『アレジオン』と『パタノール』、同じアレルギーの目薬の違いは?~コンタクトレンズと保存料
記事の内容
回答:『アレジオン』点眼液は、コンタクトをつけたままでも使える
『アレジオン(一般名:エピナスチン)』と『パタノール(一般名:オロパタジン)』は、どちらもアレルギーを抑える目薬です。
『アレジオン』点眼液には、保存料の「塩化ベンザルコニウム」が使われていないため、コンタクトレンズ(ソフト)を付けたままでも使えます。
コンタクトレンズの付け外しが面倒な場合、『アレジオン』への変更も含めて一度主治医と対応を相談することをお勧めします。
回答の根拠:保存料「ベンザルコニウム」の、コンタクトレンズへの影響
目薬は、水を含んでいるために雑菌が繁殖しやすい薬です。
当然ながら、雑菌が繁殖した目薬を使うことは、目にとって良くありません。そのため、1回使い切りタイプ(例:『インタール点眼液UD』)のものを除き、点眼液には保存料が使われています。
「塩化ベンザルコニウム」は害の非常に少ない優秀な保存料のため、点眼液に使われています。
しかし、ソフトコンタクトレンズをつけたまま点眼すると、「塩化ベンザルコニウム」はソフトコンタクトレンズに吸着します。その結果、「塩化ベンザルコニウム」は必要以上に角膜と接触し続けることとなり、角膜に悪影響を与えてしまう恐れがあります1)。
そのため、コンタクトレンズは外してから点眼し、10分ほど時間を置いてから付け直す必要があります2)。
1) CLAO J.24(4):227-31,(1998) PMID:9800062
2) パタノール点眼液0.1% 添付文書
※「ベンザルコニウム」が使われている点眼液の例
『パタノール(一般名:オロパタジン)』
『リボスチン(一般名:レボカバスチン)』
『ザジテン(一般名:ケトチフェン)』 (※UDには含まない)
『インタール(一般名:クロモグリク酸)』 (※UDには含まない)
『アレギサール(一般名:ペミロラスト)』
『リザベン(一般名:トラニラスト)』
『ケタス(一般名:イブジラスト)』
一方、『アレジオン』は保存料として「リン酸水素ナトリウム」と「ホウ酸」を使用しています3)。これらの保存料はソフトコンタクトレンズに吸着しないため、装着したままの点眼が可能です。
3) アレジオン点眼液0.05% 添付文書
ハードのコンタクトレンズには吸着しない
こうした「ベンザルコニウム」の吸着は、含水性のソフトコンタクトレンズで問題になるものです。ハードのコンタクトレンズや、非含水性のソフトコンタクトレンズでは基本的に問題になりません。
また、ソフトコンタクトレンズでもワンデー(1日使い捨てタイプ)のものであれば、吸着が問題にならないこともあります。
このように、コンタクトレンズの種類や使う日数によって影響は様々です。そのため、自分のコンタクトレンズをどうすべきか迷った場合には、眼科医に相談するようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:データには現れない、使い勝手や使い心地
薬の効果は、使い勝手や使い心地といった要因でも変わることがあります。
毎回コンタクトレンズを付けたり外したりしなければいけないという作業が面倒になり、だんだん目薬を使わなくなってしまった、という事態になっては、いくら効果の高い薬であっても効果は得られません。
こうした差は、きちんと用法・用量を守って使って行われる臨床試験のデータには現れません。
安易にジェネリック医薬品に変えたりすると、効果が同じはずの薬であっても実際の体調に変化が現れることがあるのは、こうした差も要因の一つです。
逆に、ジェネリック医薬品に変えることで使い勝手や使い心地が良くなれば、それだけ治療効果も高まる可能性もあります。
使いにくい、使うと少し不快だ、といったような感想は、遠慮せず医師・薬剤師に伝え、自分に合った薬を見つけられるようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『アレジオン』には「ベンザルコニウム」が入っていないので、コンタクトレンズをつけたまま使える
2. 「ベンザルコニウム」の吸着が問題になるのは、「含水性」の「ソフト」コンタクトレンズ
3. 使い勝手・使う手間は実際の治療効果に影響するので、気になったことは遠慮せず医師・薬剤師に伝える
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆適応症
アレジオン:アレルギー性結膜炎
パタノール:アレルギー性結膜炎
◆使われている保存料
アレジオン:リン酸水素ナトリウム、ホウ酸
パタノール:塩化ベンザルコニウム
◆コンタクトレンズに対する注意喚起
アレジオン:記載なし
パタノール:含水性ソフトコンタクトレンズを装用したまま点眼することは避けること
◆用法・用量
アレジオン:1回1滴、1日4回
パタノール:1回1~2滴、1日4回
◆製造販売元
アレジオン:ベーリンガー・インゲルハイム
パタノール:協和発酵キリン
+αの情報:目薬の刺激は、薬のpHや浸透圧比と関係している
『アレジオン』や『パタノール』は、目薬の中でも使った時の刺激や不快感が少ない薬です。これは、薬液のpHや浸透圧が人間の涙と近い性質で作られているからです。
『インタール』点眼液は古い薬で、pHや浸透圧比が人間の涙と異なるため、使った時に一過性の刺激を感じる場合があります。
※pHの比較 2-5)
人間の涙:7.25
アレジオン:6.7~7.3
パタノール:7.0
インタール:4.0~7.0
※浸透圧比の比較 2-5)
人間の涙:1.0
アレジオン:0.9~1.1
パタノール:0.9~1.1
インタール:0.25
4) 病院薬学.24(6):597-600,(1998)
5) インタール点眼液2% 添付文書
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
大学病院の眼科に通院しています。
直近に処方された目薬がアレジオンで、バタノールからの変更だったので
他の記事と併せて大変参考になりました。
ありがとうございました。