「リン酸コデイン」で喘息の咳は治らない?~市販の咳止めで治らない咳
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回答:治らない、むしろ喘息には逆効果なので「禁忌」
「リン酸コデイン」は、強力な咳止め(鎮咳薬)です。風邪などの咳によく効くため、市販の風邪薬にもよく使われている薬です。しかし、喘息には逆効果で、「禁忌」に指定されています。
喘息の場合は咳止め薬ではなく、ステロイドの吸入薬など「喘息のための薬」を使う必要があります。咳止めを使っても咳が治らない場合には、一度きちんと病院を受診するようにしてください。
また受診の際には、咳が酷い時間帯や、咳がどのくらいの期間続いているのか、具体的に医師に伝えることをお勧めします。
回答の根拠:喘息治療では、分泌物の粘度を高めてはいけない
「リン酸コデイン」には、咳を止める効果(鎮咳作用)がありますが、気道の分泌を減らす副作用(気道分泌抑制作用)もあります1)。
1) コデインリン酸塩散1%「タケダ」 添付文書
風邪の時に出るような普通の咳であれば、咳を止める良い効果の方が大きく現れ、咳が治まります。気道分泌が減る悪い効果によって、咳が悪化することもありません。
しかし喘息の場合、この気道分泌が減る悪い効果によって、分泌物の粘度が高くなって痰が切れなくなったり、痰が絡んでせき込むことが増えたりするため、余計に咳が酷くなります。
喘息は重症化すると、粘度の高い分泌物によって気道が塞がってしまい、窒息死に至ることがあります。そのため喘息治療においては、分泌物の粘度を高めることは避けなければなりません。
こうした理由から、「リン酸コデイン」は喘息には「禁忌」とされています1)。
喘息には、吸入ステロイドや気管支拡張薬、抗アレルギー薬を使う
喘息の咳は、気管支がアレルギー反応を起こし、少しの刺激で咳が出てしまう過敏な状態になっているために起こります。そのため、咳を鎮めるよりも、根本的な原因であるアレルギー反応を抑える必要があります。
喘息の治療には、気管支の炎症を抑える「吸入ステロイド」や、呼吸を楽にする「気管支拡張薬」、アレルギーを抑える「抗ヒスタミン薬」や「抗ロイコトリエン薬」を使いますが、「咳止め薬」は使用しません2)。
2) 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2015」
※喘息には適用がない鎮咳薬の例
『リン酸コデイン』
『アスベリン(一般名:チペピジン)』
『メジコン(一般名:デキストロメトルファン)』
薬剤師としてのアドバイス:医師には、咳が酷い時間帯も伝えよう
咳は風邪や喘息に限らず、逆流性食道炎や心不全など、様々な病気の症状として現れます。そのため咳が長く続く場合には、咳止めを使うよりも、まずは咳の原因を突き止めることが先決です。
このとき、咳がどういった時間帯、どういったタイミングで酷くなるのかを医師に伝えることで、より正確な診断をしてもらえる可能性が高まります。
「咳が酷い」とだけ伝えるのではなく、症状はできるだけ具体的に伝えることをお勧めします。
咳の酷い時間帯と、関連する疾患の例
1.気管支喘息の咳 → 夕方から夜間にかけて悪化し、布団に入ってからの咳も酷い
2.逆流性食道炎 → 食後に咳がひどくなる
3.心不全 → 横になって2時間程度した頃、少し眠っていると酷い咳で目が覚める
4.風邪などによる普通の咳 → 1日中まんべんなく咳が出る
いくら強力な咳止めを使っても、一時的に咳が楽になるだけです。そもそもの咳の原因を突き止め、根本的な解決をしなければ、いつまで経っても咳は止まりません。
+αの情報:12歳未満の子どもへの「コデイン類」の使用
「リン酸コデイン」には呼吸抑制などの副作用もあることから、2019年を目処に12歳未満への使用は「禁忌」に指定される見込みです。
特に、小児で咳が酷い場合は気管支喘息などの疾患を疑う必要があり、安易に咳止めを使うべきではありません。
また、「リン酸コデイン」は色々な市販薬・OTCにも配合されているため、大人用の薬は絶対に子どもに飲ませないようにしてください。
※コデイン類は、商品によって「リン酸コデイン」や「コデインリン酸塩」、「ジヒドロコデイン」といった表記をされています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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