早食いすると太るって本当?~肥満のリスクを2倍にする事実
記事の内容
回答:早食いは、肥満のリスクを2倍高める
早食いの人は、早食いでない人と比べるとBMIが高い傾向にあり、また2倍以上肥満になりやすいという報告があります。
早食いかどうかの判断基準が自己申告なため、正確にどの程度のスピードからが”早食い”に該当するかはわかりませんが、食べる速さと肥満には明らかな因果関係があるとされています。
食事療法をする際には、野菜から食べることに加え、ゆっくりと咀嚼して食べることもお勧めします。
回答の根拠:早食いと肥満の因果関係
昔から”早食いすると太る”ということは広く知られていることです。しかし、統計学的にきちんと因果関係を調査した報告はこれまでありませんでした。
2015年の欧州糖尿病学会において、早食いの人は、早食いでない人と比べるとBMIが平均して1.78高く、また肥満となるリスクが2.15倍になるという解析結果が報告されています1)。
1) 第51回欧州糖尿病学会(EASD2015)
人間は必要量の食事をとると満腹を感じ、それ以上食事をとらなくなります。こうした満腹感は、咀嚼することが刺激となり、脳内で「ヒスタミン」などの神経系が活性化することによって生じます。
※『リフレックス(一般名:ミルタザピン)』等、脳内のヒスタミンをブロックする薬の副作用に食欲増加があるのはこのためです。
早食いの人は、一般的に咀嚼の回数が少なく、こうした満腹感を得にくいため、摂取カロリーが増加する傾向にあると考えられています。
また、早食いは食後のインスリン分泌にも影響し、ゆっくりと食事をした場合よりも急激に血糖値が上昇するため、過血糖を起こしやすくなります。食後の過血糖は、糖尿病の重要なリスクにも挙げられています。
早食いによるこうした生理的な影響が、肥満のリスクにつながっていると考えられています。
+αの情報:野菜から食べることで食後の過血糖を防ぐこともできる
摂取カロリーは同じでも、繊維分の多い野菜を先に摂取することで、食事による血糖値の上昇を抑えることができる、という報告があります2)。
2) Diabetic Med.30(3):370-2,(2013) PMID:23167256
極端なカロリー制限や、炭水化物やタンパク質など特定の栄養素だけを制限するなど、健康に悪影響を及ぼすような”自己流”の誤った食事療法が蔓延しています。
必ず、日々の食事はバランスの良いものを維持するようにしましょう。
薬剤師としてのアドバイス:肉を拒絶することも、健康には良くない
肥満傾向にある人が肉料理を大量に摂取することは、確かに望ましいものではありません。
しかし、日本人は欧米人と比べて肥満型の人が少なく、欧米の食事制限の例ばかりを参考にしているとタンパク質不足に陥る恐れもあります。
特に高齢者の場合、肉や魚を避け過ぎた結果、筋力が低下してしまう”サルコペニア”が問題視されています。
食事内容はバランスの良いものを維持し、野菜から食べる、ゆっくり咀嚼して食べる、毎日運動をする、といった習慣を心がけることが最善の方法です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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