『リリカ』ってどんな薬?~神経痛のメカニズムと効果、眠気の副作用
記事の内容
回答:普通の痛み止めでは効かない、神経痛のための鎮痛薬
『リリカ(一般名:プレガバリン)』は、「神経の痛み(神経障害性疼痛)」に効果がある鎮痛薬です。
ビリビリと電気が走る、ジンジンと灼けるような痛みは、神経が過敏になったり、傷ついたりして感じる「神経の痛み」です。
こうした「神経の痛み」には、『ロキソニン(一般名:ロキプロフェン)』等の一般的な痛み止めでは効果がありません。そのため、神経痛のための鎮痛薬である『リリカ』を使う必要があります。
ただし、副作用で眠くなりやすいため、特に飲み始めの時期は注意するようにしてください。
回答の根拠①:痛みの分類と、適した薬の違い
ひとことに「痛み」と言っても、その原因によって大きく3種類に分類されます。
①侵害受容性の痛み
切り傷・打撲・炎症など、物理的なケガによって感じる、ズキズキとした痛みのことです。こうした痛みには、『ロキソニン』などの一般的な痛み止め(NSAIDs)が効果的です。
②神経障害性の痛み
ビリビリと電気が走る、ジンジンと焼けるように感じる「神経の痛み」のことです。こうした痛みには、『ロキソニン』のような一般的な痛み止めでは効かないため、『リリカ』など専用の薬が必要です。
③心因性の痛み
心理的な原因の痛みや、明確な原因が特定できない痛みのことです。こうした痛みには、薬よりも「認知行動療法」が功を奏することがあります。
帯状疱疹が治った後に残る”ピリピリとした痛み(帯状疱疹後神経痛)”や、糖尿病で感じる”チクチクした痛み(糖尿病性神経障害)”は、②神経障害性の痛みに分類されます。
こうした痛みには、『リリカ』や以下のような痛み止めを使う必要があります。
※「②神経障害性の痛み」に効果がある痛み止めの例
『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』
『サインバルタ(一般名:デュロキセチン)』
痛みの原因は、1つだけとは限らない
痛みの原因は1つだけとは限りません。
例えば「椎間板ヘルニア」では、①~③が複雑に絡み合って痛みを感じていることが、よくあります。
①侵害受容性の痛み・・・椎間板の周辺で起こっている炎症が原因
②神経障害性の痛み・・・飛び出した椎間板によって傷ついた神経が原因
③心因性の痛み・・・・・「身体を動かすと痛む」という強い条件付けが原因
こうした場合は、『ロキソニン』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』といった一般的な痛み止めと『リリカ』を一緒に使います。
また、必要があればこうした薬物療法に併せて、「認知行動療法」を行っていきます。
回答の根拠②:神経痛のメカニズムと、『リリカ』の作用機序
「②神経障害性の痛み」は、神経が過剰に興奮し、大量の神経伝達物質が放出されることによって起こります。
具体的には、神経の「Ca2+チャネル」からCa2+が流入することで、神経伝達物質の放出が起こります。
『リリカ』は、「Ca2+チャネル」の「α2δサブユニット」と呼ばれる部分に結合し、流入するCa2+を減らします1)。その結果、神経伝達物質の放出が減り、神経の痛みが軽減されます。
1) リリカカプセル インタビューフォーム
『ロキソニン』などの一般的な痛み止め(NSAIDs)は、こうしたメカニズムには全く作用しないため、”神経の痛み”には効果が期待できません。
下行性疼痛抑制系への作用
神経には、脳に伝わる痛みを減らすように働くものがあります。
『リリカ』は、この「下行性疼痛抑制系」の働きにも作用し、鎮痛効果を発揮します1)。
薬剤師としてのアドバイス①:医師には、痛み方や痛みが悪化するタイミングを伝える
どんな痛みにでも効く万能の痛み止めは存在しません。
痛み止めを飲んでも痛みが治まらない場合には、安易に薬の量を増やす前に痛みの原因を突き止め、本当に薬が合っているのかどうかを考える必要があります。
そのために、痛みを主治医に伝える際には単に「痛い」と伝えるだけでなく、「どんな風に痛むのか」、「どんな時に痛みが悪化するのか」といったことを、できるだけ具体的に伝えることをお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス②:『リリカ』の使い始めは、眠気に注意
『リリカ』は、副作用として眠気を起こしやすい薬です。
続けて使っているうちに、少しずつ体も慣れて眠気を感じなくなっていきますが、使い始めは自動車の運転を控えるなど、特別な注意が必要です。
どうしても眠気が我慢できない場合には、同じように”神経の痛み”に効果があって眠気の少ない『ノイロトロピン』など別の薬に切り替えることも必要です。
主治医や薬剤師と相談しながら、自分にあった薬を選ぶようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 電気が走る、焼けるような痛みは、普通の痛み止めが効きにくい「神経の痛み」である可能性がある
2. 『リリカ』は、「神経の痛み(神経障害性疼痛)」に効く薬
3. 『リリカ』の飲み始めは、眠気に注意
+αの情報:不安障害への効果
『リリカ』は、全般性不安障害に対する効果が報告されています2,3)。
一部のガイドラインでは推奨レベルも高く設定されていますが、現在(2016年7月13日)のところまだ保険適用にはなっていません。
2) Am J Psychiatry.160(3):533-40,(2003) PMID:12611835
3) Int Clin Psychopharmacol.24(2):87-96,(2009) PMID:21456104
本記事は、2016年4月3日の「MEDLEYニュース」に寄稿させて頂きました。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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