片頭痛の「トリプタン製剤」は、市販薬で売っている?
記事の内容
回答:売っていない
片頭痛の治療薬「トリプタン製剤」は、市販されていません。
現在、「トリプタン製剤」は全て「処方箋医薬品」なので、専門の病院を受診し、医師から処方してもらう必要があります。
※現在使われている「トリプタン製剤」
『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』
『ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)』
『レルパックス(一般名:エレトリプタン)』
『マクサルト(一般名:リザトリプタン)』
『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』
これは、「トリプタン製剤」を使い過ぎると薬が原因の別の頭痛を起こすリスクがあること、普通の痛み止めが効かない頭痛は危険な病気の兆候である可能性もあること、値段が高くなり過ぎることなどが要因です。
市販できない理由①:「薬物乱用性頭痛」のリスク
「トリプタン製剤」は片頭痛によく効きますが、あまり頻繁に使っていると、薬が原因の「薬物乱用性頭痛」という別の頭痛を引き起こす恐れがあります。
※薬物乱用性頭痛のリスクになる使用回数 1)
3ヶ月以上にわたって、月に10回以上の「トリプタン製剤」を服用していること
1) 日本頭痛学会 「物質またはその離脱による頭痛」 第2版.P83-58,8.医学書院(2006)
こうした健康被害のリスクがあるため医師や薬剤師の管理・指導のもとで正しく使う必要があり、市販はされていません。
なお、片頭痛が月に2回以上起こるようであれば、片頭痛の予防薬を飲むことも考慮する必要があります(※「トリプタン製剤」で片頭痛を予防することはできません)。
市販できない理由②:普通の痛み止めが効かない頭痛は、きちんと検査する必要がある
片頭痛の薬を購入したいという人の多くは、『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』など普通の痛み止めが効かなかったことが理由です。
しかし、普通の痛み止めが効かない頭痛は、一度病院できちんと検査する必要があります。
頭痛は脳出血や脳腫瘍など、危険な病気の前兆である可能性もあるからです。
素人判断で「片頭痛である」と決めつけることは危険です。
市販できない理由③:店頭に置いたら、「1箱6錠入り、10,000円」とかになる
市販もされている『ロキソニン』は薬価でも1錠17.5円で、安価な薬です。
一方で「トリプタン製剤」の薬価は平均して1錠1,000円程度と、他の薬と比べてもかなり高額です。
これを市販薬として販売しようとすると、「1箱6錠入り、10,000円」などというとんでもない高額商品になりかねません。きちんと病院を受診して診断してもらい、医療保険を使った方が無難です。
※「トリプタン製剤」1錠の薬価
『イミグラン』 816.40円
『ゾーミッグ』 960.80円
『レルパックス』 926.00円
『マクサルト』 945.90円
『アマージ』 918.90円
薬剤師としてのアドバイス:個人輸入や他人から譲ってもらうことはしない
個人輸入して薬を使った場合や、家族や友人・知人などの薬を勝手に使った場合、もし副作用が起きても救済制度を受けることができません。
万が一の事態に備えるという意味でも、薬は自分に処方されたものを使い、絶対に他人にあげたりもらったりしないようにしてください。
+αの情報:スイッチOTCで市販するかどうかの議論が始まっている
片頭痛の治療薬である「トリプタン製剤」を「スイッチOTC」として、市販薬に転用するかどうかの議論が始まっています。
確かに「トリプタン製剤」が市販されるようになれば、片頭痛の治療はより簡単になります。
しかし、市販薬は常に「使い過ぎ」のリスクと隣り合わせです。鼻づまりの点鼻薬を使い過ぎて「薬剤性鼻炎」になった、痛み止めを使い過ぎて「胃潰瘍」になった、といったケースは枚挙に暇がありません。
こうした間違った使い方によって薬に悪いイメージがついてしまうことは、非常に大きな損失です。
「トリプタン製剤」も先述のように「薬物乱用性頭痛」のリスクになることから、市販薬として販売される場合には使用回数や受診勧告など、使用者・販売者ともにより専門的な知識が求められます。
こうした情報共有・教育がきちんを行き届かせることができるかどうか、しっかりと議論をして欲しいと思います。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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