子どもでも、ピロリ菌は除菌した方が良い?~小児のピロリ菌感染と、貧血との関連
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回答:小児でも、除菌が第一選択
子どもであっても、ピロリ菌は除菌することが勧められています。これは大人と同様、ピロリ菌に感染していると、胃炎や潰瘍を起こしやすいからです。
特に子どもの場合、鉄欠乏性貧血にもピロリ菌が大きく関わっているため、より除菌の重要性は高いと言えます。
回答の根拠①:小児の胃炎や潰瘍も、大半はピロリ菌が原因
小児の胃潰瘍の40%、十二指腸潰瘍の約80%が、ピロリ菌が原因とされています1)。
1) J Gastroenterol.39(8):734-8,(2004) PMID:15338366
成人(胃潰瘍の60~80%、十二指腸潰瘍の90~95%)と比べるとやや割合は低めですが、それでもピロリ菌が主たる原因となっていることがわかります。
そのため、小児の場合であっても、ピロリ菌の感染がわかった場合には除菌が第一選択(最優先)に指定されています(三剤併用療法)。
ピロリ菌に感染したままだと、胃薬などを飲み続けていても20%程度、薬をきちんと飲まなければ60~90%という高い頻度で胃炎や潰瘍が再発してしまいます2)。
しかし、ピロリ菌を除菌してしまえば、薬無しでも90%以上の人が再発を起こしません2)。
2) Helicobacter.9(1):9-16,(2004) PMID:15156899
つまり、ピロリ菌を除菌できれば、胃薬すら必要ない生活を送ることも不可能ではない、ということです。
回答の根拠②:鉄欠乏性貧血との関連
10歳以降の年長児において、原因不明の鉄欠乏性貧血の60~70%にピロリ菌感染が確認されています。この場合、ピロリ除菌をすることで貧血が治癒することもわかっています3,4)。
3) Helicobacter.4(2):135-9,(1999) PMID:10382128
4) 日本小児血液学会雑誌.17:352-357,(2003)
これにはピロリ菌が鉄を奪ってしまうこと、食物中の鉄を吸収の良い第一鉄(Fe2+)へ変換する能力の低下などが関わっていると考えられていますが、いずれにせよこうした貧血では、鉄分を補給するだけでは十分に改善しない傾向にあります。
薬剤師としてのアドバイス:小児は体重によって、用量や服薬期間を配慮する
子どもと大人では、使える薬の種類も異なれば、使う薬の量も異なります。そのため、子どもに薬を使う場合には特別の配慮をしなければなりません。
大人の薬を半分に割ったら子どもに使える、といったような単純な対処はできません。
小児のピロリ除菌に関しては、小児専用のガイドラインを参照し、適切な薬の選択、用量の低減、服薬期間の設定をする必要があります5)。
5) 日本小児栄養消化器肝臓学会報告 「小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断、治療、および栄養管理指針」,(2007)
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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