『ノイチーム』ってどんな薬?~涙や鼻水に含まれる生体防御因子
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回答:涙や鼻水に含まれる生体防御因子
『ノイチーム(一般名:リゾチーム)』は、溶菌作用を持つ酵素の薬です。「リゾチーム」は元々、生体の涙や鼻水、白血球などに広く分布し、粘膜の感染防御に重要な役割を果たしている酵素です。
現在、副鼻腔炎や気管支炎などで起こる粘膜の腫れや、鼻水・痰を排出しやすくするために広く処方されています。
※2015年12月、医薬品の再評価により慢性副鼻腔炎に対する適応が削除されました。
『ノイチーム』は、ニワトリの卵白由来の成分のため、卵白アレルギーの人は使用することができません。
回答の根拠:炎症時の組織修復作用と、粘液の分解・排出作用
『ノイチーム』は、鼻水を分解して粘稠度を下げる効果があります1)。また、炎症によって損傷を受けた粘膜組織で、修復・再生の指標となる繊維芽細胞の増殖を促進させる効果もあります2)。
1) Acta Otolaryngol.101(3-4):290-4,(1986) PMID:3705954
2) Jpn J Exp Med.42(3):221-32,(1972) PMID:4538154
こうした効果によって、副鼻腔炎や気管支炎・気管支喘息による粘膜の炎症や腫れ、鼻水・痰の排出困難に効くと考えられています。
詳しい回答:詳しい作用機序はよくわからない
「リゾチーム」は、抗生物質「ペニシリン」を発見した細菌学者Alexander Flemingが1919年に偶然発見した薬です。
くしゃみで鼻水が飛び散った細菌培地では細菌が増殖しなかった、という非常に残念な偶然によって見つかったものです。
発見から100年以上が経過していますが、具体的にどういったメカニズムで効果を発揮するのか詳しいことはわかっておらず、作用部位や作用機序についても不明です3)。
3) ノイチーム錠 インタビューフォーム
薬剤師としてのアドバイス:卵アレルギーは必ず医師・薬剤師に伝える
『ノイチーム』は、一般的な医薬品と異なり、化学合成によって作られていません。これは「リゾチーム」が非常に分子量の大きな酵素だからです。
「リゾチーム」の分子式は「C616H963N193O182S10」で、これは炭素原子616個、水素原子963個、窒素原子193個、酸素原子182個、硫黄原子10個で構成される、極めて複雑な構造であることを意味します3)。
※参考:『ロキソニン』の分子式:C15H17NaO3
そのため、『ノイチーム』はニワトリの卵白を利用して精製されています。こうした製法のため、卵白アレルギーの人が使用するとアレルギーを起こすことがあり、使用することはできません。
卵白アレルギーと診断されたことがある人は、必ずその旨を医師・薬剤師に伝えるようにしてください。(お薬手帳に記載し、付箋を貼っておくと伝え漏れも減ります)
既にアレルギーが治まっている場合には心配いりませんが、体調が悪化している時はアレルギー等のトラブルを起こしやすい傾向にあります。
今は問題なくても、過去に卵白アレルギーと診断されたことがある場合には、念のため伝えておくことをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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