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似た薬の違い 保湿剤

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『ヒルドイド』と『パスタロン』、同じ保湿剤の違いは?~尿素はなぜ危ないと言われるのか

回答:刺激が少なく全身に使える『ヒルドイド』と、皮膚の厚い手足向きの『パスタロン』

 『ヒルドイド(一般名:ヘパリン類似物質)』と『パスタロン(一般名:尿素)』は、どちらも皮膚の保湿剤です。
ヒルドイドとパスタロン
 『ヒルドイド』は刺激が少ないため、顔も含めて全身に使うことができる保湿剤です。
 『パスタロン』は角質を柔らかくする作用があるため、皮膚の厚い手足に効果的な保湿剤です。

 どちらも皮膚トラブルを治すための医薬品で、日常的なケアや肌を綺麗にする目的で使うものではないことに注意が必要です。

回答の根拠①:水分保持能力が高い『ヒルドイド』~高い保湿効果と安全性

 『ヒルドイド』は、構造中に硫酸基・カルボキシル基・水酸基など多くの親水基があります1)。そのため、多くの水分子を集めて保持する作用があります。
 実際の『ヒルドイド』による保湿効果は、「ワセリン」の2.5倍近く強力であるとされています2)。
ヒルドイドの保湿効果~親水基
 1) ヒルドイドソフト軟膏 インタビューフォーム
 2) 日皮会誌.121(7):1421-6,(2011)

 『ヒルドイド』には目立った副作用もなく、0歳の赤ちゃんの顔にも使えます。
 また、「ローション」・「クリーム」・「ソフト軟膏」など豊富なタイプが揃っているため、皮膚の状況や使い心地、季節などによっても使い分けることができます。

 ただし、『ヒルドイド』は血液を固まらなくする「ヘパリン」と似た作用を持つため、出血性疾患のある人には使えません3)。

 3) ヒルドイドソフト軟膏 添付文書

『ヒルドイド』と「ステロイド外用剤」の重ね塗り・混合も効果的

 『ヒルドイド』は「ステロイド外用剤」と一緒に使うことで効果が高くなることも報告されています4)。
 そのため治療の際には、『ヒルドイド』と「ステロイド外用剤」を重ね塗りする、あるいは混合した薬が処方される、といったことがあります。

 4) Pediatr Dermatol.25(6):606-12,(2008) PMID:19067864

回答の根拠②:角質を柔らかくする『パスタロン』~手足に効果的な特性

 『パスタロン』は、ハンドクリームなどにも使われている「尿素」の保湿剤です。

 「尿素」が皮膚表面から角質層に浸透すると、そこに生じた浸透圧差によって水を引き寄せることになります。「尿素」には、こうした角質の水分保有力を強化する作用があります5)。
パスタロン~尿素の保湿効果
 また、「尿素」には角質を溶かして剥がす作用があるため、塗布することで皮膚表面が滑らかになります5)。

 5) パスタロンクリーム インタビューフォーム

 『パスタロン』も顔も含めた全身に使うことはできますが、こうした特性から角質の多い皮膚、つまり手や足など皮膚の厚い部分に適した保湿剤と言えます。
 実際、『パスタロン』の適応症には「進行性指掌角皮症」や「足蹠部皸裂」といった手足の皮膚トラブルが含まれています6)。
パスタロン~角質への作用
 6) パスタロンクリーム 添付文書

 ただし、傷のある場所に塗布すると刺激を感じることがあるため、ひび・あかぎれには注意が必要です6)。

薬剤師としてのアドバイス:どちらも「医薬品」であることに注意

 『ヒルドイド』と『パスタロン』は、どちらも病気の予防や治療を目的に使う「医薬品」です。美容を目的とした「化粧品」ではありません

 『ヒルドイド』を美容目的で使う、アンチエイジングに効果があるなどとする情報がSNSで広まっていますが、そのような効果は認められていません。必要のない「医薬品」を使えば、副作用のリスクだけが高まることになります。
 また「尿素」については、皮膚に害があるから使ってはいけない、といった意見が多く見受けられますが、これは「医薬品」と「化粧品」を混同した誤った使用方法によって起こるトラブルを強調したものと言えます。

 保湿剤だからと侮ることなく、皮膚のトラブルが改善されたらケアの方法を変えるなど、正しい使用方法を心がけてください。

ポイントのまとめ

1. 『ヒルドイド』は、刺激の少ない保湿剤
2. 『パスタロン』は、角質の厚いところ(手足)に適した保湿剤
3. 「医薬品」であって「化粧品」ではないことに注意

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆効果と適応症
ヒルドイド

1.保湿効果によるもの(皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症)
2.血液凝固抑制・血流促進作用によるもの(凍瘡、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患、血栓性静脈炎)
3.血腫・腫脹の除去作用によるもの(打撲による腫脹・血腫)
4.繊維芽細胞増殖抑制作用によるもの(ケロイド)

パスタロン
1.保湿効果によるもの(老人性乾皮症、アトピー皮膚、進行性指掌角皮症)
2.角質溶解効果によるもの(足蹠部皸裂)

◆使用回数
ヒルドイド:1日1~数回
パスタロン:1日2~3回

◆禁忌(使用できないケース)
ヒルドイド:出血性疾患の患者
パスタロン:なし

◆主な副作用
ヒルドイド:ソフト軟膏、ローションは臨床試験段階で副作用無し
パスタロン:刺激感(4.6%)

◆剤型の種類
ヒルドイド:クリーム、ソフト軟膏、ローション、ゲル
パスタロン:クリーム、ソフト軟膏、ローション

◆製造販売元
ヒルドイド:マルホ
パスタロン:佐藤製薬

+αの情報:より刺激が少ない『プロペト』

 『ヒルドイド』も刺激が少ない保湿剤ですが、傷のある場所に使うと刺激を感じる場合があり、基本的には使えません3)。
 また、『ヒルドイド』にはクリームやローションなど扱いやすくするために添加物も使われていますが、敏感な人はこうしたものにも刺激を感じてしまうことがあります。

 そういった場合には、より刺激が少ない『プロペト(一般名:白色ワセリン)』を使います。『プロペト』は「白色ワセリン」を眼科用としても使えるまでに精製したもので、不純物が極めて少ないのが特徴です7)。

 7) プロペト インタビューフォーム 

 ただし、保湿効果は『ヒルドイド』よりも劣るため、皮膚の状況に応じて使い分ける必要があります。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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