『ヴィキラックス配合錠』ってどんな薬?~C型肝炎治療薬『ハーボニー』との違い、使い分け
記事の内容
回答:難治性(ジェノタイプ1)のC型肝炎に有効な薬
これまで、C型肝炎の治療は「インターフェロン」が中心でした。
しかし、日本人のC型肝炎患者の大部分は「インターフェロン」が効きにくい「ジェノタイプ1」で、これが難治性のC型肝炎として大きな問題となっていました。
『ヴィキラックス配合錠(一般名:オムビタスビル + パリタプレビル + リトナビル)』は、『ハーボニー(一般名:ソホスブビル + レジパスビル)』と同様、この難治性「ジェノタイプ1」のC型肝炎に対して、高い治療効果を発揮する薬です。
患者の腎機能や肝炎ウイルスの遺伝子型などから、『ハーボニー』と『ヴィキラックス』のどちらが適しているかを考慮し、選択します。
回答の根拠①:「ジェノタイプ1b」に対する効果
日本人のC型肝炎患者の約70%は「ジェノタイプ1b」で、次いで「ジェノタイプ2a」が20%、「ジェノタイプ2b」が10%と続き、「ジェノタイプ1a」の人はほとんど居ません1)。
1) MSD(株) C型肝炎Webサイト「C型肝炎ウイルスの正体」
『ヴィキラックス』は、「ジェノタイプ1b」のC型肝炎に対し、ウイルス除去率91~95%と非常に高い効果を発揮します2,3)。
2) ヴィキラックス配合錠 添付文書
3) 第51回 日本肝臓学会総会「肝硬変発症の有無別のGIFT-I試験結果」 (2015)
回答の根拠②:『ハーボニー』と重複しない成分で、選択肢が増える
既に『ハーボニー』が「ジェノタイプ1」に対するウイルス駆除率100%の治験結果と共に登場し、大きな注目を浴びています。
『ハーボニー』があれば十分じゃないか、と思われるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
『ヴィキラックス』の3つの成分「オムビタスビル」・「パリタプレビル」・「リトナビル」は、『ハーボニー』の2つの成分「ソホスブビル」・「レジパスビル」と重複しません。
そのため、何らかの原因によって『ハーボニー』が使えないような場合でも、『ヴィキラックス』という別の選択肢があることになります。
実際、「ジェノタイプ1」のC型肝炎治療の第一選択薬(最優先の薬)は『ハーボニー』ですが、腎機能に問題がある場合などは『ヴィキラックス』を選ぶことが推奨されています4)。
4) 日本肝臓学会 「C型肝炎治療ガイドライン(第4.1版)」 (2015)
+αの情報①:配合されている成分の詳細
『ヴィキラックス』には「オムビタスビル」、「パリタプレビル」、「リトナビル」という3つの成分が配合されています。
■オムビタスビル 25mg
「NS5A阻害薬」に分類される抗ウイルス薬です。『ハーボニー』に配合されている「レジパスビル」と同じ作用でウイルスを退治します。
■パリタプレビル 150mg
「NS3、NS4A阻害薬」に分類される抗ウイルス薬です。「インターフェロン」と併用されてきた抗ウイルス薬『テラビック(一般名:テラプレビル)』や『ソブリアード(一般名:シメプレビル)』等と同じ作用でウイルスを退治します。
■リトナビル 100mg
「HIVプロテアーゼ阻害薬」に分類される抗ウイルス薬です。現在は『ノービア(一般名:リトナビル)』が、HIV感染症に対する抗ウイルス薬として使用されています。
「リトナビル」は本来HIV感染症に使用する抗ウイルス薬ですが、「オムビタスビル」と組み合わせることで、肝硬変に至っていないC型肝炎に対する高い治療効果(1aの奏効率95.3%、1bの奏効率98.0%)を発揮することが報告されています5)。
5) N Engl J Med.370(17):1594-603,(2014) PMID:24720703
「NS5A」や「NS4」とは、いったい何なのか
C型肝炎ウイルスも、ヒトの細胞と同じようにDNAやRNAといった遺伝情報(塩基配列)を持っています。
ウイルスが遺伝情報をコピーして数を増やす際、必要となるタンパク質が何種類か存在します。そのタンパク質に、NS2、NS3、NS4、NS4A、NS5、NS5A、NS5Bといった名前がつけられています。
参考)『ソバルディ(一般名:ソホフスビル)』のNS5B阻害薬としての作用機序
+αの情報②:高額な薬価
『ヴィキラックス』は1錠26,801円ですが、通常は1回に2錠服用するため、1日の薬代は5万円を超えます。1錠61,799円の『ソバルディ』や、1錠80,171円の『ハーボニー』と並び、極めて高額な薬です。
『ヴィキラックス』も通常は12週間続けて服用するため、助成制度を受けることが必要になります。
※B型・C型肝炎治療に対する医療費の助成制度 6)
甲種(世帯の市町村民税の所得割課税年額が235,000円以上の場合)・・・自己負担限度額20,000円/月
乙種(世帯の市町村民税の所得割課税年額が235,000円未満の場合)・・・自己負担限度額10,000円/月
注)B型・C型肝炎の治療全てが助成対象になるわけではありません。
6) 厚生労働省「肝炎総合対策の推進 医療費助成」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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