『イフェクサー』ってどんな薬?~第4世代SNRIの高い効果と、自殺リスクの議論
記事の内容
回答:高い効果と少ない副作用で、飲み続けやすいSNRI
『イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)』は、「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」に分類される、抗うつ薬です。
欧米では既に広く使用されており、高い効果と少ない副作用が特徴で、飲み続けやすい薬として評価されています。
他のSSRIやSNRIと比べて、『イフェクサー』は服用中の自殺リスクが特別に高いのではないか、という議論が起こったこともありますが、この疑惑は詳細な解析によって否定されています。
ただし、抗うつ薬を飲んでいる間は、良くも悪くも体調や調子が変化しやすいため、より不安定になる可能性があります。そのため、服用開始から30日程度は、周りの人もより注意深く観察する必要があります。
回答の根拠①:高い有効性と忍容性
数多く存在する抗うつ薬に対して、どの薬が最も適しているか(有効性)、どの薬が最も副作用が少なく飲み続けやすいか(忍容性)、ということはいつも問題になります。
これに対して、一定の基準によってランキング付けした研究があります1)。
このランキング付けにおいて、『イフェクサー』は有効性第3位、忍容性第8位にランクされ、非常に優れた抗うつ薬であると評価されています。
有効性によるランク
①『リフレックス、レメロン(一般名:ミルタザピン)』
②『レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)』
③『イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)』
④『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』
⑤シタロプラム ※日本で未承認
⑥『トレドミン(一般名:ミルナシプラン)』
⑦ブプロピオン ※日本で未承認
⑧『サインバルタ(一般名:デュロキセチン)』
⑨『デプロメール(一般名:フルボキサミン)』
⑩『パキシル(一般名:パロキセチン)』
忍容性によるランク
①『レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)』
②『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』
③ブプロピオン ※日本で未承認
④シタロプラム ※日本で未承認
⑤『トレドミン(一般名:ミルナシプラン)』
⑥『リフレックス、レメロン(一般名:ミルタザピン)』
⑦フルオキセチン ※日本で未承認
⑧『イフェクサー(一般名:ベンラファキシン』
⑨『サインバルタ(一般名:デュロキセチン)』
⑩『デプロメール(一般名:フルボキサミン)』
1) Lancet.373(9665):746-58,(2009) PMID:19185342
回答の根拠②:自殺リスクへの議論
『イフェクサー』を他のSNRIと比較したところ、自殺リスクが有意に高いとする報告がなされ、大きな話題を呼んだことがあります。
この話題の名残りで、今でも『イフェクサー』は自殺リスクが高いのではないか、と心配する声もあります。
しかしこの報告では、『イフェクサー』を服用していた人は他のSNRIを服用していた人よりも、治療開始時により多くの自殺危険因子(貧困、失業、衝動性など)を抱えており、これが「交絡バイアス」として働いた可能性があります。
この点に着目し、”交絡バイアス”を分析に加えて調整したところ、『イフェクサー』によるリスク上昇は打ち消される、と結論づけられています2)。
2) BMJ.334(7587):242,(2007) PMID:17164297
つまり、『イフェクサー』が特別に自殺リスクを高めるわけではない、ということです。
薬剤師としてのアドバイス:薬と並行して、認知行動療法も採り入れる
現在、患者自身の認識や行動を変えていく「認知行動療法」が様々な病気に有効である、ということが報告されています。(例:慢性的な不眠症や慢性的な腰痛)
うつ病に関しても「認知行動療法」の有効性は広く認識され、カウンセリング等でも用いられています。
認識や行動が変われば、うつ病を再発しにくくもなります。少し元気が出てきたら、「認知行動療法」にも取り組んでみてください。きっと、気持ちが楽になるはずです。
+αの情報:SNRIとは~抗うつ薬は根本的に治療になり得るのか
SNRIとは「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」のことです。作用し終わった「セロトニン」や「ノルアドレナリン」等の神経伝達物質の”再取り込み=回収”を阻害する薬です。
本来、神経伝達物質は必要な時に放出され、必要な作用を終えるとすぐに回収されます。いつまでも作用し続けてしまうと色々な誤作動の原因になるからです。
うつ病患者の脳では「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の活動が低下しています。
そのため、SNRIによって”再取り込み=回収”を阻害することで、「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の濃度を高め、作用を持続・強化させることができます。
また、これらの作用によって症状を緩和するだけでなく、脳のダメージを修復する効果があることも示唆されています(BDNF仮説)。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。