パニック障害・全般性不安障害・社会不安障害・強迫性障害・外傷後ストレス障害、同じ不安障害の違いは?~SSRIの適応症
記事の内容
回答:全て「不安障害」、治療のために分類される
「不安障害」とは、”不安”という本来は危険を察知する正常な精神状態が、病的に強く現れることによって、日常生活に支障を来たすような状態のことを指します。
その際、”不安”がどういった理由で生じるのかによって、以下の5つに分類されています(厳密には、DSM等の様々な基準によって診断し、高所恐怖症など特殊な分類もあります)。
1.パニック障害
2.全般性不安障害
3.社会不安障害
4.強迫性障害
5.外傷後ストレス障害(PTSD)
主に治療に用いるSSRIの適応症も、それぞれ効果のあるものは区別して記載されているため、注意が必要です。
回答の根拠:薬の適応症は、区別して明記される
不安障害の薬物治療によく用いるSSRIでは、それぞれ適応症は効果のあるものを区別して記載しています。
※SSRIの適応症
『レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)』・・・うつ病・うつ状態、(効能追加(申請中):社会不安障害)
『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』・・・うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害
『デプロメール(一般名:フルボキサミン)』・・・うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害
『ルボックス(一般名:フルボキサミン)』・・・うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害
『パキシル(一般名:パロキセチン)』・・・うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害
よく似た薬ではあるものの、SNRIやNaSSAには、「不安障害」に対する適応がありません。
※SSRIに適応のない「全般性不安障害」に対しては、SNRIである『サインバルタ(一般名:デュロキセチン)』1)や、神経痛の鎮痛薬『リリカ(一般名:プレガバリン)』2)が有効であるとする報告がありますが、現在はまだ保険適用外です。
1) Prim Care Companion J Clin Psychiatry.9(2):100-7,(2007) PMID:17607331
2) Am J Psychiatry.160(3):533-40,(2003) PMID:12611835
詳しい回答①:不安を感じる理由
「パニック障害」では、不安を感じる理由は特にありません。何かを考えたわけでもなく、何かが起きたわけでもないのに、発作的に突然、強い”不安”に襲われるものです。
「全般性不安障害」は、ある一つのことを考え始めるとそれに囚われ、不安がどんどん大きくなっていくものです。また、最初に考え始めた一つのことに関連した別の不安が次々に現れることもあります。
「社会不安障害」は、主に他者からの視線・評価に対する不安が強いものです。自分が周りからどう思われているか、どう見られているか、という不安が強いあまり、社会生活に支障を来たすものです。
「強迫性障害」は、手を洗うのをやめられない、玄関のカギを閉めたか何度も確認しなければ気が済まないなど、特定の行為を繰り返さざるを得なくなり、これによって日常生活に支障を来たすものです。
「外傷後ストレス障害(PTSD)」は、ある過去のストレスがトラウマのように強く残り、これを思い出さないよう回避、過敏になることで、日常生活や社会生活に支障を来たすものです。
詳しい回答②:具体的な症状
「パニック障害」では、急に不安に襲われることで、呼吸が苦しくなる等の身体症状が現れます。また、”いつ不安が襲ってくるかわからない”ということが更なる不安を呼ぶこともあります。酷い場合には失神を起こすこともあります。
「全般性不安障害」では、何かを考え始めた時、何かが思い浮かんだ時に、それに対する不安が払しょくできなくなります。そのため、何かが起きそうだという不安にずっと囚われることになります。これにより震え、肩凝り、口の渇きなどを起こします。
「社会不安障害」では、他人からの視線を気にするあまり、極度に緊張し、人前で話ができない、字を書けない、飲食できない等の症状が現れます。また、こうした緊張を避けるために、人前に出ること自体を避けることもあります。(※対人恐怖症との違い)
「強迫性障害」では、極度に汚れを嫌う潔癖症や、火の元・戸締りを異常に気にする病的な疑念、”ゴミ屋敷”のようにゴミを不条理なほど集めてしまう溜め込みなど、症状は様々なものとして現れます。
一般的に、他者から見ると苦痛や不安を和らげたり、何かの達成感を得られるとは考えにくいものに対し、病的に固執するもの、と考えることができます。
「外傷後ストレス障害(PTSD)」では、過去のトラウマの記憶が突然甦る”フラッシュバック”や、同じことを繰り返さないよう過剰に回避するようになること、自分を守るために感情や興味・関心が乏しくなるといった症状があります。
薬剤師としてのアドバイス:薬物治療と併せて、認知行動療法も取り入れる
「不安障害」では、薬物療法と併せて認知行動療法が有効なケースも多々あります。
認知行動療法は、最近では慢性的な不眠症などに対しても認知行動療法は最優先すべき、という意見もあり、広く治療の一環として行われるようになっています。
認知行動療法では、考え方を矯正したり、あるいは不安をそのまま受け入れることでそれに固執しなくなるような考え方を身に着けることができます。
薬では治せない”不安の根本”を解決できる方法であり、なおかつ副作用もない治療方法のため、なかなか治らず困っている場合には、一度主治医と相談してみることをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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