■サイト内検索


スポンサードリンク

似た薬の違い

/

『ポステリザン』と『ボラザG』、同じ痔の治療薬の違いは?

回答:傷か、炎症か、で使い分けることも

 『ポステリザン(一般名:大腸菌死菌浮遊液)』と『ボラザG(一般名:トリベノシド+リドカイン)』は、どちらも痔の治療に用いる外用剤です。

 『ポステリザン』は、感染防御力を高め、傷の治りを促す薬です。似た薬に『エキザルベ』があります。

 『ボラザG』は、炎症を抑える「トリベノシド」と、痒みや痛みを和らげる表面麻酔薬「リドカイン」を配合した薬です。これらの成分は市販薬にも含まれ、特に変わった薬ではありません。

 特に厳密な使い分けの基準はなく、一般的には傷があれば『ポステリザン』、炎症があれば『ボラザ』を使用しますが、薬の使いやすさや付随する症状によって異なる使い分けを行うケースもあります。

回答の根拠①:『ポステリザン』~死滅菌による感染防御と肉芽形成

 『ポステリザン』に含まれる「大腸菌死菌」とは、文字通り死滅した大腸菌のことです。既に死滅しているため病原性はありません。

 しかしこれが皮膚に付着すると、身体は菌が付着したと認識し、白血球を呼び寄せます(白血球遊走)。この作用によって感染に対する防御力が高まります1)。
死滅菌の白血球遊走作用

 1) ポステリザン軟膏 添付文書

 また、死滅菌には「肉芽形成促進作用」と呼ばれる”傷の治りを促進する”効果もあります2)。

 2) 薬物療法 10(8,9):1205,(1977)

 こうしたワクチンの局所作用を利用した薬には、他に『エキザルベ』があります。

 『エキザルベ』と同じように、弱いステロイドを配合した『強力ポステリザン(一般名:ヒドロコルチゾン+大腸菌死菌浮遊液)』もあります。ただし、「ヒドロコルチゾン」はステロイドとしては極めて効果は弱く、配合量も微量(1g中に2.5mg=0.25%)のため、ステロイドとしての副作用の心配はありません。

 ※通常、ヒドロコルチゾンは1%の濃度で使います。

回答の根拠②:『ボラザG』~ステロイドに頼らない抗炎症・傷の治癒促進

 『ボラザG』に含まれる「トリベノシド」は、ステロイドではありませんが、抗炎症作用と創傷治癒促進作用を持ちます3)。

 3) ボラザG軟膏 インタビューフォーム

 また、市販の虫刺されの薬などにも含まれる表面麻酔薬「リドカイン」を配合し、痛みや痒みを一時的に和らげる効果も期待できます。

 

薬剤師としてのアドバイス:症状が酷ければステロイドを含む別の薬を

 『ポステリザン』と『ボラザG』は、どちらもステロイドを含まないため、長期で使用する場合に処方されることもあります。

 一方、症状が酷い場合にはステロイドが含まれる『強力ポステリザン』や、更に強いステロイドを含む『ネリプロクト(一般名:ジフルコルトロン吉草酸エステル+リドカイン)』等を使用することもあります。

 ※『強力ポステリザン』に含まれる「ヒドロコルチゾン」はⅤ群相当、『ネリプロクト』に含まれる「ジフルコルトロン吉草酸エステル」はⅡ群の強さです。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 「ARB」と「ACE阻害薬」、同じ高血圧の治療薬の違いは?~…
  2. 『キサラタン』・『タプロス』・『トラバタンズ』・『ルミガン』…
  3. 『プロペト』と『ヒルドイド』、同じ保湿剤の違いは?~副作用と…
  4. 『チラーヂン』と『メルカゾール』、同じ甲状腺の薬の違いは?~…
  5. 『アダラート』・『カルブロック』・『アテレック』、同じCa拮…
  6. 『クレストール』と『メバロチン』、同じコレステロールの薬の違…
  7. 『テルネリン』と『ミオナール』、同じ筋弛緩薬の違いは?~効果…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP