『ザガーロ』と『プロペシア』、同じAGA治療薬の違いは?~治療効果と値段の比較
記事の内容
回答:高い効果が期待できる『ザガーロ』、値段を安く抑えられる『プロペシア』
『ザガーロ(一般名:デュタステリド)』と『プロペシア(一般名:フィナステリド)』は、どちらも男性型脱毛症(AGA:androgenetic alopecia)の治療薬です。
『ザガーロ』は、0.5mgまで増やすことで『プロペシア』より高い効果が得られます。
『プロペシア』は、『ザガーロ』より値段が安く「ジェネリック医薬品」もあるため、経済的負担を抑えられます。
どちらも、薄毛の主な原因となる「ジヒドロテストステロン」を減らす「5α還元酵素阻害薬」で、作用は同じです。また、どちらの薬もカプセルから出したり、錠剤を割ったりしないよう注意が必要です。
回答の根拠①:治療効果の比較~上限量と作用の違い
『ザガーロ』は1日0.1~0.5mg、『プロペシア』は1日0.2~1mgで使います1,2)。
1) ザガーロカプセル 添付文書
2) プロペシア錠 添付文書
『ザガーロ』を1日0.1mg使った場合と、『プロペシア』を1日1mg使った場合とでは、治療効果は同じくらいになります。しかし、『ザガーロ』を1日0.5mgにまで増やすと、毛髪の数・太さの評価でより高い治療効果が得られることが報告されています3)。
3) J Am Acad Dermatol.70(3):489-498,(2014) PMID:24411083
特に、『ザガーロ』は安全に増量できること3)から、より高い効果を期待する場合には『ザガーロ』を1日0.5mgで使う方法が選ばれます。
作用する酵素型の違い
『ザガーロ』と『プロペシア』は、どちらも男性ホルモン「テストステロン」を脱毛の原因物質「ジヒドロテストステロン」に変換する「5α還元酵素」を阻害することで、薄毛を治療する薬です。
『ザガーロ』は「5α還元酵素」のⅠ型とⅡ型の両方を、『プロペシア』は「5α還元酵素」のⅡ型を選択的に阻害します1,2)。
治療効果の差は、この作用の違いによって生じると考えられています。
回答の根拠②:値段の差~AGAは基本的に全額自費
『ザガーロ』や『プロペシア』は、医療保険が適用されない「薬価基準未収載」の薬です1,2)。そのため保険は使えず、治療にかかる費用は全額自己負担になります。
なお、実際の価格も医療機関がそれぞれ独自に設定しますが、地域差があまり大きくならないよう、ある程度の価格目安が定められている場合があります。
※AGA治療薬の価格の目安
ザガーロ:『プロペシア』よりやや高め (ジェネリック医薬品は無い)
プロペシア:1錠250~300円程度 (ジェネリック医薬品は、この80%程度)
自己負担のAGA治療では、薬の値段差がそのまま経済的負担の差につながるため、治療を続けるためには少しでも値段の安い薬を選ぶことも必要です。
薬剤師としてのアドバイス:子どもや女性は、薬に触れない
『ザガーロ』や『プロペシア』の有効成分は、皮膚から吸収されてしまいます。
『ザガーロ』はカプセルに、『プロペシア』は錠剤にコーティングが施されているため、普通に薬を取扱っている限りは、有効成分に直接触れることはありません。
しかし、カプセルが破れた場合や、錠剤が割れたような場合には、有効成分が露出した状態になります。こうした状態の薬に子どもや女性が触れると、身体の成長・胎児の成長に悪影響を及ぼす恐れがあります。
『ザガーロ』や『プロペシア』は、カプセルから出したり錠剤を割ったりといったように、薬に勝手に手を加えないように注意し、もし子どもや女性が触れてしまった場合には、すぐに流水と石鹸で洗うようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『ザガーロ』0.1mgと、『プロペシア』1mgで同じくらいの効果が得られる
2. 『ザガーロ』は0.5mgまで増やすことで、より高い治療効果が得られるようになる
3. 保険が使えないため、『プロペシア』やそのジェネリック医薬品は、財布に優しい選択肢になる
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆適応症
ザガーロ:男性における、男性型脱毛症
プロペシア:男性における、男性型脱毛症の進行遅延
◆薬価基準
ザガーロ:未収載
プロペシア:未収載
◆用法
ザガーロ:1日1回
プロペシア:1日1回
◆用量
ザガーロ:0.1~0.5mg
プロペシア:0.2~1mg
◆剤型の種類
ザガーロ:カプセル(0.1mg、0.5mg)
プロペシア:錠剤(0.2mg、1mg)
※脱カプセル、錠剤の粉砕はどちらも不可
◆製造販売元
ザガーロ:グラクソ・スミスクライン
プロペシア:MSD
+αの情報:個人輸入は全くお勧めできない
AGAの薬は「個人輸入して使いたい」という人も少なくありません。
しかし、個人輸入で購入できる薬の多くは非正規品で、正規の薬のように有効成分が均一でないこと、安全性が認められていない添加物が使われていることなど、薬としての安全性に著しく劣ります。
特に、箱や見た目は本物でも薬の成分が全く異なる、といったケースも少なくありません。
さらに万が一、薬によって副作用が起きた場合でも、個人輸入の薬を使っていた場合は「副作用被害救済制度」の対象外となり、一切の補償を受けることができません。
これらのことから、個人輸入で薬を使うことは全くお勧めできません。必ず、専門の病院を受診した上で薬を処方してもらうようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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