『ヒルドイド』、保湿にはどのくらいの量を塗れば良い?~FTUの目安と使用量
回答:1-FTUで手のひら2枚の面積
軟膏やクリームの場合、チューブから人差し指の”第一関節の長さ”だけ薬を出すと、その量が「1 Finger Tip Unit(1FTU)」になります。ローションの場合、1円玉大(直径2cm)の量が1FTUと同等の量とされています。
この1FTUで、手のひら2枚分の面積に塗布するのが一般的な外用剤(ステロイド含む)の塗布量です。
また保湿剤では他の目安として、”塗布したあとの皮膚にティッシュを被せると、そのティッシュが少しひっかかるくらい”の量を塗布するのが良いとされています。
回答の根拠:FTUという目安
1FTUの定義は、「口径5mmのチューブから薬を人差し指の先端から第一関節まで絞り出すと、男性で0.49g、女性で0.43gになり、手掌2枚分の塗布量に相当する」とされ、これは軟膏剤でもクリーム剤でも質量に差はありません1)。
1) Lancet.2(8655):155,(1989) PMID:2567912
ただし、薬剤のチューブ容量によって口径が異なるため、1FTUの量には若干の差が生じます(特に、ステロイド剤では5gチューブが多く、その場合は1FTUの定義0.43~0.49gよりも少なくなることに注意が必要です)。
※チューブと1FTUの量 1,2)
5gチューブ:0.2g
10gチューブ:0.3g
25gチューブ:0.5g
50gチューブ:0.74g
2) アトピー性皮膚炎治療ガイドラインの改訂 Rp7:270-272,(2008)
また、このFTUを基準に、身体の部位別に塗布量の目安を検討した文献があります。
※成人の場合の塗布目安量 3)
顔+首・・・2.5FTU
胸+腹・・・7FTU
背中・・・7FTU
片腕・・・3FTU (両腕で6FTU)
片手・・・1FTU (両手で2FTU)
片脚・・・6FTU (両脚で12FTU)
片足・・・2FTU (両足で4FTU)
3) Clin Exp Dermatol.16(6):444-7,(1991) PMID:1806320
この目安は保湿剤をステロイド外用剤と併用する際でも同じです。
子どもの場合には大人とは皮膚面積の割合が異なるため、成人の場合とはかなり比率が異なります5)。子どもの場合も、大人の指の第一関節分を1FTUとします。子どもの第一関節分でないことに注意してください。
5) Br J Dermatol.138(2):293-6,(1998) PMID:9602877
詳しい回答:FTUはあくまで参考量
1FTUから計算すると、全身に塗布するには40.5FTU(20~25g相当)が必要になりますが、十分な効果を発揮するには12~13g程度で足りるとする報告もあります6)。
6) 皮膚科紀要 82:75-88,(1987)
そのため、FTUはあくまで目安として使用する単位であり、正確な使用量は個別に確認する必要があります。
薬剤師としてのアドバイス:どのくらい使うべきか、事前に確認を
塗り薬は錠剤と違い1回の使用量がわかりにくいのも特徴です。そのため、極端にたくさん使う人から、極端に少なく使う人まで、様々な人がいます。
症状によって薬を使う量も変わりますので、塗り薬を処方された際には、まずはじめに”どのくらい使うべきか”を医師・薬剤師に確認するようにしましょう。
また、保湿剤やステロイド外用剤は、ゴシゴシとすり込む必要はありません。こすると皮膚の刺激となり、痒みなどの症状が悪化する恐れもあります。のばして使うようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
あ、誤字発見。
> ローションの場合、1円玉大(直径2mm)の量が1FTUと同等の量とされています。
直径は2cmですよね?
ご指摘ありがとうございます、修正しました。2mmでは水滴ですね。