利尿薬の『ラシックス』と『フルイトラン』を併用するのは何故?~代償性抗利尿
回答:一時的に効果を高めることができる
『ラシックス(一般名:フロセミド)』は、「ループ利尿薬」に分類される利尿薬です。
『フルイトラン(一般名:トリクロルメチアジド)』は、「サイアザイド系利尿薬」に分類される利尿薬です。
『ラシックス』等の「ループ利尿薬」に対して治療抵抗性がある場合、少量の「サイアザイド系利尿薬」と併用することで、一時的に効果を高めることができます。
回答の根拠:長期使用による代償性抗利尿
腎臓には、濾過されたNaを再吸収する働きがあります。腎臓で再吸収されるNaのうち、「近位尿細管」では60%、「ヘンレ上行脚」では30%、「遠位尿細管」では7%が再吸収されています1)。
1) 南江堂「今日の治療薬」 (2014)
『ラシックス』(ループ利尿薬)は「ヘンレ上行脚」に、『フルイトラン』(サイアザイド系利尿薬)は「遠位尿細管」での再吸収に作用します。
『ラシックス』等の「ループ利尿薬」を長期で使用していると、「ヘンレ上行脚」での再吸収が抑えられた状態が続いていることになります。
身体は、「ヘンレ上行脚」で再吸収が抑えられている分、その後にある「遠位尿細管」で再吸収を補おうとするようになります2)。
2) メディカルレビュー社 「利尿薬抵抗性(diuretic resistance)」 Fluid Management Renaissance Vol.3 No.3:58-63,(2013)
このように、身体の一部の機能が低下した場合、別の機能が増強されて補おうとすることを「代償反応」と呼びます。
『ラシックス』等の「ループ利尿薬」に対して治療抵抗性がある場合、この代償反応が起きている可能性が考えられます。
この場合、代償反応によって通常よりも再吸収が促進されている「遠位尿細管」に作用する「サイアザイド系利尿薬」を追加することによって、一時的に利尿効果を増大させることができます。
薬剤師としてのアドバイス:ラシックスは用量の幅も広いが、増量し続けるのは問題
『ラシックス』は用量の幅も広く、少量から高用量まで使用できます。しかし、効果が弱くなってきたからといってひたすら増量し続けるのは問題です。
『ラシックス』の効果が弱くなってきた場合、代償反応によって「遠位尿細管」の再吸収が促進されていることを考慮し、『フルイトラン』等の「サイアザイド系利尿薬」を併用することも一つの方法です。
ただし、利尿薬を併用する場合には、NaやKなどの電解質が不足することや、低血圧、脱水症状などに注意する必要があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。