『クレメジン』ってどんな薬?~食事の吸収には影響しない工夫、他剤との投与間隔
記事の内容
回答:毒素を吸着する「吸着炭」
『クレメジン(一般名:球形吸着炭)』は、腎臓が弱った時に起こる尿毒症症状(食欲不振、痒み、吐き気、口臭など)を改善するための「吸着炭」の薬です1)。
食べ物を消化した時にできた毒素を吸着し、そのまま吸収されずに便とともに排泄されます。
通常の吸着炭(薬用炭)では、良いものも悪いものも何でも吸着してしまいます。そのため、消化酵素の働きや栄養素の吸収を妨げるなど、様々な問題が起こってしまいます。
そこで、消化・吸収には影響せず、体内で毒素となる物質を選んで吸着するように設計されたのが『クレメジン』です。
ただし、一緒に飲んだ他の薬は吸着する可能性があるので、30~60分程度は間をおいて服用する必要があります。
回答の根拠①:普通の「吸着炭」ではない、『クレメジン』の特徴
『クレメジン』には、体内の毒素を効率良く吸着・排泄するために、普通の「吸着炭」とは異なる特徴をいくつも持っています。
大きな表面積で、吸着効率が良い
『クレメジン』の表面には小さな穴が無数にあり、更に内部にも細孔があります。そのため、極めて大きな表面積を持ちます。
薬として用いる「球形吸着炭」は、1gあたりの表面積が1,650m2以上であることが特に望ましいとされています1)。
1) 特許広告番号「WO2012121202 A1」
これに適合している『クレメジン』は1日の服用量が6gなので、1日の「球形吸着単」の表面積はおよそ9,900m2となり、これはサッカーコート一面(約7,100m2)よりも広い表面積になります。
『クレメジン』はこの大きな表面積で、老廃物や毒素を効率よく吸着し、慢性腎疾患の進行を遅らせることができます2)。
2) 日本腎臓学会誌.51(2):121-9,(2009) PMID:19378798
消化酵素の働きを妨げない~低分子物質を吸着する性質
『クレメジン』は、分子量100~1,000の低分子物質を選択的に吸着します3)。
そのため、消化酵素などの高分子物質を吸着することがなく、食べ物の消化を妨げることがありません。
3) 基礎と臨床.28(10):2873-2881,(1994)
栄養素の吸収を妨げない~イオン性有機物を吸着する性質
『クレメジン』は、体内で毒性物質となる「イオン性有機物」に対する吸着力が高くなるように設計されています4)。そのため、栄養素の吸収を妨げることもありません。
実際、『クレメジン』を服用していても、ビタミン類の吸収には大きな影響を与えないことが報告されています5)。
4) クレメジン細粒 インタビューフォーム
5) 日本腎臓学会誌.29(8):1003-11,(1987) PMID:3694879
回答の根拠②:他の薬との服用間隔
『クレメジン』は、同時に服用した他の薬も吸着してしまいます。そのため、同時服用は避け、30~60分程度の間隔をあけてから『クレメジン』を服用するよう注意喚起されています6)。
6) 田辺三菱製薬(株) クレメジン製品情報
ただし、飲んでいる薬や症状によって、薬の順序や服用間隔は変わることがあるので、個別に医師・薬剤師に確認するようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:「食間」で処方されることが多い理由
『クレメジン』は消化酵素や栄養素に影響しないため、食事への影響を神経質に気にする必要はありません。
しかし、『クレメジン』は長い間飲み続ける薬のため、日々の小さな積み重ねによって、後々にも全く影響が出ないとは言い切れません。
そのため、薬の用法として食前・食後などの指定はありませんが、最も食事の吸収へ影響しにくい「食間」で処方されるのが一般的です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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