■サイト内検索


スポンサードリンク

似た薬の違い 慢性腸疾患

/

『ペンタサ』と『アサコール』、同じ「メサラジン」製剤の違いは?~ドラッグ・デリバリー・システムの違いによる適応症の差

回答:小腸から大腸に作用する『ペンタサ』と、大腸に特化した『アサコール』

 『ペンタサ(一般名:メサラジン)』と『アサコール(一般名:メサラジン)』は、どちらも抗炎症作用を持つ「メサラジン」の薬で、潰瘍性大腸炎の治療に用います。

 『ペンタサ』は、小腸から大腸の広い範囲に作用するため、「潰瘍性大腸炎」だけでなく、小腸に病変のある「クローン病」にも効果があります。
 『アサコール』は、小腸をそのまま通過し、回腸から大腸で作用するため、「潰瘍性大腸炎」の治療に特化した薬です。
ペンタサとアサコール~メサラジンのDDSで届く範囲
 「メサラジン」は、そのまま飲むと小腸で吸収されてしまうため、何らかの方法で薬を大腸まで届ける必要があります。
 『ペンタサ』と『アサコール』は同じ成分の薬ですが、薬を大腸まで届けるための製剤工夫(ドラッグ・デリバリー・システム(DDS))が違うため、作用する範囲や適応症が異なります。

回答の根拠①:小腸から大腸まで広く薬が作用する『ペンタサ』

 『ペンタサ』は、有効成分「メサラジン」を「エチルセルロース」でコーティングした放出調節製剤です1)。このコーティングには小さな穴がたくさん空いているため、そこから少しずつ薬が放出されます。
ペンタサ錠の放出調節システム
 そのため『ペンタサ』は、小腸から大腸にかけて広く薬が作用し、「潰瘍性大腸炎」だけでなく、小腸に病変のある「クローン病」にも効果があります2)。

 1) ペンタサ錠 インタビューフォーム
 2) ペンタサ錠 添付文書

回答の根拠②:大腸でのみ溶ける、『アサコール』の放出調節システム

 『アサコール』のコーティングは、pH7以上になると溶けるように設計されています3)。
アサコール錠のpH依存性溶解コーティング
 3) アサコール錠 インタビューフォーム

 胃や小腸では、胃酸があるためにpHは酸性に傾いています。そのため、薬のコーティングは溶けずにそのまま通過します。pH7以上になる回腸~大腸に到達すると、ここで初めてコーティングが溶けて薬が作用し始めます。

 「潰瘍性大腸炎」の治療効果は、大腸での「メサラジン」濃度と相関します4)。そのため、大腸に高い濃度で「メサラジン」を届けられる『アサコール』は、「潰瘍性大腸炎」の治療に特化した薬と言えます。

 4) Gut.47(3):410-4,(2000) PMID:
10940280

胃酸を抑える薬との相互作用

 胃内のpHは胃薬のPPIで大きく変動します。しかし、『アサコール』はPPIと併用しても、「メサラジン」の放出には影響ないことが報告されています5)。

 5) Br J Clin Pharmacol.46:173-175,(1998) PMDI:9723828

薬剤師としてのアドバイス:薬は、1回量をまとめて全部1回で飲み込む必要はない

 『ペンタサ』や『アサコール』は、飲む錠剤の数が多いのが難点です。
 しかし、1回量の錠剤を、まとめて全部1回で飲み込まなければならないというわけではありません。特に、多くの錠剤をまとめて飲み込もうとすると、喉の反射によって吐き気を催す場合があります。

 錠剤が大きかったり多かったりして飲みづらい場合には、1錠ずつ飲むようにしてください。

 特に、『ペンタサ』や『アサコール』のように錠剤に工夫がされている薬を割ったり砕いたりすると、正しく薬が作用しなくなり、治療効果に影響してしまう恐れがあります。飲みにくいからといって、自己判断で薬に手を加えないようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『ペンタサ』と『アサコール』は、どちらも「メサラジン」の薬で、腸への届き方が異なる
2. 『ペンタサ』は、小腸から大腸にかけて広く作用するように設計されている薬
3. 『アサコール』は、大腸に高い濃度で薬を届ける「潰瘍性大腸炎」に特化した薬

添付文書記載内容の比較

■効能・効果
ペンタサ:潰瘍性大腸炎(重症を除く)、クローン病
アサコール:潰瘍性大腸炎(重症を除く)

■用法
ペンタサ:通常1日3回、活動期は1日2回・寛解期は1日1回も可
アサコール:通常1日3回、寛解期は1日1回も可

■用量
ペンタサ:1,500~4,000mg
アサコール:2,400~3,600mg

■主な副作用
ペンタサ:下痢(2.61%)、血便(1.11%)、腹痛(0.99%)、発疹(0.67%)、発熱(0.59%)など
アサコール:腹痛(2.9%)、下痢(2.1%)、頭痛(1.3%)、腹部膨満(1.3%)、悪心(1.3%)など

■取扱い上の注意
ペンタサ:かまずに服用、粉砕も避ける。ただし、必要に応じて二分割して服用可
アサコール:かまずに服用、粉砕も行わない

■剤型の種類
ペンタサ:錠(250mg、500mg)、顆粒、坐剤、注腸
アサコール:錠(400mg)

■製造販売元
ペンタサ:杏林製薬
アサコール:協和発酵キリン・ゼリア新薬工業

+αの情報①:潰瘍性大腸炎は、きちんと服薬することで9割が寛解へ

 潰瘍性大腸炎は、『ペンタサ』や『アサコール』の服用をきちんと続けることで、9割近くが寛解を維持できることが知られています。その一方で、飲み忘れ等があるとこの効果は4割程度にまで落ちてしまいます6)。
潰瘍性大腸炎の寛解率と服薬アドヒアランス
 6) Am J Med.114:39-43,(2003) PMID:12543288

 1回に服用する錠剤の数も多くなる傾向がありますが、症状が治まってきたからといって勝手に薬を止めてしまわず、徹底して薬の服用を続けることをお勧めします。

+αの情報②:1日1回で良い『リアルダ』

 『ペンタサ』や『アサコール』は、通常1日3回飲む必要があり、1回に飲む錠剤の数も多い傾向があります。こうした服用回数・錠数の多さは、飲み忘れや治療中断などの原因になってしまいます。

 新しく登場した『リアルダ(一般名:メサラジン)』は、1日1回の服用で済む薬で、こうした負担を減らせる薬として期待されています。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

前のページ

次のページ

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

■おすすめ記事

  1. 「リン酸コデイン」は12歳未満に使っても良い?~呼吸抑制と日…
  2. 不要な薬を薬局に返せば、返金してもらえる?~健康保険法上の解…
  3. 『アムロジン』・『ワソラン』・『ヘルベッサー』、同じCa拮抗…
  4. 『タミフル』・『リレンザ』・『イナビル』・『ラピアクタ』、同…
  5. 今さら聞けないインフルエンザの予防接種の話~ワクチンの効果と…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

PAGE TOP