『ポステリザン』と『ボラザG』、同じ痔の治療薬の違いは?
回答:傷か、炎症か、で使い分けることも
『ポステリザン(一般名:大腸菌死菌浮遊液)』と『ボラザG(一般名:トリベノシド+リドカイン)』は、どちらも痔の治療に用いる外用剤です。『ポステリザン』は、感染防御力を高め、傷の治りを促す薬です。似た薬に『エキザルベ』があります。
『ボラザG』は、炎症を抑える「トリベノシド」と、痒みや痛みを和らげる表面麻酔薬「リドカイン」を配合した薬です。これらの成分は市販薬にも含まれ、特に変わった薬ではありません。
特に厳密な使い分けの基準はなく、一般的には傷があれば『ポステリザン』、炎症があれば『ボラザ』を使用しますが、薬の使いやすさや付随する症状によって異なる使い分けを行うケースもあります。
回答の根拠①:『ポステリザン』~死滅菌による感染防御と肉芽形成
『ポステリザン』に含まれる「大腸菌死菌」とは、文字通り死滅した大腸菌のことです。既に死滅しているため病原性はありません。 しかしこれが皮膚に付着すると、身体は菌が付着したと認識し、白血球を呼び寄せます(白血球遊走)。この作用によって感染に対する防御力が高まります1)。
1) ポステリザン軟膏 添付文書
また、死滅菌には「肉芽形成促進作用」と呼ばれる”傷の治りを促進する”効果もあります2)。
2) 薬物療法 10(8,9):1205,(1977)
こうしたワクチンの局所作用を利用した薬には、他に『エキザルベ』があります。
『エキザルベ』と同じように、弱いステロイドを配合した『強力ポステリザン(一般名:ヒドロコルチゾン+大腸菌死菌浮遊液)』もあります。ただし、「ヒドロコルチゾン」はステロイドとしては極めて効果は弱く、配合量も微量(1g中に2.5mg=0.25%)のため、ステロイドとしての副作用の心配はありません。
※通常、ヒドロコルチゾンは1%の濃度で使います。
回答の根拠②:『ボラザG』~ステロイドに頼らない抗炎症・傷の治癒促進
『ボラザG』に含まれる「トリベノシド」は、ステロイドではありませんが、抗炎症作用と創傷治癒促進作用を持ちます3)。3) ボラザG軟膏 インタビューフォーム
また、市販の虫刺されの薬などにも含まれる表面麻酔薬「リドカイン」を配合し、痛みや痒みを一時的に和らげる効果も期待できます。
薬剤師としてのアドバイス:症状が酷ければステロイドを含む別の薬を
『ポステリザン』と『ボラザG』は、どちらもステロイドを含まないため、長期で使用する場合に処方されることもあります。一方、症状が酷い場合にはステロイドが含まれる『強力ポステリザン』や、更に強いステロイドを含む『ネリプロクト(一般名:ジフルコルトロン吉草酸エステル+リドカイン)』等を使用することもあります。
※『強力ポステリザン』に含まれる「ヒドロコルチゾン」はⅤ群相当、『ネリプロクト』に含まれる「ジフルコルトロン吉草酸エステル」はⅡ群の強さです。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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