赤ちゃんが、口の周りに塗ったステロイド外用薬を舐めてしまう。大丈夫?
回答:心配いらない
赤ちゃんが口の周りに塗った薬を舐めてしまった場合、摂取できる薬の量はごくごく微量です。そのため、全く心配する必要はありません。例えばステロイド外用剤であっても、そのステロイド成分によって健康に影響するほどの量を摂取しようとした場合、赤ちゃんであっても数kg単位の軟膏を摂取する必要があります。
しかし、口の周りに塗布できる薬の量は1gにも満たない量です。その全てを綺麗に舐めとってしまったとしても、健康には何の影響もありません。
回答の根拠:仮に、健康に影響させようと思った時に必要になる塗り薬の量
全ての薬には、「半数致死量(LD50)」という有毒性の基準があります。これは、100人が摂取したとき、50人に致死的な影響を及ぼす、という薬の量のことです。ステロイド外用薬を口から摂取した場合の「半数致死量」は、以下のようになっています1)。
・ロコイド軟膏:3,000mg/kg
・リンデロンV軟膏:4,000~4,400mg/kg
・アンテベート軟膏:3,000~3,500mg/kg
・デルモベート軟膏:3,000mg/kg
1) 各医薬品 インタビューフォーム
これらの数値は、外用薬の量ではなく、有効成分であるステロイドとしての量です。そのため、それぞれの外用薬の有効成分の濃度から算出すると、外用薬としての量は以下のようになります。
・ロコイド軟膏(0.1%):3kg/kg
・リンデロンV軟膏(0.12%):3~3.5kg/kg
・アンテベート軟膏(0.05%):6~7kg/kg
・デルモベート軟膏(0.05%):6kg/kg
更に、これらの値は体重1kgあたりの数値のため、体重3kgの赤ちゃんであっても、これらの3倍量が必要になります。
つまり、体重3kgの赤ちゃんの健康に影響を及ぼすほど、ステロイド外用剤を口から摂取させようとした場合、1本5gの軟膏を、一度に2,000~3,000本飲み込ませなければならない計算になります。
これは、現実的に考えて不可能な数字です。
通常、口の周りに1回塗布する薬の量は、せいぜい多くても0.5FTU(0.25g)もありません。例えそれを全て舐めてしまっても、こうした健康への影響を考慮すべき量には遠く及ばないことがわかります。
薬剤師としてのアドバイス:塗り直しの方に気を付ける
赤ちゃんの場合、口の周りに薬を塗っても、どうしても薬を舐めてしまいます。その場合、先述のように体内に入ってしまう薬については憂慮する必要はほとんどありません。しかし、薬がとれてしまったからといって何度も薬を塗り直すことには注意が必要です。特に、ステロイド外用薬の場合、あまり頻繁に薬を塗布するべきではありません。
そのため、赤ちゃんの口の周りに薬を塗る場合は寝ている間に塗布するなど、できるだけ塗布した薬がとれてしまわないように配慮した使い方をする必要があります。
+αの情報:ワセリン・プロペト・アズノール等も心配要らない
ステロイド外用薬と同じように、口の周りに処方される頻度の高いものとして、『プロペト(一般名:白色ワセリン)』や、『アズノール軟膏(一般名:アズレン)』などがあります。こうした塗り薬も、少量を舐めてしまっても心配する必要はありません。
特に『プロペト』や『アズノール』等のやさしめの薬は、何度塗り直しても良いものとして処方されることもあります。
どうしても塗布回数が増えてしまうようであれば、一度主治医と相談し、塗り直しが可能な薬を処方してもらうようにしましょう。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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