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栄養素 慢性腎不全・CKD

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『ピートル』ってどんな薬?~生理的な金属「鉄」を利用したリン吸着剤

回答:「鉄」を利用して”リン(P)をとる”、高リン血症の治療薬

 『ピートル(一般名:スクロオキシ水酸化鉄)』は、慢性腎不全に伴う「高リン血症」の治療薬です。

 服用すると消化管でリン(P)を吸着し、そのまま吸収されることなく排泄されるため、体内のリン(P)を減らす効果があります。

 こうした”リン吸着剤”はこれまでにも色々な種類がありましたが、含まれる金属元素の過剰摂取や、生体にとって必須ではない金属元素の摂取など、色々な問題が指摘されてきました。

 『ピートル』は、生体に元から広く存在する生理的な金属「鉄」と、炭水化物(スクロース+でんぷん)の混合物のため、こうしたリスクが無いのが特徴です。
ピートルの構造

回答の根拠:鉄がリンを吸着し、排泄させる

 『ピートル』を服用すると、スクロースとデンプンが速やかに消化されるため、鉄が分離します。

 この鉄は「酸化水酸化鉄」で、第二鉄(3価:Fe3+)に分類されます。第二鉄は、消化管から吸収されにくい特徴を持ち1,2)、消化管でリン(P)を吸着しすると、そのまま排泄されます。
 こうした第二鉄によってリンを吸着させる作用は、『リオナ(一般名:クエン酸第二鉄)』と同じです。

 1) ピートル錠 インタビューフォーム
 2) Arzneimittelforschung.37(1A):105-7,(1987) PMID:3566863

 『ピートル』は臨床試験において、52週という長期に渡って血中リン濃度を管理目標範囲で維持するという優れた結果を遺しています3)。

 3)  日本透析医学会 透析会誌.45:301-356,(2012)

第一鉄と第二鉄の違い

 同じ鉄であっても、第一鉄(2価:Fe2+)は消化管から吸収されやすいため、主に鉄の補給を目的とした貧血薬『フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄)』などに使われています。

詳しい回答①:非必須金属元素を使わない、リン吸着剤

 リン(P)は、他の金属元素とくっつく性質を持つため、様々な金属元素を含む薬が、”リン吸着剤”としての可能性を秘めています。

 1970年代には、アルミニウム(Al)を含む薬が使用されていましたが、慢性腎不全患者では体内にアルミニウムが蓄積しやすく、アルミニウム脳症や骨軟化症などの副作用が問題となりました。
 1990年代には、カルシウム(Ca)を含む薬が使用されていましたが、カルシウムのリン吸着力はそれほど強力ではないため、慢性腎不全患者が大量に使用すると「高カルシウム血症」を起こすなどの問題がありました。

 こうした副作用は、腎機能が正常であれば問題ありませんが、慢性腎不全患者の「高リン血症」を治療する際には注意が必要でした。

 2000年代になると、ランタン(La)を含む『ホスレノール(一般名:炭酸ランタン)』が使用されるようになりました。
 ランタン(La)も消化管から吸収されることはなく、ごく微量が吸収されたとしてもすぐに排泄される性質を持っていますが、そもそも生体に本来存在しない元素を摂取することを問題視する意見もありました。

 『ピートル』は、リンの吸着力も高く、生体にとっても広く存在する鉄(Fe)を使った薬であり、従来の”リン吸着剤”の問題点を解決した薬と言えます。

詳しい回答②:慢性腎不全と高リン血症の関係

 生体では、リン(P)とカルシウム(Ca)の合計量は一定になるように調節されています。これを「カルシウム・リン積」と呼びます。

 慢性腎不全になると腎臓の調節機能が働かなくなり、血液中のリン(P)濃度が上昇し、「高リン血症」を起こすことがあります。このとき、「高リン血症」そのものは特に自覚症状がありません。
 しかし、過剰にリン(P)が存在すると、「カルシウム・リン積」を一定に保つために骨などからカルシウム(Ca)が流出します。こうして溢れ出したカルシウム(Ca)は、本来は骨ではない組織に沈着し、石灰化を起こします。

 実際、慢性腎不全患者ではこうした「高リン血症」が原因となった、”組織の石灰化(骨化)”が頻繁に起こります。

薬剤師としてのアドバイス:「チュアブル錠」は、噛み砕いて飲む

 『ピートル』は、250mgと500mgの錠剤がありますが、いずれも「チュアブル錠」です。

 「チュアブル錠」は、噛み砕いて服用することを前提に設計された薬です。そのため、錠剤のまま飲み込むのではなく、噛み砕いてから飲み込む必要があります。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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