『イトリゾール』と『ハルシオン』、飲み合わせが悪いのは何故?~水虫薬と睡眠薬、無関係に見える薬の関係
記事の内容
回答:睡眠薬の作用が強くなる
水虫薬の『イトリゾール(一般名:イトラコナゾール)』と、睡眠薬の『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』は、一緒に使用することはできません。
『ハルシオン』の血中濃度が必要以上に上昇し、作用が強くなり過ぎる恐れがあります。
よく眠れるようになる、というものではなく、中毒性の副作用が出るような危険な濃度にまで上昇するため、一緒に使うことは危険です。
回答の根拠:半減期7倍、最高血中濃度3倍、AUC27倍という大幅な上昇
『イトリゾール』には、代謝酵素(CYP3A4)を阻害する作用があります。CYP3A4が阻害されると、普段この酵素によって分解される薬は、全て分解が遅れることになります。
『ハルシオン』も、代謝酵素(CYP3A4)によって分解される薬です。
そのため、『イトリゾール』によってCYP3A4が阻害されることによって分解が遅れ、半減期(t1/2)は7倍、最高血中濃度(Cmax)は3倍、AUCは27倍にまで上昇することがわかっています1)。
1) Clin Pharmacol Ther.56(6 Pt 1):601-7,(1994) PMID:7995001
半減期7倍が意味すること
半減期が7倍になるということは、本来は短時間作用型である『ハルシオン』が体内に長く留まり、作用が長時間続くことを意味します。これによって朝にまで眠気が続く、足元がふらつくといった副作用が出ることが考えられます。
最高血中濃度3倍が意味すること
中毒を起こす『ハルシオン』の具体的な血中濃度のデータはありません2)。しかし、最高血中濃度が3倍になるということは、単純計算でも3倍量の薬を飲んだのと同じことを意味します。『ハルシオン』の最大用量0.5mgを単純計算でも越える恐れがあり、身体にとっては過剰摂取と同じ状態になります。
2) ハルシオン錠 インタビューフォーム
AUC27倍が意味すること
AUC(血中濃度-時間曲線下面積)とは、血中濃度のグラフの積分値のことで、”体内で作用する薬の総量”を意味します。これが27倍にまで上昇することは、薬によるトータルの作用が27倍に強まることを意味します。これは人体に大きな影響を与える危険性のある上昇です。
薬剤師としてのアドバイス:無関係に見える薬でも、相互作用が起こる
『イトリゾール』という水虫の治療薬、『ハルシオン』という睡眠薬、一見何の関係も無さそうに見える2つの薬でも、相互作用は起こります。
「全然関係のない薬だから、一緒に飲んでも大丈夫だろう」という認識は非常に危険です。
こうした思いもよらない相互作用による被害を防ぐためにも、お薬手帳を利用することをお勧めします。
+αの情報:パルス療法の際の併用薬は、個別に相談を
『イトリゾール』は、服薬と休薬を繰り返す「パルス療法」で使用することがあります。
休薬期間に入ると『イトリゾール』は通常7~8日程度で血液中から消失し、爪組織に移行し終わっていると考えられますが、このときに併用薬に気を付けるかどうかは、時と場合によります。
こうした個別のケースは主治医や薬剤師と相談するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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