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自己免疫疾患 副作用

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『プラケニル』ってどんな薬?~網膜症を起こした「クロロキン」からの改良

回答:エリテマトーデス治療の世界標準

 『プラケニル(一般名:ヒドロキシクロロキン)』は、皮膚エリテマトーデス(CLE)と全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬です。
 
 日本では2015年7月3日に承認されましたが、薬自体はアメリカで1955年に誕生しているもので、既に世界70ヶ国以上で使用されています。また、海外のガイドラインでは、CLEやSLEに対する標準的治療薬に位置付けられています。

 かつて薬害として「クロロキン網膜症」を起こした「クロロキン」製剤と似た構造の薬ですが、当時のマラリア治療と比べると使う量も少なく、CLEやSLEの治療では網膜障害の副作用リスクはほとんどありません。

回答の根拠①:「クロロキン塩基」の量に換算して、マラリア治療との用量を比較する

 「クロロキン」製剤と「ヒドロキシクロロキン」製剤は異なる化合物のため、単純にmgだけで強さや量を比較することはできません
 しかし、「クロロキン」製剤に共通して含まれる「クロロキン塩基」の量に換算することで、およそ強さや量を比較することができます。
プラケニルのクロロキン塩基換算量

 『プラケニル』の有効成分である「ヒドロキシクロロキン」は、8mgで「クロロキン塩基」5mgに相当します1)。
 『プラケニル』は、体重によって薬の量を調整する必要がありますが、一般的な成人であれば1日200~400mgで使用します。

 つまり、「クロロキン塩基」に換算すると125~250mgで使用することになります。

 1) プラケニル錠 インタビューフォーム

 
 一方、マラリア治療に用いる「クロロキン製剤」の有効成分である「リン酸クロロキン」は、250mgで「クロロキン塩基」150mgに相当します2)。
 マラリア治療では通常、「リン酸クロロキン」として成人に1日500~1000mgで使用します。

 つまり、「クロロキン塩基」に換算すると300~600mgで使用することになります。

 2) 東京大学医科学研究所 附属病院 感染免疫内科「輸入感染症各論」

 このことから、『プラケニル』をCLEやSLEに対して使用する際の用量は、網膜症のリスクが問題になった「クロロキン」製剤の使用量よりも、半分程度の量であることがわかります。

回答の根拠②:クロロキン網膜症はほとんど起こらない

 かつて日本でも、『レゾヒン』や『キニロン』等の「クロロキン」製剤が関節炎やマラリアの治療に使用されていました。
 しかし、この「クロロキン」製剤は、稀に副作用によって網膜障害(クロロキン網膜症)を発症することがわかり、薬害訴訟として大きな社会問題に発展しました。これによって「クロロキン」製剤をエリテマトーデス治療にも使用できなくなっていました。

 『プラケニル』も「クロロキン」と類似した構造の「ヒドロキシクロロキン」製剤ですが、先述のように用量も少なく、眼の組織に対する親和性が低いため、網膜障害のリスクは極めて低いことが海外の使用実績からも報告されています。
 また、早期の視力障害は通常、薬を中止することで改善するため、年1回程度の定期的な眼科検診を行っていれば問題ありません3,4)。

 3) 帝京大学医学部内科学講座 リウマチ・膠原病研究所 「ヒロドキシクロロキン」
 4) プラケニル錠 添付文書

詳しい回答:作用機序はよくわかっていない

 全身性エリテマトーデスは自己免疫性疾患の一つで、過剰な免疫反応が起きたことで周辺の組織が障害されるⅢ型アレルギーです。そのため、過剰になった免疫反応を抑えたり、調整することによって治療することができます。

 『プラケニル』は免疫調整薬に分類される薬ですが、なぜエリテマトーデスに対して効果があるのか、詳しいメカニズムは明らかになっていません。

 一つの仮説として、細胞内で様々な消化酵素を蓄えている「リソソーム」の中に『プラケニル』が蓄積することで、本来pH5.0程度で保たれている「リソソーム」のpHが変化し、この変化によって様々な消化・分解機能、炎症反応が抑制されることが示唆されています4)。

 
  

薬剤師としてのアドバイス:重度のものには他の治療薬と組み合わせて

 現在、エリテマトーデス治療にはステロイドが必須です。重度の全身性エリテマトーデスの場合、ステロイドを4~12週ほど続けなければ症状の改善すら見られないこともあります。

 しかし、ステロイドは長期で大量服用すると、免疫力の低下や骨粗鬆症など全身の副作用が問題になります。『プラケニル』はこういったステロイドの減量に貢献することが期待されています。

 また、活動性の低い病態であれば『プラケニル』単独でも十分に治療できる可能性もあります。

 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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