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子宮頸がん(HPV)ワクチンは受けるべき?~運動障害との因果関係と、世界保健機関(WHO)や日本産科婦人科学会の声明

回答:世界保健機関(WHO)や日本産科婦人科学会は、接種を推奨している

 子宮頸がん(HPV)ワクチンは、感情的に報道された運動障害の印象が強く、接種が避けられている状況です。
 しかし、現在はワクチンと運動障害の因果関係は否定されており、世界保健機関(WHO)や日本産科婦人科学会も積極的な接種の推奨再開を求めています。

 確かにワクチン接種によるアレルギー等のリスクは完全なゼロではありませんが、子宮頸がんのリスクはそれより遥かに高いものです。
 感情的な論調に振り回されることなく、冷静なリスク評価によって、将来に後悔しない判断をして欲しいと思います。

回答の根拠①:子宮頸がん(HPV)ワクチンの、日本における現状

 子宮頸がん(HPV)ワクチンと運動障害との因果関係は、否定されています。

 確かに運動障害そのものは一つの事例としてフォローすべきものですが、それがあたかもワクチンが原因で起こった障害であるかのように報道されたことによって、日本では未だに「子宮頸がん(HPV)ワクチンを接種すると運動障害が起こる」と誤解されたままの状況が続いています。

 その結果、多くの先進国では国策として積極的な接種が行われているにも関わらず、日本では接種率がほぼ0%に近い水準にまで低下してしまっています1)。

 1) Lancet.27;385(9987):2571,(2015) PMID:26122153

回答の根拠②:世界保健機関(WHO)と、日本産科婦人科学会の声明

 いまの日本のように、科学的根拠に乏しい意見や報告ばかりが強調され、子宮頸がん(HPV)ワクチンが危険なものであるかのような誤った主張・報道が行われていることは、非常に危険な状況です。
 この状況が続くと将来、「日本だけ突出して、子宮頸がんによる死者が多い」という事態を招くことにもなりかねません。

 こうした日本の危機的状況を憂慮し、世界保健機関(WHO)は繰り返しワクチンの安全声明を出しています2)。また、2015年8月29日には日本産科婦人科学会もHPVワクチンの接種勧奨再開を要望する声明を発表しています3)。

 2) 世界保健機関(WHO)ワクチンの安全性に関する専門委員会 「HPVワクチンの安全性に関する声明」 (2014)
 3) 日本産科婦人科学会 「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種の勧奨再開を求める声明」 (2015)

積極的な接種を再開しない日本の対応に非難

 世界保健機関(WHO)や日本産科婦人科学会によるこのような声明があるにも関わらず、厚生労働省は未だに「積極的な接種勧奨」を中止したままです。
 この対応については2015年12月23日、「薄弱な根拠によって、若い女性をヒトパピローマウイルスによるがんの危険に晒している」として、世界保健機関(WHO)が日本の対応を非難する声明を発表しています4)。

 4) 共同通信社 2015年12月24日

回答の根拠③:子宮頸がんのリスクと、ワクチン接種のリスクはどちらが高いか

 子宮頸がん(HPV)ワクチンを受けるかどうかの判断は、「子宮頸がん」そのもののリスクと、「ワクチン接種」のリスクのどちらが高いか、というリスク評価によって行うべきです。
 ただし、この時に間違った情報や偏った意見を元に判断してしまっては、どちらを選んでも将来に後悔してしまうことになります。そのため、冷静なリスク評価が必要です。

 子宮頸がんは、生涯で74人に1人の女性が罹患し、年間3,000人もの人が亡くなっている病気です5)。特に、20~30代の子宮頸がん増えていることで、妊娠の中断や子育への悪影響も大きな問題となっています。

 5) 厚生労働省 「人口動態統計2015年」

 この子宮頸がんは、子宮頸がん(HPV)ワクチンによって防ぐことができます。
 子宮頸がんワクチンではアナフィラキシー等のアレルギーが96万回に1回程度、脳脊髄炎などの症状は430万回に1回程度の頻度で現れることが報告されています6)。

 6) 厚生労働省 「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」
子宮頸がんとワクチン副作用のリスク
 これらを踏まえて、「ワクチン接種」のリスクよりも「子宮頸がん」のリスクの方が遥かに高いため、ワクチン接種を受けた方が有益です、という意見が一般的です。

因果関係は、感情的に決めるものではない~加熱した報道の罪

 実際に何らかの原因によって辛い思いをしている人が居るということと、それがワクチンによるものかどうか(因果関係)は、分けて考える必要があります

 ワクチンを接種した後に運動障害が起これば、誰でも「ワクチンのせいではないのか?」と疑ってしまいます。その気持ちに無理はありません。
 この件で問題だったのは、その気持ちにつけ込んだマスメディアが、根拠が不十分なまま「ワクチンが原因だ」と決めつけるような報道をしたことです。

 その結果、「実際に運動障害に苦しむ人たち」は不確かな情報に踊らされ、若い女性は将来の子宮頸がんのリスクに曝され、誰も得をせず誰も救われない悲惨な状況になっています。

これからのHPVワクチンのために~安心して接種を受けられる環境作りを

 因果関係の有無に関わらず、実際に運動障害などに困っている人が居るのは事実です。
 それを「気のせい」などと蔑ろに扱うことは許されません。実際に心理的な要因が薬やワクチンの効果・副作用に影響することは起こり得ます

 いま「実際に運動障害に苦しむ人たち」にとって必要なことは、既に否定された因果関係を蒸し返すことではなく、その痛みや運動障害を治療する方法です。

 子宮頸がん(HPV)ワクチン接種に対して、感情的な意見ばかりが報道されたのは、国や厚生労働省、医療従事者による適切な情報提供が十分ではないことも一因ではないかと考えています。
 インフルエンザワクチンに関しても、やたら否定的な都市伝説のような誤った情報・デマが蔓延するのも同じかもしれません。

 こうした点は薬剤師としても大いに反省するとともに、これから安心してワクチン接種を受けられる環境作りをしていく必要があります。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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