インフルエンザの予防注射は、医療機関が儲けるために行っている?
回答:むしろ儲けは減る
インフルエンザの予防接種によって大流行を防ぐと、処方される薬が減り、むしろ医療費や医療機関の利益は減ることが調査によりわかっています。
つまり予防接種は、勧めれば勧めるほど利益が減るという矛盾の中で、国民の健康のために行っているものです。本当に儲けようと思ったら、予防接種をせずにインフルエンザを大流行させ、治療薬を処方する方が良い、ということです。
製薬企業や医師・医療機関が儲けるために、インフルエンザの予防接種を勧めている、という誤解は根強く残っています。ネット上では特に、それが真実であるかのように語っているWebサイトも数多く存在します。
こうした意見は、大きな間違いです。
回答の根拠:予防接種は医療費を削減する
予防接種をしてインフルエンザの大流行を防ぐと、使う薬の量が減るため病院は儲からなくなります。
予防接種に1ドル使用すれば、医療費が30~60ドル節約できるという経済試算の報告があります1)。
1) 米国疾病管理予防センター(CDC) 「U.S. Department of Health and Human Services. Second Edition, Revised October 1999」 ※PubMed外
詳しい回答:インフルエンザの予防接種は自由診療
インフルエンザの予防接種は保険が効かず、自由診療扱いになります。そのため料金が統一されておらず、医療機関が独自に設定するものになっています。
中には、ワクチンの仕入れ値そのままで接種させろ、という暴論まで出回っていますが、100円で仕入れたリンゴを100円で売らないのと同様、ワクチンも仕入れ値で販売しません。
むしろ、予防接種には消毒液、消毒の脱脂綿、注射器、医師や看護師の技術料など様々な諸経費がかかっています。仕入れ値そのままで接種していては、医療機関は破産してしまいます。
そんな状況でも、脱脂綿を半分に切る、開封して使い切れなかったワクチンは従業員用に充てる、卸業者との交渉をする・・・等々、患者負担を減らすよう努力しながら予防接種を推奨しているのです。
薬剤師としてのアドバイス:効果がない、というデマ
インフルエンザの予防接種に関する誤解でもう一つ大きなものに、”効果がない”というものがあります。これにも誤解があります。
まず、小・中学校の学級閉鎖の回数と日数は、ワクチン接種率と相関して減少することが報告されています2。
2) 第16回日本ワクチン学会 北海道厚生連網走厚生病院 (2012)
また、インフルエンザワクチンは感染を100%阻止するというものではありません。感染の可能性を軽減すると共に、もし発症した場合でも重症化を防ぐ、という役割も持っています。
そのため、「インフルエンザに感染した=ワクチンが効かなかった」というわけではありません。予防接種をしていたお陰で重症化しなかった、というケースが多々あります。
インフルエンザは高熱を出し、死に至ることもあります。また、この高熱からインフルエンザ脳症を発症する恐れもあります。こうした事態を防ぐためにも、インフルエンザの予防接種が推奨されているのです。決して儲けのためではありません。
今シーズン(2015-2016)のインフルエンザワクチンは4価に変更になり、従来よりも高い予防効果が期待されています。早めの予約や、家族まとめての申込みによって「割引」をしている医療機関もありますので、うまく活用するようにしてください。
※「インフルエンザワクチンは打たないで」というまとめに対する反論
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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