『ビクトーザ』がNASHに効く?~非アルコール性脂肪肝炎とGLP-1作動薬に見つかった関係
回答:2015年4月の欧州肝臓学会で可能性が示唆されたところ
「GLP-1作動薬」の『ビクトーザ(一般名:リラグルチド)』は、本来は糖尿病の治療に用いる薬です。
この『ビクトーザ』に、非アルコール性脂肪肝炎(Non-Alcoholic SteatoHepatitis:NASH)による肝障害を抑える効果があるのではないか、ということが、2015年4月の欧州肝臓学会で発表されました。
現在のところNASHに有効な治療薬が存在しないため、今後の臨床試験の結果が注目されています。
回答の根拠①:『ビクトーザ』による線維化抑制効果
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、アルコールを多飲していないにも関わらず脂肪肝が進行するもので、一般的にアルコール性脂肪肝炎よりも肝硬変への進行が速い肝疾患と言われています。
しかし、現在のところNASHの治療薬として認可されたものは存在せず、減量(1ヶ月に2kg以内)や高脂血症治療薬、糖尿病治療等によって間接的に治療することしかできません。
今回の報告では、BMIが25以上の患者に『ビクトーザ』を使用した場合、約4割の患者で”組織所見の改善”と”線維化の進行抑制”が認められたとされています1)。
1) EASL2015 Matthew J. Armstrong氏らの報告
ただし、これはまだ「第Ⅱ相試験」による結果であり、実際に現場で活用されるようになるためには、多数の患者を対象に既存の薬と比較する「第Ⅲ相試験」によって効果が実証される必要があります。
回答の根拠②:GLP-1の多面的な効果
「GLP-1」には、以下のような様々な作用があることが既に報告されています。
・小腸でのコレステロール吸収を抑制することで血中コレステロールを下げる 2)
・肝臓での脂肪合成を抑制し、肝臓内の脂肪の蓄積を低下させる 3)
・Naの再吸収を抑え、血管内皮の弛緩、アンジオテンシンⅡの作用抑制によって、血圧の上昇を抑える 4)
2) Mol Med.17(11-12):1168-78,(2011) PMID:21785811
3) J Hepatol.54(6):1214-23,(2011) PMID:21145820
4) Biochem Biophys Res Commun.380(1):44-9,(2009) PMID:19150338
こうした報告から、『ビクトーザ』をはじめとするインクレチン関連薬には、様々な組織に対して臓器保護効果を示すのではないかという期待がされ、多くの研究がされています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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