『フェブリク』と『ザイロリック』、同じ尿酸生成抑制薬の違いは?~服用回数と作用の強さ、腎障害時の用量調節
記事の内容
回答:『フェブリク』は1日1回の服用で、『ザイロリック』より尿酸値を大きく下げる
『フェブリク(一般名:フェブキソスタット)』と『ザイロリック(一般名:アロプリノール)』は、どちらも体内で作られる尿酸を減らす「尿酸生成抑制薬」です。
『フェブリク』は1日1回の服用で、『ザイロリック』尿酸値を下げる作用が強力です。また、腎機能が多少低下していても用量調節が必要ないことも特徴です。
ただし、値段の安い『ザイロリック』の方が、費用対効果の点では優れるとされています。
なお、『フェブリク』は『ザイロリック』よりも心血管系の死亡リスクが高いという報告があり、2019年7月に添付文書へも注意喚起が追記されています。
回答の根拠①:『フェブリク』は1日1回の服用で、より尿酸値を下げられる
『フェブリク』と『ザイロリック』は、どちらも尿酸産生に関わる酵素「キサンチンオキシダーゼ」を阻害することで、尿酸産生を減らす薬です。
『フェブリク』を1日40mg(1日1回)で飲んだ場合と、『ザイロリック』を1日300mg(1日3回)で飲んだ場合とで、16週間後に尿酸値6.0mg/dL以下をどれだけ達成できるかを検討した結果、『フェブリク』の方が達成率が高かったことが報告されています1)。
※尿酸値6.0mg/dLの達成率
『フェブリク』1日40mg(1日1回)・・・・・・90.0%
『ザイロリック』1日300mg(1日3回) ・・・・ 73.7%
1) フェブリク錠 インタビューフォーム
つまり、『フェブリク』は1日1回と少ない負担で、より大きく尿酸値を下げられる薬と言えます。
心血管系のリスクの報告も
『フェブリク』は、『ザイロリック』による治療よりも心血管系の死亡リスクが高くなる2)ことが報告され、2019年7月に添付文書にもその旨の注意喚起が新設されています3)。
日本では特に使用に制限はかけられていませんが、海外では、心血管系のリスクを抱える人には他に選択肢がない場合を除いて使わないよう勧告している国もあるなど、リスクへの厳格な対応が行われている4)ことは知っておく必要があります。
2) N Engl J Med.378(13):1200-10,(2018) PMID:29527974
3) 厚生労働省「2019年07月09日薬生安発0709第10号 別紙1」
4) 英国医薬品・医療製品規制庁「Febuxostat (Adenuric): increased risk of cardiovascular death and all-cause mortality in clinical trial in patients with a history of major cardiovascular disease」
回答の根拠②:腎機能低下時の用量調整
腎障害がある場合、『ユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)』などの「尿酸排泄促進薬」の効果が弱まってしまうため、『フェブリク』や『ザイロリック』といった「尿酸生成抑制薬」による治療が中心になりますが、『ザイロリック』は腎障害の程度によって用量を調節する必要があります5)。
※腎機能低下時の『ザイロリック』の用量調節 5)
通常用量 ・・・・・・・・・・・・ 1日200~300mg
30mL/min<Ccr≦50mL/min・・・1日100mg
Ccr≦30mL/min・・・・・・・・・1日50mg
5) 日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」
一方、『フェブリク』は腎機能が低下した人に投与しても副作用の発生頻度は変わらなかったことが確認されています1)。そのため、軽~中等度(30mL/min≦Ccr<90mL/min)の腎機能低下患者であれば通常用量で使うことができます。
重度(10mL/min≦Ccr<29mL/min)の腎障害の場合でも、『フェブリク』は用量調節の必要はないとする報告6)もありますが、AUCが1.8倍にまで高まること1)や使用実績が少ないことから、必要に応じて用量調節をする場合があります。
6) Am J Ther.12(1):22-34,(2005) PMID:15662289
回答の根拠③:『ザイロリック』の費用対効果
『ザイロリック』は1日2~3回の服用が必要であるなど、1日1回で良い『フェブリク』と比べると服用の手間が大きい薬ですが、値段の安い薬です。
※薬価の比較(2018年改訂時)
『フェブリク』・・・・10mg(31.70)、20mg(57.70)、40mg(108.70)
『ザイロリック』・・・50mg(11.60)、100mg(21.50)
実際、費用対効果の点では『ザイロリック』の方が優れるとする報告もあります7)。
7) Ann Intern Med.161(9):617-26,(2014) PMID:25364883
薬剤師としてのアドバイス:尿酸値は急に下げたり、発作中に変動させたりしない
尿酸値を急に下げると、痛風発作を起こすことがあります。そのため、『フェブリク』や『ザイロリック』は少ない量から飲み始める必要があります。また、痛風発作が起きている時に薬を飲んだり止めたりすると、発作が悪化する恐れもあります。
痛風の薬を飲んだら痛風になった、という話をしばしば耳にしますが、これらは尿酸値を急に下げたり、発作が起きている時に薬を飲んだり止めたりした場合がほとんどです。発作が起きた場合には主治医と対応を相談し、自己判断で薬の飲み方を変えないようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『フェブリク』は1日1回の服用で尿酸値を下げる作用も強いが、心血管系のリスクが指摘されている
2. 『ザイロリック』は、費用対効果の面で『フェブリク』よりも優れる
3. 軽~中等度の腎障害時は、『フェブリク』であれば用量調節が必要ない
添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較
◆適応症
フェブリク:痛風・高尿酸血症、がん化学療法に伴う高尿酸血症
ザイロリック:痛風・高尿酸血症を伴う高血圧症
◆用法
フェブリク:1日1回
ザイロリック:1日2~3回
◆最大用量
フェブリク:60mg
ザイロリック:300mg
◆腎障害時の用量調節
フェブリク:重度の腎障害がある患者には慎重投与
ザイロリック:腎機能障害のある患者では、減量や投与間隔の延長を考慮
◆剤型の種類
フェブリク:錠(10mg、20mg、40mg)
ザイロリック:錠(50mg、100mg)
◆製造販売元
フェブリク:帝人ファーマ
ザイロリック:グラクソ・スミスクライン
+αの情報①:体から尿酸を排泄させる『ユリノーム』
体に「尿酸」が溜まる原因には、尿酸を作る量が増えることと、尿酸の排泄が減っていることの2つがあります。
『ザイロリック』や『フェブリク』はどちらも尿酸の合成を阻害するため、尿酸を作る量が増えたタイプ(尿酸産生過剰型)に効果的な薬です。
一方、尿酸の排泄が減っているタイプ(尿酸排泄低下型)には『ユリノーム』が使われます。
+αの情報②:痛風発作がなくても尿酸値は下げた方が良い?
高尿酸血症を放置すると、痛風発作だけでなく、腎障害のリスクも高まることが報告されています8)。
※腎障害の発症リスク 8)
尿酸値が9.0mg/dL以上・・・3.12倍
尿酸値が7.0~8.9mg/dL・・・1.74倍
米国内科学会が2016年に発表したガイドラインでは、発作が再発しない限りは薬を使わないという選択肢も残していますが、腎障害に関しては保留にしています9)。
8) J Am Soc Nephrol.19(12):2407-13,(2008) PMID:18799720
9) Ann Intern Med.1,doi:10.7326/M16-0570,(2016) PMID:27802508
今後のより詳細な研究が待ち望まれています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
【加筆履歴2019.7.25:フェブキソスタットの心血管系リスクについて】
CARES試験(PMID:29527974)の結果や、それに伴う添付文書の改訂、海外での勧告などの情報を加筆しました。