『メリスロン』と『セファドール』、同じめまいの薬の違いは?~メニエール病への効果
記事の内容
回答:「内リンパ水腫」を除去する『メリスロン』と、内耳障害を解消する『セファドール』
『メリスロン(一般名:ベタヒスチン)』と『セファドール(一般名:ジフェニドール)』は、どちらも眩暈(めまい)の薬です。
『メリスロン』は、「内リンパ水腫」を除去する作用があります。「メニエール病」ではこの「内リンパ水腫」が起こるため、特に「メニエール病」の治療に効果的です。
『セファドール』は、左右の血流量のアンバランスや、異常な神経興奮といった内耳障害を解消する作用があります。「メニエール病」だけでなく様々なめまいに使われます。
特に優劣は議論されず、めまいの原因や持病の状況などによって使い分けるほか、どちらか一つでは効果が不十分な時は併用することもあります。
回答の根拠①:『メリスロン』の効果と「メニエール病」~内リンパ水腫の除去
『メリスロン』には、「内リンパ水腫」を除去する効果があります1)。
※「内リンパ水腫」を除去する効果
・内耳の血管平滑筋を弛緩させることで血流量を増やし、溜まった水分を運び出す
・血管からの水分浸透を調整することで、水腫になるほどの水分過剰を防ぐ
「メニエール病」の患者の内耳では「内リンパ水腫」が見られるため、これが原因とされていますが、なぜ水腫が起こるのかといった病因については明確になっていません2)。
1) メリスロン錠 インタビューフォーム
2) 日本めまい平衡医学会 「めまいの診断基準化のための資料」
また、『メリスロン』には脳循環を改善し、めまい感を和らげる効果もあります1)。
『メリスロン』のヒスタミン類似作用に注意
『メリスロン』は、「ヒスタミン」と似た構造をしているため、消化性潰瘍や気管支喘息の症状を悪化させる恐れがあります1)。
ただし、「禁忌」には指定されておらず、症状が軽い人や病状が安定している人には使うこともあります。
回答の根拠②:『セファドール』の2つの効果~内耳障害の解消
『セファドール』は、めまいの原因となる内耳障害(左右の血流のアンバランス、異常な神経興奮)を解消する作用があります3)。
①左右の血流のアンバランスを是正する
・トラブルが起きている側の血管の収縮を緩め、血流量を回復させる
②発生しているノイズを遮断する
・めまいの原因となる前庭系の異常な神経興奮を遮断する
そのため、こうした内耳障害が原因で起こっているめまい(メニエール病も含む)に効果があります。
3) セファドール錠 インタビューフォーム
『セファドール』の抗コリン作用に注意
『セファドール』には「抗コリン作用」があるため、前立腺肥大や緑内障などの症状を悪化させる恐れがあります4)。
ただしこの作用は弱く、「禁忌」にも指定されていないため、症状が軽い人や病状が安定している人には使うことがあります。
4) セファドール錠 添付文書
薬剤師としてのアドバイス:「メニエール病」で難聴になることもある
「メニエール病」では、めまいの発作を繰り返しているうちに難聴が進行してしまう恐れがあります。
そのため、めまいの症状が治まってもすぐには薬を中止せず、頓服薬などを使いながら3~6ヶ月程度は様子を見る必要があります。
不快な症状が治まったらすぐに薬を止めてしまう人が少なくありませんが、必ず「いつまで薬を飲み続けるべきか」は主治医に確認するようにしてください。
また、めまいが長期に続く場合は、一度めまいの原因をはっきりさせるために精密な検査をすることをお勧めします。
ポイントのまとめ
1. 『メリスロン』は、「メニエール病」で起こる「内リンパ水腫」を除去する作用がある
2. 『セファドール』は、左右の血流アンバランスや神経の異常興奮などの「内耳障害」を解消する作用がある
3. 『メリスロン』は消化性潰瘍や気管支喘息、『セファドール』は緑内障や前立腺肥大に注意
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆通常の用法
メリスロン:1回6~12mgを、1日3回
セファドール:1回25~50mgを、1日3回
◆適応症
メリスロン:メニエール病、メニエール症候群、眩暈症に伴うめまい
セファドール:内耳障害にもとづくめまい
◆「慎重投与」とされている基礎疾患
メリスロン:消化性潰瘍、気管支喘息、褐色細胞腫(※ヒスタミン類似作用を持つため)
セファドール:緑内障、前立腺肥大や腸閉塞などの閉塞性疾患(※抗コリン作用を持つため)
◆主な副作用
メリスロン:悪心・嘔吐(0.1~5%未満)
セファドール:口渇(4.45%)、食欲不振(0.43%)、浮動感・不安定感(0.68%)
◆剤型の種類
メリスロン:錠剤(6mg、12mg)
セファドール:錠剤、顆粒
+αの情報①:「内リンパ水腫」の解消に有効な『イソバイド』
「メニエール病」で起こる「内リンパ水腫」の解消には、『イソバイド(一般名:イソソルビド)』も効果があります5)。
5) イソバイドシロップ 添付文書
しかし、この薬は非常に酸味と苦味が強く、しかも1日3回服用しなければならないため、そのマズさが原因で飲み続けられない人が少なくありません。しかし、先述のように「メニエール病」を放置すると難聴が進行することもあるため、きちんと飲み続ける必要があります。
『イソバイド』を服用する際はそのまま飲むのではなく、水や柑橘系のジュースと混ぜ、できるだけ味を調整してから飲むことを強くお勧めします。
+αの情報②:めまいの症状を和らげる『アデホスコーワ』
『アデホスコーワ(一般名:アデノシン三リン酸)』の適応症には、「メニエール病及び内耳障害に基づくめまい」があります6)。
めまいの症状がある場合、『メリスロン』や『セファドール』とよく併用される薬です。
6) アデホスコーワ顆粒 添付文書
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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