『プロトピック』の「小児用」を、成人なのに処方されたのは何故?
記事の内容
回答:弱い薬が必要な時は、濃度の低い「小児用」を使うこともある
『プロトピック(一般名:タクロリムス)』の外用剤には、濃度が0.1%と0.03%(小児用)の2種類があります。
通常、成人の場合は0.1%の『プロトピック』を使います。
しかし、顔など皮膚の薄い場所に使う場合や、ヒリヒリなどの刺激が気になる場合、症状が良くなってきて弱い薬でも良くなってきた場合などには、0.03%(小児用)の『プロトピック』を使うことがあります。
こうした使い方は、日本ではまだ保険適用外ですが、欧米各国では広く行われている治療です。
回答の根拠①:小児用は、濃度が低いだけの同じ薬
『プロトピック』の0.03%は、小児でも使えるよう、薬の濃度を通常の0.1%よりも低く設定してあります。そのため「小児用」と銘打っていますが、違いは薬の濃度だけです。
※プロトピック軟膏の有効成分と濃度 1,2)
『プロトピック軟膏0.1%』・・・・・・・・・・軟膏1g中に「タクロリムス」を1mg含む(0.1%)
『プロトピック軟膏0.03%小児用』・・・軟膏1g中に「タクロリムス」を0.3mg含む(0.03%)
1) プロトピック軟膏0.1% 添付文書
2) プロトピック軟膏0.03%小児用 添付文書
回答の根拠②:小児用の濃度でも、成人に効果がある
『プロトピック』は0.03%の濃度であっても、成人のアトピー性皮膚炎に対して十分な治療効果が認められています。そのため、欧米各国では0.03%にも成人に対する使用が認められています3)。
3) プロトピック軟膏0.03%小児用 インタビューフォーム
日本ではまだ保険適用が認められていませんが、医師の裁量によって成人でも0.1%と0.03%を使い分けることがあります。
薬剤師としてのアドバイス:使い始めのヒリヒリは、無害なので心配いらない
『プロトピック軟膏』は、使い始めにヒリヒリやほてりなどの刺激を感じることがあります。
しかし、こうした刺激感はトウガラシが皮膚に付着した時の反応と同じ原理で起きるものです。皮膚に何か障害が起きて感じるものではありません。
また、1~2週間程度使い続けることで刺激感は治まるため、最初だけ少し我慢して使い続ける必要があります。
どうしても刺激が強く我慢できない場合には、濃度の低い「小児用」に変える等の方法もありますので、自己判断で薬を中断してしまわず、使用感について医師と相談するようにしてください。
+αの情報:ステロイド外用剤からの切り替え
ステロイド外用剤を長期間、大量に使い続けると、皮膚が薄くなってしまうなどの副作用が出る恐れがあります。そのため、必要最低限の期間・量に控え、更に薬を塗る場所によって厳密に強さを使い分ける必要があります。
一方、『プロトピック』にはこうした長期使用による副作用がありません。そのため、症状が長く続く場合にはステロイド副作用を避ける目的で『プロトピック』へ切り替えることがあります。
※ステロイドからの切り替えの目安 4)
『プロトピック軟膏0.1%』・・・Ⅲ群の『リンデロンV(一般名:吉草酸ベタメタゾン)』と同等
『プロトピック軟膏0.03%小児用』・・・Ⅳ群の『アルメタ(一般名:アルクロメタゾンプロピオン酸)』と同等
4) 中外医学社 EBM 皮膚疾患の治療 up-to-date,(2015)
添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較
◆有効成分とその濃度
プロトピック軟膏0.1%:軟膏1g中に「タクロリムス」を1mg含む(0.1%)
プロトピック軟膏0.03%小児用:軟膏1g中に「タクロリムス」を0.3mg含む(0.03%)
◆適応症
プロトピック軟膏0.1%:アトピー性皮膚炎
プロトピック軟膏0.03%小児用:アトピー性皮膚炎
◆用法・用量
プロトピック軟膏0.1%:成人に対して1日1~2回
プロトピック軟膏0.03%小児用:小児に対して1日1~2回
◆製造販売元
プロトピック軟膏0.1%:アステラス製薬
プロトピック軟膏0.03%小児用:アステラス製薬
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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