『ストラテラ』と『コンサータ』、同じADHD治療薬の違いは?~中枢への作用と即効性・依存性
記事の内容
回答:中枢神経へ作用するかどうかで決まる、即効性と依存性
『ストラテラ(一般名:アトモキセチン)』と『コンサータ(一般名:メチルフェニデート)』は、どちらも注意欠陥・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の治療薬です。
『ストラテラ』も『コンサータ』も、注意欠陥・多動性障害(ADHD)で不足している脳内の神経伝達物質「ドパミン」や「ノルアドレナリン」を増やす作用があります。
『コンサータ』には中枢神経を直接刺激する作用があるため、「中枢神経刺激薬」に分類されています。
一般的に、『コンサータ』の方が、『ストラテラ』よりも即効性に優れています。
一方で、中枢神経に直接作用するため、用法用量を誤ると依存性を生じるリスクがあります。そのため、認可をうけた医師が処方し、認可を受けた薬局で調剤をする必要があります。
『ストラテラ』は中枢神経に直接作用しないため、依存性などのリスクはありません。また、特別な認可も必要ないため、どこの病院・薬局でも使用できる薬です。
回答の根拠①:注意欠陥・多動性障害(ADHD)への効果
注意欠陥・多動性障害(ADHD)では、脳内の「ノルアドレナリン」や「セロトニン」、「ドパミン」といった神経伝達物質が不足していることが指摘されています。
本来、こうした神経伝達物質は必要な時に放出され、必要な作用を終えるとすぐに回収されます。いつまでも作用し続けてしまうと色々な誤作動の原因になるからです。
ところが、この”回収”システムが過剰に働くと、神経伝達物質は放出された瞬間に回収されていってしまいます。その結果、必要な作用も発揮されず、神経伝達物質が不足した状態に陥ります。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)では、こうした神経伝達物質の不足が起こっていると考えられています。
『ストラテラ』は、神経伝達物質の「ノルアドレナリン」の回収を担うトランスポーター(輸送体)を阻害することで、シナプス間隙の「ノルアドレナリン」濃度を高める作用があります1)。
こうした作用は、抗うつ薬のSSRIやSNRIと同様に即効性がなく、大人でも小児でも服用から2週間目から効果が現れます2)。
1) ストラテラ錠 添付文書
2) ストラテラ錠 インタビューフォーム
『コンサータ』も、『ストラテラ』と同様に神経伝達物質の「ノルアドレナリン」と「ドパミン」の回収を阻害し、シナプス間隙の「ノルアドレナリン」と「ドパミン」濃度を高める作用があります3)。
3) コンサータ錠 添付文書
回答の根拠②:『リタリン』の不正使用~メチルフェニデートの中枢神経への直接作用
『コンサータ』の有効成分である「メチルフェニデート」は、大脳半球や脳幹に分布し、運動神経や感覚神経の働きに大きく関与しています。
そのため、「メチルフェニデート」製剤を服用すると運動の亢進、攻撃的行動、闘争的衝動といった中枢性興奮症状が現れることが報告されています4)。
4) Klin Wochenschr.32:445-50,(1954) PMID:13164273
こうした興奮作用があることから、同じ「メチルフェニデート」の薬『リタリン』が、いわゆる”覚せい剤”として不正使用されることが多発し、社会問題にもなりました。
そのため、『コンサータ』は流通が厳しく制限され、処方する医師も、調剤する薬局も認可制になっています5)。
5) コンサータ錠適正流通管理委員会
一方、こうした中枢神経への直接的な作用があることから、『コンサータ』は『ストラテラ』よりも即効性に優れていると言えます。
+αの情報:徐放システムを持つ『コンサータ』の特徴
同じ「メチルフェニデート」製剤であっても、『コンサータ』は『リタリン』と異なり、有効成分がゆっくりと放出されていく徐放製剤(浸透圧を利用した放出制御システム:OROS)になっています3)。
そのため、服用によって薬の血中濃度が急激に上昇して中毒を起こす、といった恐れはありません。
また、朝1回服用することで12時間程度効果が持続し、”学校や会社に行っている間だけ”効果が発揮され、夜には睡眠に影響しないように設計されています。
当然ながら、こうした徐放製剤は、噛み砕いたり潰したりして服用することはできません。
また、飲み忘れたからといって夜に服用しても意味がありません。
薬剤師としてのアドバイス:適応は同じ、自分に合った選択を
どちらも適応は注意欠陥・多動性障害(ADHD)であり、6歳以上の小児や大人に対する適応にも違いはありません。
『リタリン』の情報から依存性などに懸念がある場合は『ストラテラ』を、即効性を期待する場合は『コンサータ』を、それぞれ自分に合った選択をすることが重要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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