二日酔いの頭痛に『ロキソニン』は効く？～薬の妥当性とリスクの評価

回答：効くこともあるが、副作用も出やすいことに注意

　二日酔いで起こる頭痛は、明確にメカニズムが解明されていないため、これといった治療方法も確立されていません。

　『ロキソニン（一般名：ロキソプロフェン）』などの鎮痛薬も選択肢にはなりますが、空腹時や既に胃が荒れている時にこうした薬を服用すると、胃粘膜への副作用が強く現れる恐れもあります。まず先に、水分・塩分・糖分の補給を行い、シャワーを浴びるなどリスクの低い対策を試した上で、それでもどうしてもダメな場合にのみ、『ロキソニン』の服用を考えるようにしてください。

　なお「迎え酒」は基本的に効果がありません。むしろ頭痛は悪化する恐れがあるためお勧めしません。

回答の根拠①：二日酔いに有効とされる治療方法

　二日酔いには様々な治療方法が提唱されていますが、有効なものとしては以下のようなものが挙げられています1)が、その中で『ロキソニン』などのNSAIDsは頭痛に効果があるとされています。実際、『ロキソニン』は二日酔いの疲労や吐き気には効果が無いものの、頭痛には効果があるという報告があります2)。

・脱水症状：水分補給
・吐き気：ビタミンB6
・頭痛：NSAIDs

　1) Ann Intern Med.132(11):897-902,(2000) PMID:10836917
　2) Alcohol. 2019 Nov 2. [Epub ahead of print] PMID:31689482

　ただし、二日酔いをしているような状況では、元々暴飲暴食や夜更かし、嘔吐などによって消化管が傷付いている場合が少なくありません。そういった場合にNSAIDsを服用すると、胃腸障害の副作用が強く現れる恐れもあり、安易に推奨できるものではありません。

薬を使う前に、まず試すべき対処方法

　二日酔いの諸症状には、脱水状態（電解質異常）や低血糖状態・寝不足などさまざまなものが関係していると考えられます。そのため、「水分や塩分の補給」・「糖分補給」・「休養」などが良い選択肢になります。
　これらの対処方法には目立ったリスクがないため、薬を使うよりも優先的に試すことをお勧めします。

回答の根拠②：迎え酒は効果がなく、むしろ頭痛が悪化する

　二日酔いの時にお酒を飲む「迎え酒」は古くから行われていますが、特に二日酔いの症状を改善する効果はなく、むしろ頭痛が悪化する恐れがあることが報告されています3)。特に冷たい飲料は控えることをお勧めします。

　3) Ugeskr Laeger.179(50). pii: V69578,(2017) PMID:29260703

薬剤師としてのアドバイス：二日酔いを劇的に治療・予防できる薬は無い

　世間には色々なサプリメントも販売されていますが、二日酔いを明確に治療・予防する方法は確立されていません。色々な治療方法を試した結果、「節度を守ることが最善」という結論に至った研究もあるくらいです4)。

　4) BMJ.331(7531):1515-8,(2005) PMID:16373736

ポイントのまとめ

1. 『ロキソニン』などのNSAIDsは、二日酔いの頭痛に有効とされている
2. ただし、胃腸障害の副作用リスクがあるため、脱水や低血糖・寝不足などの解消を優先する
3. 二日酔いの最善の予防方法は「節度を守る」こと

+αの情報①：二日酔いに効く漢方薬『五苓散』

　漢方薬の『五苓散』は、適応症に「二日酔い」が含まれる薬です。『ロキソニン』などのNSAIDsよりも胃にやさしいため、胃が弱い人や胃が痛む状況では良い選択肢になります。

+αの情報②：飲酒で炎症性サイトカインが増加する？

　日酔いの頭痛と関係するかどうかは不明ですが、アルコール摂取によって炎症性サイトカインが増加するという研究があります5)。

　5) J Neuroinflammation.9:130,(2012) PMID:22709825

～注意事項～

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。