PPIとH2ブロッカーの併用は可能?~原則と応用、保険適用の問題
回答:原則、できない
胃酸分泌抑制薬の「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」と「H2ブロッカー」は、通常どちらかを選択するものであって、併用する薬ではありません。
そのため、効き目が不十分な場合は薬の増量・変更、ピロリ除菌など別の解決方法を探る必要があります。
ただし、夜間に胃酸過多になる難治性の逆流性食道炎(Nocturnal Gastric Acid Breakthrough:NAB)に対して、例外的に併用されることがあります。その場合は、明確な注記がなければ査定の対象になる恐れがあるため注意が必要です。
回答の根拠:NABに対する例外的な併用
「PPI」を服用中にも関わらず、夜間に胃酸の過分泌のおこる難治性の逆流性食道炎(NAB)という病態があります。
このNABに対して、「H2ブロッカー」を夜に1回追加投与することの有効性が報告されています1)。
この使い方は、例外的に保険適用も認められていますが、処方箋にも特記が必要です2)。
1) J Gastroenterol.38(9):830-5,(2003) PMID:14564627
2) 山口県医師会報 第1684号,(2003)
ただし、「H2ブロッカー」を続けて使っていると効果が弱まってくることも報告されているため3)、先にPPIの増量や個人差の少ないPPIへの変更、1日2回投与を考慮する必要があります4)。
3) J Gastroenterol Hepatol.18(6):678-82,(2003) PMID:12753150
4) 日本消化器病学会 「胃食道逆流症診療ガイドライン (2015)」
薬剤師としてのアドバイス:繰り返す症状は、一度ピロリ菌の検査を
PPIやH2ブロッカーによる治療を行っていても、何度も食道炎や胃炎を繰り返すような場合、「ピロリ菌」に感染している可能性もあります。「ピロリ菌」に感染していると、いくら胃酸を抑えても症状が繰り返してしまいます。
「ピロリ菌」が原因の場合、一度除菌してしまえば薬を飲まなくても症状を繰り返さなくなります。
何度もPPIやH2ブロッカーによる治療を繰り返している場合には、一度「ピロリ菌」の検査を受けることをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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