「トラネキサム酸」には美白効果がある?~肝斑への効果と、効果のないシミ
記事の内容
回答:肝斑による色素沈着は軽減する
『トランサミン(一般名:トラネキサム酸)』には、肝斑による色素沈着を軽減する効果があります。
ただし、効果があるのは肝斑のシミであって、全てのシミに対して効果が期待できるわけではありません(例:炎症の後の色素沈着)。
回答の根拠①:肝斑への治療効果
『トランサミン』の内服によって、肝斑で起きる色素沈着を軽減できるとする報告があります1)。
また、『トランサミン』には大きな副作用もないため、肝斑の治療に対して安全で有効だとする報告もあります2)。
1) 臨床 61:735-743,(2007)
2) Aesthetic Plast Surg.36(4):964-70,(2012) PMID:22552446
ただし、外用剤に関しては、肝斑に対して有効であるとする報告3)と、色素沈着の軽減傾向にはあるものの有意差がつくほどではなかったとする報告4)とがあり、議論が続いています。
3) 皮膚の科学 6:649-652,(2007)
4) J Cosmet Laser Ther.14(3):150-4,(2012) PMID:22506692
回答の根拠②:よくわかっていない作用機序と、効果のないシミ
色素沈着に関与するメラノサイトを「プラスミン」が活性化するため、この「プラスミン」を抑制する『トランサミン』がシミに効く、という可能性が示唆されていますが、明確な作用機序はわかっていません。
また、炎症によってできた色素沈着や、雀卵斑のシミに対しては効果が得られないことが報告されています5)。
5) 皮膚 30:676-680,(1988)
薬剤師としてのアドバイス:シミの抱える問題と、コストパフォーマンス
シミは一つの原因だけで起きているわけではなく、複数の原因によって起きているケースも多々あります。その場合、例え肝斑によるシミが軽減されても、その下にあった老人性色素斑が浮き出てくる、といったことが起こります。
2つ以上のシミがある場合には、それぞれを正しく診断し、それぞれに適した治療を行う必要があります。
また、「トラネキサム酸」の有用性を報告する文献の数も増えてきていますが、まだ症例報告などが主で、特にエビデンスレベルが十分に高いものが揃っているわけではありません。
こうした状況下で、保険の効かない自費診療や市販薬のコストを考えると、悩ましい部分があるのも事実です。
どのくらいの効果が期待できるのか、どのくらいの期間続ける必要があるのか、どのくらいのお金がかかるのか、きちんと納得できる説明を受けるようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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