2種類の点耳薬を処方されたが、どちらを先に使えば良い?~ステロイドと抗生物質の点耳液
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回答:順序はどちらが先でも良いが、混ぜない
中耳炎の場合、ステロイドと抗生物質の2種類の点耳薬を処方されることがあります。
使う順序によって効果に差が出るというデータはありませんので、医師から特別な指示を受けていない限り、どちらを先に使っても問題ありません。
ただし、2種類を同時に点耳することは避けてください。後から耳に入れた薬は、先に入っている薬に邪魔されて患部まで到達せず、効果が得られない恐れがあります。場合によっては耳から溢れてしまうことになります。
必ず、1種類ずつ点耳するようにしてください。
回答の根拠①:ステロイドと抗生物質の併用療法
『リンデロン点耳液(一般名:ベタメタゾンリン酸エステル)』のようなステロイドと、『タリビッド耳科用液(一般名:オフロキサシン)』のような抗生物質を併用することは、中耳炎の治療に効果的であることが知られています1)。
1) Pediatrics.113(1 Pt 1):e40-6,(2004) PMID:14702493
しかし、この併用に際して投与順序によって治療効果が変わるといった報告はこれまでのところありません。どちらを先に使っても効果は同じと考えられています。
回答の根拠②:薬は「中耳腔」まで届かせる必要がある
通常、中耳炎では鼓膜の後ろにある「中耳腔」という部分に、細菌感染と炎症によって分泌された膿や分泌物が溜まり、これによって鼓膜が圧迫されて痛みを感じます。
つまり点耳液は、細菌感染と炎症が起こっている「中耳腔」に届かせる必要があります。
先述のように2種類まとめて点耳すると、後から入れた薬は「中耳腔」まで届かない可能性があります。
では1滴ずつ交互に点耳すれば良いかというと、そういうわけでもありません。確かに、耳は眼よりも容量が大きく、多めの液体でも収容できます。しかし、2種類の薬が完全に均等に混ざっていなければ場所によって効果にムラが生じる原因になります。(※院内処方では、均等に調剤して使用する場合もあります)
現在のところ、ステロイドと抗生物質の点耳液を混ぜても、何かの化学反応が起きるといった報告はありません。しかし、今後も新しい薬やジェネリック医薬品が普及していく中で、全ての組み合わせで100%問題がないとは言い切れません。
いずれ、合剤が販売されるようになれば一度で済むようになりますが、現在のところは個別に点耳をする必要があります。
薬剤師としてのアドバイス①:忙しければ5分でも良いので、個別に使用する
中耳炎で使用する点耳液は通常、薬で耳を浸した状態(耳浴)を10分間維持します。10分の耳浴が終わったら液を耳から出します。
2種類の薬を使う場合、すぐに次の薬を使っても問題ありません。特に間隔を空ける必要はありません。
しかし両耳に2種類、朝夕の点耳を行うと、合計で80分もの時間がかかります。特に朝の時間帯にのんびり40分も耳浴をしていられない、という人はたくさんおられます。
そういった場合でも、混ぜて使用することは避け、耳浴を各5分ずつに短縮する方が無難です。どうしても時間をとれない場合は医師と相談するようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:点耳薬は、使う前に手で人肌に温めて
冷たい液体を耳に入れると、左右の耳の血流量が変わることなどによって「めまい」を起こすことがあります。
そのため点耳薬を使う際には、薬を手で人肌に温めてから使うことをお勧めします。
+αの情報:ステロイドと抗生物質
『リンデロン点耳液』などのステロイドは、炎症を抑える薬です。中耳炎などで起きている炎症を静め、痛みや痒み、腫れを治します。
『タリビッド耳科用液』などの抗生物質は、感染している細菌を退治する薬です。
全く異なる作用を持つ薬のため、どちらか1つを使っていればそれで良いというわけではありません。2種類を処方された時はどちらも使用するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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