『リーマス』ってどんな薬?~自殺予防効果が認められた唯一の薬
記事の内容
回答:躁状態を改善する薬
『リーマス(一般名:炭酸リチウム)』は、躁病と躁うつ病の躁状態に適応のある薬です。
医薬品としては唯一、「自殺予防効果」が認められた薬で、日本だけでなく海外のガイドラインでも、双極性障害に使用が推奨されています。
回答の根拠:躁状態への効果
”病的なうつ状態”がずっと続く「大うつ病性障害」と異なり、「双極性障害」は、うつ状態と躁状態の波を繰り返す病態です。
しかし、このときの躁状態は決して気分爽快というわけではなく、気分が不安定に高揚しているため、妄想的になったり怒りっぽくなったりする傾向があります。
『リーマス』には、こうした躁状態を改善する効果があります。
作用機序は完全には解明されておらず、リチウムは中枢神経系で脳内アミンの生成抑制、脳内アミンのMAO代謝促進、シナプス間隙への神経伝達物質の放出抑制、活性アミンの再取り込み促進など、多くの作用が複合的に関連して効果を発揮すると考えられています1)。
1) リーマス錠 添付文書
詳しい回答:唯一の自殺予防効果と、即効性の問題
『リーマス』は、医薬品として唯一、「自殺予防効果」が認められています2,3)。そのため、大量服薬や中毒のリスクも考慮してもなお、処方されるメリットが大きく勝ると考えられています。
2) Am J Phychiatry.162(10):1805-19,(2005) PMID:16199826
3) Bipolar Disorders.8(5pt2):625-39,(2006) PMID:17042835
しかし、『リーマス』には即効性が無く、『ジプレキサ(一般名:オランザピン)』の効果に追いつくのに10日以上かかるとも言われています4)。
そのため、どうしても急性期や初期には『ジプレキサ』や『エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)』など、躁状態に適応のある他の抗精神病薬を使う必要性も生じてきます。
4) J Clin Psychiatry.64(7):841-6,(2003) PMID:12934987
薬剤師としてのアドバイス:調子が良くても受診し、現状を正しく伝えることが重要
毎回診察している医師であっても、いつも顔を合わせたタイミングが”うつ状態”であった場合など、双極性障害であると見抜くのは非常に難しいとされています。
特に、躁状態のときは患者本人も”調子が良い”と誤解し、通院や服薬を勝手に中断してしまう傾向にあります。
ただでさえ見抜くことが難しいにも関わらず、通院を中断してしまっては医師にもどうすることもできません。調子が良いと思っても必ず定期的に受診し、現状は医師に正しく伝えるようにしましょう。
+αの情報:『ジプレキサ』はうつ状態と躁状態の両方に効果がある
『リーマス』にはない即効性を持つ『ジプレキサ』は、他にも双極性障害のうつ状態と躁状態の両方に適応がある5)ため、非常に使いやすい薬と言えます。
5) ジプレキサ錠 添付文書
どちらが優れた薬、というわけではなく、必要に応じて適切な薬を選択する必要があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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