『ザガーロ』と『アボルブ』、同じデュタステリド製剤の違いは?~脱毛症と前立腺肥大、適応症の違い
回答:適応症が異なる
『ザガーロ(一般名:デュタステリド)』と『アボルブ(一般名:デュタステリド)』は、どちらも有効成分は「デュタステリド」で、同じ成分の薬です。 従来より、前立腺肥大の治療薬である『アボルブ』が、男性型脱毛症に効果があることが知られ、海外でもAGA治療薬として使用されてきました。
2015年8月28日に改めてAGA治療薬として承認され、12月頃に『ザガーロ』という別の名前の薬として登場することになります。
ただし、『ザガーロ』は「男性型脱毛症」、『アボルブ』は「前立腺肥大症」の治療薬として保険適用が認められた薬です。
成分が同じだからと異なる適応症に使用した場合は、保険が効かないので注意が必要です。
回答の根拠:デュタステリドは脱毛症・前立腺肥大の両方に効果がある
『ザガーロ』と『アボルブ』は、どちらも「5α還元酵素阻害薬」です。男性ホルモン「テストステロン」は、5α還元酵素という酵素の作用によって「ジヒドロテストステロン」に変化します。
この「ジヒドロテストステロン」は、男性型の脱毛症や前立腺肥大に関与する主な物質であることが知られています1,2)。
1) ザガーロカプセル 添付文書
2) アボルブカプセル 添付文書
そのため、「デュタステリド」によって5α還元酵素を阻害すると、脱毛や前立腺肥大を抑制することが可能です。
+αの情報:指先からも吸収される薬であることに注意
『ザガーロ』や『アボルブ』の有効成分「デュタステリド」は、経皮的にも吸収される成分です。そのため、薬剤に指で触れることでも吸収されてしまう恐れがあります。特に女性や妊婦、小児が「デュタステリド」に触れると、健康被害が出る恐れがあります。
どちらの薬も、意図せぬ皮膚からの吸収を防ぐために薬剤がカプセルに封入されていますが、万一、カプセルから漏れた薬剤に女性や子どもが触れてしまった場合には、ただちに水と石鹸で洗い流す必要があります。
こうした事故を防ぐためにも、薬のカプセルは分解したりしないようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:日本の医療保険を使って治療する以上、適応症は守るべき
『ザガーロ』と『アボルブ』は有効成分が同一ですが、それぞれ適応症は別に設定されています。男性型脱毛症に『アボルブ』を使用した場合、保険が効かないことに注意が必要です3)。
3) 厚生労働省 保医発0928第1号「アボルブカプセル0.5mgの留意事項について」 (2015)
添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較
■適応症『ザガーロ』・・・男性における男性型脱毛症
『アボルブ』・・・前立腺肥大症
■カプセルの規格
『ザガーロ』・・・0.1mg、0.5mg
『アボルブ』・・・0.5mg
■用法・用量
『ザガーロ』・・・1日1回、0.1~0.5mg
『アボルブ』・・・1日1回、0.5mg
■使用期間
『ザガーロ』・・・12週で改善が認められる場合もあるが、通常6ヶ月間の治療が必要
『アボルブ』・・・治療開始初期に改善が認められる場合もあるが、通常6ヶ月間の治療が必要
■薬価
『ザガーロ』・・・未決定(2015年9月に承認されたところ)
『アボルブ』・・・210.90(0.5mg)
■製造販売元
『ザガーロ』・・・グラクソ・スミスクライン(株)
『アボルブ』・・・グラクソ・スミスクライン(株)
+αの情報:プロペシアより強力な『ザガーロ』
『ザガーロ』は、同じAGA治療薬の『プロペシア(一般名:フィナステリド)』と比較すると、治療効果が強力であることが報告されています。これまで、『アボルブ』の適用外使用が多く行われてきましたが、『ザガーロ』の発売によって、きちんと保険治療として行えるようになります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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