるまで)は、こうした併用薬を避けるように指導しています。
『イトリゾール』の相互作用の多くは、『イトリゾール』の作用が強くなるのではなく、『イトリゾール』が他の薬の作用を強めてしまうものです。
そのため、ごく少量の『イトリゾール』が血液中に残っていたがために、新たに服用した睡眠薬や降圧薬の作用を異常に強め、中毒を起こしてしまう、といったリスクにつながります。
つまり、『イトリゾール』は少量であっても、相互作用による影響は大きい、と言えます。
計算上は7~8日で体内から薬は抜けていると考えられますが、一般的にそれよりも長い期間、併用薬に注意すべきとされるのは、こうした理由によるものです。
ただし、場合によっては、ある程度時間が経過していれば薬を服用することもあります。「パルス療法」中に別の薬が必要になった場合には、個別に必ず医師・薬剤師に相談するようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:『イトリゾール』は空腹時に飲むと、効果が弱まる
「パルス療法」に用いる『イトリゾール』の「カプセル」は、食直後に服用する必要があります。空腹時に服用すると吸収が大きく低下し、薬の血中濃度も50%以下になってしまうため、治療効果に大きく影響する恐れがあります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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