『ディレグラ』と『アレグラ』、同じアレルギー薬の違いは?~花粉症で鼻づまりがひどい時の薬
記事の内容
回答:『ディレグラ』には、鼻づまりを解消する薬が配合されている
『ディレグラ(一般名:フェキソフェナジン + プソイドエフェドリン)』と『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』は、どちらもアレルギー性鼻炎の薬です。
『ディレグラ』は、『アレグラ』に”鼻づまり”を解消する「プソイドエフェドリン」を追加した薬です。

そのため、『ディレグラ』は鼻づまりの症状にもよく効きますが、ここぞという時の”切り札”の薬で、2週間以上続けて使うようなものではない、という点に注意が必要です。
回答の根拠①:『ディレグラ』の効果~血管収縮薬「プソイドエフェドリン」を配合する目的
「フェキソフェナジン」等の抗ヒスタミン薬は、くしゃみ・鼻水・痒みの原因となる「ヒスタミン」を抑えることで、アレルギーの症状を抑えます。しかし、”鼻づまり”の症状は「ヒスタミン」とは別のメカニズムで起こるため、抗ヒスタミン薬だけでは”鼻づまり”の症状にあまり効果的ではありません1)。
そこで、『ディレグラ』では抗ヒスタミン薬の「フェキソフェナジン」に、血管収縮薬の「プソイドエフェドリン」を追加で配合しています。「プソイドエフェドリン」は、鼻粘膜の血管を収縮させて充血や腫れを抑えることで、鼻づまりの症状を一時的に解消する効果があります2)。

そのため、『ディレグラ』であればくしゃみ・鼻水・痒みだけでなく、鼻づまりの症状も解消することができます。実際、ガイドラインでも鼻閉(鼻づまり)型の鼻炎には、中等度の症状から『ディレグラ』が選択肢となることが明記されています3)。
1) J Allergy Clin Immunol.108(5 Suppl):S147-334,(2001) PMID:11707753
2) Ann Allergy Asthma Immunol.102(2):116-20,(2009) PMID:19230461
3) 鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2024年版
「プソイドエフェドリン」は”速く”効く
「プソイドエフェドリン」は、飲んで45~60分ほどで効果が現れ始めます4,5)。そのため、『ディレグラ』は、”鼻づまり”の症状を”今すぐに何とかしたい”という緊急時に非常に便利な薬と言えます。
通常、花粉症などの”鼻づまり”には『シングレア(一般名:モンテルカスト)』などの「抗ロイコトリエン薬」や『ナゾネックス(一般名:モメタゾン)』などの「ステロイド点鼻薬」といった薬を使って症状をコントロールするのが一般的です3)が、これらの薬はここまで速く効き始めるわけではないからです。
4) Allergy Asthma Proc.25(5):335-43,(2004) PMID:15603207
5) Clin Ther.28(10):1658-69,(2006) PMID:17157121
回答の根拠②:『ディレグラ』のリスク~2週間以上は続けて使わない理由
『ディレグラ』は、原則として2週間程度の使用に留め、それ以上は長く使い続けないように注意する必要があります6)。これは、『ディレグラ』に配合されている血管収縮薬「プソイドエフェドリン」が交感神経に作用するため、連用していると高血圧や不整脈、心不全などの循環器系トラブルを引き起こす恐れがある7)からです。
『ディレグラ』がたとえよく効いていたとしても、ある程度の急場をしのいだら「抗ロイコトリエン薬」や「ステロイド点鼻薬」といった薬に、あるいは”鼻づまり”の症状がある程度解消された時点で「抗ヒスタミン薬」単独の薬に、それぞれ切り替えるようにしてください。

6) ディレグラ配合錠 添付文書
7) Arch Intern Med.165(15):1686-94,(2005) PMID:16087815
不眠に悩んでいる人も、注意が必要
「プソイドエフェドリン」には興奮作用があるため、”不眠”の原因になることもあります8)。もともと不眠に悩んでいる人の場合は、安易に「プソイドエフェドリン」のような薬を使わないよう注意が必要です。
8) Ann Allergy Asthma Immunol.92(1):73-9,(2004) PMID:14756468
薬剤師としてのアドバイス:花粉症は”早めの治療”が重要
花粉症は、症状がひどくなってから治療を始めるよりも、花粉が飛び始めた日、あるいは少しでも症状が現れた日から治療をスタートさせた方が、シーズンを通して楽に過ごせます9)。これを「初期療法」と呼び、現代の花粉症治療の重要な柱になっています3)。

今シーズン、『ディレグラ』が必要になるほど花粉症の症状がひどくなってしまった人は、ぜひこの「初期療法」を一度試してみてください。症状だけでなく、使う薬の種類や量も少なく抑えられる可能性があります。
9) Ann Allergy Asthma Immunol.109(6):458-64,(2012) PMID:23176888
ポイントのまとめ
1. 『ディレグラ』 = 『アレグラ』 + 「プソイドエフェドリン」
2. 「プソイドエフェドリン」は、鼻づまりの症状に対して速効性がある(1時間以内)
3. 「プソイドエフェドリン」は自律神経を乱すので、2週間以上続けて使わない
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他の資料の記載内容の比較
フェキソフェナジン +プソイドエフェドリン | フェキソフェナジン | |
先発医薬品名 | ディレグラ | アレグラ |
適応症 | アレルギー性鼻炎(※鼻閉症状が中等症以上の場合) | アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒 |
用法 | 1日2回(空腹時) | 1日2回 |
花粉症への使用 | 鼻閉症状が強い期間のみの最小限にとどめる | 好発季節の直前から投与を開始し、季節終了時まで続けることが望ましい |
成人用の錠剤の大きさ | 長径17.5mm、短径7.8mm、厚さ6mm | 長径12.1mm、短径5.6mm、厚さ4.1mm |
高血圧・冠動脈疾患への投与 | 重度の人には禁忌 | (特に制限なし) |
不眠に対する注意喚起 | 交感神経刺激薬による不眠等の既往がある人には禁忌 | (特に制限なし) |
ドーピング違反 | 禁止(競技時) | (特に指定なし) |
先発医薬品の製造販売元 | サノフィ | サノフィ |
同成分のOTC医薬品 | 『アレグラFXプレミアム』 | 『アレグラFX』 |
+αの情報①:『ディレグラ』は「ドーピング禁止薬物」に引っかかる
『ディレグラ』に含まれている「プソイドエフェドリン」には交感神経を刺激する作用があるため、「興奮剤」として競技時の禁止薬物に指定されています10)。スポーツ選手が使用する際は注意が必要です。
スポーツ選手が花粉症、特に”鼻づまり”の症状に困っている場合には、先述の早めの治療開始(初期療法)で「ステロイド点鼻薬」を使うのが一般的です。
10) 日本アンチ・ドーピング機構「2024禁止表国際基準」
+αの情報②:『ディレグラ』の錠剤はなぜデカいのか?
「プソイドエフェドリン」は「覚せい剤原料」に該当する成分です。例外的に「覚せい剤原料」として扱わなくて良いのは10%以下の製剤だけです11)。『ディレグラ』は、この「覚せい剤原料」としての扱いになってしまうのを避けるために、敢えて錠剤を大きくし、「プソイドエフェドリン」の濃度を10%以下に下げている、という事情があります。
11) 厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課「覚醒剤原料取扱者における覚醒剤原料取扱いの手引き」
+αの情報③:類薬「フェニレフリン」の有効性
「プソイドエフェドリン」と同じように、鼻粘膜の血管を収縮させて”鼻づまり”の症状を解消する薬に「フェニレフリン」があります。
「フェニレフリン」もOTC医薬品として非常によく用いられている薬ですが、花粉症の”鼻づまり”の症状には効果がない12,13,14)ことが確認され(※風邪の鼻づまりには多少の効果がありそう15))、海外では販売が中止されています。
12) Ann Allergy Asthma Immunol.102(2):116-20,(2009) PMID:19230461
13) J Allergy Clin Immunol Pract.3(5):702-8,(2015) PMID:26143019
14) Ann Allergy Asthma Immunol.116(1):66-71,(2016) PMID:26560899
15) Clin Ther.29(6):1057-70,(2007) PMID:17692721
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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