「ノロウイルス」と「ロタウイルス」、同じ胃腸炎は何が違う?~大人で発症するもの、しないもの
回答①:症状や対策は同じ
「ノロウイルス」による胃腸炎と、「ロタウイルス」による胃腸炎は、どちらも発熱や下痢、嘔吐が症状のウイルス感染症です。症状は同じため、患者の状態から「ノロウイルス」なのか「ロタウイルス」なのかを判別することは不可能です。しかし、どちらにせよ下痢や嘔吐といった症状から脱水症状を起こすことが最も大きな問題となるため、水や電解質の補給を行いながら、重症化を防ぐことになります。
回答②:流行する時期や、年齢層の違い
「ノロウイルス」は年末年始がピーク、「ロタウイルス」は3~4月がピークと、流行する時期が若干ずれていることから、およその見当をつけることが可能です。また、精密検査によっても原因ウイルスを特定することも可能です。また、「ノロウイルス」は流行する年齢層も幅広い一方、「ロタウイルス」は大人が発症することはほとんどなく、生後6~18ヶ月の乳幼児の間で流行します。
回答の根拠:「ロタウイルス」胃腸炎は、なぜ大人で起こらないのか
「ロタウイルス」胃腸炎は大人ではほとんど起こりません。 日本においても「ロタウイルス」は100%の乳幼児が感染しています。実際に胃腸炎を起こさなくとも、何らかのかたちで感染を経験します。
大人は、こうした感染を何度も経験しているため、次第に感染しても全く症状を起こさなくなります1)。
その結果、「ロタウイルス」発症者の大部分は生後6~18ヶ月の乳幼児になります。
1) 厚生労働省 ロタウイルスに関するQ&A
一方、「ノロウイルス」胃腸炎は、生牡蠣などの食中毒によっても起こるため、大人の間でも流行します。
詳しい回答:細かな違い
原因ウイルス
ノロウイルス・・・27~30nmの1本鎖RNAウイルスロタウイルス・・・100nmの2本鎖RNAウイルス
名前の意味
ノロウイルス・・・米国オハイオ州ノーウォーク(Norwalk)の小学校で初めて検出されたことからロタウイルス・・・車輪(ラテン語でrota)のような構造をしていることから
流行時期
ノロウイルス・・・晩秋に始まり、年末年始をピークに冬全体を通して流行ロタウイルス・・・3~4月がピーク
主な感染者
ノロウイルス・・・幅広いロタウイルス・・・生後6~18ヶ月
感染経路
ノロウイルス・・・感染者の排泄物・吐瀉物・唾液からの経口感染、汚染された食品による食中毒ロタウイルス・・・感染者の排泄物からの経口感染
潜伏期間
ノロウイルス・・・24~48時間程度ロタウイルス・・・24~72時間程度
主な症状
ノロウイルス・・・嘔吐、下痢、発熱などの急性胃腸炎ロタウイルス・・・嘔吐、下痢、発熱などの急性胃腸炎 ※特徴とされる白い便は全体の半分も見られない
消毒方法
ノロウイルス・・・アルコールが無効、次亜塩素酸による消毒が必要ロタウイルス・・・アルコールが無効、次亜塩素酸による消毒が必要
※共に「エンベロープ」を持たないウイルスであるため
薬剤師としてのアドバイス:ウイルス性胃腸炎に、下痢止めは推奨されない
「ノロウイルス」や「ロタウイルス」による胃腸炎で下痢をしている際には、『ロペミン(一般名:ロペラミド)』等の下痢止めは推奨されません。下痢そのものは、体内で増殖したウイルスを排出しようとする生理的な防御反応です。止めてしまうことは得策ではありません。
ただし、下痢によって水分と電解質が大きく失われるため、経口補水液などを利用するのが最も効果的です。その際、一度にたくさん飲んでも弱った胃腸では吸収できないため、乳幼児であればスプーンなどで5mL程度の少量を何度も飲ませることが必要です。
嘔吐をしている際でも、10分ほど間をあけて飲ませるべきです。
高齢者の場合は誤嚥のリスクもあるため無理に飲ませず、必要に応じて点滴などを行う必要があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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