p<0.05とはいったい何のことか~薬のパンフレットやグラフでよく見かける有意差の表記
記事の内容
回答:確率のこと
「p値」は確率のことで、「p<0.05」は「確率が5%未満である」ということを意味しています。
AとB、2つの薬の効き目を比較したグラフに「p<0.05」と書いてあった場合、「この差が、単なる偶然で生じた差(誤差)でしかない危険率が5%未満」ということを意味しています。
つまり、「この差は、AとBの効き目の違いによって生じた必然の差です、という主張が95%以上正しい」ということです。
通常、これをもって比較したデータに「有意差あり」とします。
回答の根拠①:「p値」の意味~帰無仮説が偶然に成立してしまう確率
AとBの効き目のデータに差があったとしても、それが薬の効き目の違いによるものなのか、単なる偶然で生じた誤差でしかないのか、ハッキリさせる必要があります。
そこで、どちらの確率が高いのか、統計を使ってハッキリさせます。
①自分が主張したいことと、逆の仮説(帰無仮説)を立てる
「AとBの効き目には差がある」ということを主張したい場合、統計ではまずそれと逆、敢えて可能性の低い方の仮説(帰無仮説:「AとBの効き目には、差がない」)を立てます。
②帰無仮説が成立する確率(p値)を算出する
この「帰無仮説」は、誤差などの事情によって偶然に成立してしまうこともあります。そのため、どのくらいの確率で偶然に成立してしまうのか、その確率(危険率)を検証します。
「p値」は、この「帰無仮説」が成立してしまう確率(危険率)を表した数値です。
③p値と有意水準を比べる
算出された「p値」が、予め定めておいた「有意水準」より小さければ、帰無仮説は成立せず棄却されます。
つまり、帰無仮説がほぼ成立しない、裏返せば、最初に立てた仮説(自分が主張したいこと)がほぼ正しいと言える、ということになります。
逆に「p値」が「有意水準」より大きければ、帰無仮説が成立してしまう確率が結構ある、ということを意味します。
つまり、最初に立てた仮説(自分が主張したいこと)が正しくない確率が結構ある、ということになります。
回答の根拠②:有意水準が0.05なのは、単なる習慣
医学・薬学を扱った統計では、「有意水準」は多くの場合0.05に設定されていますが、「有意差」とするためにはp<0.05でなければならない、といった理由は特にありません。単なる、医学・薬学における習慣です。
そのため、慎重な比較をする場合にはp<0.01やp<0.005といった厳しい有意水準を用いることもあります。
一方、果敢に大胆な仮説を打ち立てる場合には、p<0.1で主張することも可能ですが、その有意水準で述べた結論が世の中に受け入れられるかどうかは別の話です。
なぜ、こんなに回りくどいことが必要なのか
薬のデータを比較したとき、その間に生じた差は誤差などたまたま生じた「偶然の差」ではなく、薬の違いによって生じた「必然の差」であることを証明しなければなりません。
「必然の差」であることを直接証明することは非常に困難ですが、逆に「偶然の差」である確率は計算によって算出することができます。
そのため、「必然の差である可能性が非常に高い」ことを主張するために、「偶然の差である可能性は非常に低い」ことを証明する、「背理法」という方法を利用します。
当然ながら、「必然の差である」ことと「偶然の差である」ことが、両立し得ないから行える論法です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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