『メサペイン』ってどんな薬?~WHO除痛ラダー4段目に相当する最強鎮痛薬
回答:他の鎮痛薬で治療困難な場合に使う、最終手段
『メサペイン(一般名:メサドン)』は、他のオピオイド鎮痛薬では効果が得られないような場合に使う、最終手段としての鎮痛薬です。他のオピオイド鎮痛薬で耐性ができてしまった場合や、薬の増量では十分な鎮痛効果が得られなくなった場合に限り、使用を考慮します。
『メサペイン』は「強オピオイド」に該当する強い鎮痛効果に加え、神経の痛みに対する緩和効果も併せ持つ特殊な薬です。また、鎮痛効果が発揮されるまでの時間も短く、頓服(レスキュー)としても使用できます。
極めて特殊な薬のため、処方する医師も試験に合格する必要があり、また調剤する薬局でも調剤責任薬剤師を登録する必要があります1)。
1) 薬審査発0928第11号 平成24年9月28日
回答の根拠①:オピオイドは交差耐性が不完全
「交差耐性」とは、1種類の薬物に対して耐性を獲得すると同時に、似たような構造の別の薬物に対する耐性も獲得してしまうことです。例えば、アルコールを常飲している人には麻酔が効きにくい、といったものが挙げられます。「モルヒネ」をはじめとするオピオイド鎮痛薬では、こうした「交差耐性」が不完全で、似たような構造の別の薬に対する耐性をあまり生じません2)。そのため、がん疼痛に対しては「オピオイドローテーション」という鎮痛薬の種類を変えていく方法が採用されています。
2) 日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」 (2010)
『メサペイン』もこうした理由から、他のオピオイド鎮痛薬が効きにくくなってしまった場合でも十分に鎮痛効果を得ることができると考えられています。
回答の根拠②:『メサペイン』の鎮痛補助効果
『メサペイン』はオピオイドμ受容体に作用する鎮痛効果だけでなく、NMDA受容体拮抗作用も併せ持っています。NMDA受容体が活性化すると、神経細胞が過敏化し、痛覚過敏やアロディニア(中枢性感作)を引き起こすことが知られています。『メサペイン』はこのNMDA受容体に拮抗することで、癌による神経障害性疼痛の緩和にも効果が期待されています2)。
回答の根拠③:効果発現と持続時間
『メサペイン』は効果発現時間が30分とされています2)。その一方で半減期も38.3~40.3時間と長く、定時薬としても使用できます3)。3) メサペイン錠 添付文書
ただし、使用を始めてから7日間は増量できない上、モルヒネとの換算比率も確立されていないため、用量設定が非常に難しく、疼痛治療に精通した医師しか適切に使用できない特殊な薬です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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