■サイト内検索


スポンサードリンク

知っておくべきこと 栄養素

/

「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」、何が違うの?~「トランス脂肪酸」は何故身体に悪いのか

回答:「トランス脂肪酸」は、反応させると酸化ストレスを生み出すから

 「飽和脂肪酸」は、化学物質として安定なため、生体はエネルギー源として利用します。

 「不飽和脂肪酸」は、反応させると過酸化物(酸化ストレス)を生み出すため、反応させてエネルギーとして利用するには不向きです。そのため、細胞膜など生体構造の原料として利用されます。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸~利用方法の違い
 「不飽和脂肪酸」は更に化学構造によって「シス型」と「トランス型」の2種類に分類されます。自然界に存在する「不飽和脂肪酸」は「シス型」です。そのため、生体構造の原料として利用されるのも「シス型」です。

 生体原料として利用できない「トランス型」の「不飽和脂肪酸」は、仕方なくエネルギー源として利用されますが、その際には過酸化物(酸化ストレス)を生み出しやすいため、身体にはあまり良くありません。
不飽和脂肪酸~シス型とトランス型の違い
 ただし、「トランス型」の「不飽和脂肪酸」の過量摂取が問題になるのは主に「マーガリン」や「ショートニング」を大量に使う欧米諸国であり、一般的な日本人の食生活では過量摂取にはなりません

「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の違い~炭素の二重結合

 「飽和脂肪酸」には、炭素の二重結合がありません。
 「不飽和脂肪酸」には、炭素の二重結合が含まれています。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸~炭素の二重結合
 炭素の二重結合(不飽和結合)は、反応性に富み、様々な物質と反応して過酸化物(酸化ストレス)を生み出しやすいという特徴があります。

不飽和脂肪酸の「シス型」と「トランス型」

 「不飽和脂肪酸」は、さらに炭素の二重結合のまわりの構造の違いによって、「シス型(cis-)」と「トランス型(trans-)」の2種類に分類されます。
炭素と炭素の結合~シス型とトランス型
 化学構造の中に一つでも「トランス型」の構造が含まれている「不飽和脂肪酸」を、まとめて「トランス脂肪酸」と呼びます。

回答の根拠:日本人の「トランス脂肪酸」の摂取状況

 様々な議論はありますが、現在のところ世界保健機関(WHO)は「トランス脂肪酸」の摂取を総エネルギー量の1%未満にするよう通達しています。

 アメリカでは、摂取する総エネルギーの2%以上が「トランス脂肪酸」になっているため、大きな社会問題となっています1)。
 これに対し、日本では2007年の食品安全委員会の調査では0.3~0.6%程度、2008年の農林水産省の調査では0.44~0.47%程度であることが報告されています2)。

 1) 食品安全委員会「食品中に含まれるトランス脂肪酸」評価書
 2) 農林水産省 「トランス脂肪酸に関する情報」

 このように、日本では元々の食生活やメーカーの自助努力によって、「トランス脂肪酸」による影響はそれほど多くはありません。そのため、日本では特に「トランス脂肪酸」の規制もされていません。

 ただし、これはあくまで一般論であり、サンドイッチや調理パン、クッキーなどを主食にしている若い女性などでは、摂取エネルギーが少ないにも関わらず「トランス脂肪酸」の摂取量が多い傾向にあります。このように偏った食事によって、思わぬかたちで「トランス脂肪酸」の割合が多くなる恐れがあるため、バランスの良い食事には気を付ける必要があります。

+αの情報:肉類・乳製品に多い「飽和脂肪酸」、植物・魚類に多い「不飽和脂肪酸」

 エネルギー源になる「飽和脂肪酸」は、肉類や乳製品に多く含まれています。
 生体構造の原料になる「不飽和脂肪酸」は、植物や魚類に多く含まれています。

主な「飽和脂肪酸」

・酪酸(バターやチーズ等に含まれる)
・ラウリン酸(ココナッツ油や母乳に含まれる。コレステロールを上げない中鎖脂肪酸)
・ミリスチン酸(パーム油に含まれる)
・パルミチン酸(バターや肉類に含まれる)
・ステアリン酸(肉類に含まれる)

主な「不飽和脂肪酸」

・オレイン酸(一価不飽和脂肪酸。オリーブオイル、菜種油に含まれる)
・α-リノレン酸(n-3系不飽和脂肪酸。しそ油、えごま油に含まれる)
・ドコサヘキサエン酸(n-3系不飽和脂肪酸。DHAのこと)
・エイコサペントエン酸(n-3系不飽和脂肪酸。EPAのこと)
・リノール酸(n-6系不飽和脂肪酸。大豆油、コーン油に含まれる)
・アラキドン酸(n-6系不飽和脂肪酸。レバーや卵白に含まれる)

 「飽和脂肪酸」も、摂り過るとエネルギー過多になって太るなど、身体に良いものではありません。しかし、あまりに避け過ぎるのも問題です。
 特に最近は、高齢者が肉類を敬遠することによって低栄養状態を起こし、筋力低下などの「サルコペニア」を起こすことが問題になっています。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 2歳未満の乳幼児に「抗ヒスタミン薬」は使える?~熱性けいれん…
  2. 『エンシュア』・『ラコール』・『エネーボ』、同じ半消化態栄養…
  3. 『チャンピックス』と『ニコチネル』、同じ禁煙補助薬の違いは?…
  4. 『ノルバデックス』と『アリミデックス』、同じ乳がん治療薬の違…
  5. 『アマリール』・『グリミクロン』・『オイグルコン』、同じ糖尿…
  6. 【新刊のお知らせ】「OTC医薬品の比較と使い分け」
  7. 『ラシックス』・『ダイアート』・『ルプラック』、同じループ利…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP