『マグミット』に半減期はある?~吸収されずに効果を発揮する薬
回答:そもそも吸収されないので、半減期もない
「半減期」とは、血液中の薬の濃度が半分に減少するのにかかる時間のことです。
『マグミット(一般名:酸化マグネシウム)』のように、そもそも消化管から吸収されない薬は、血液中に薬が到達することもないため、「半減期」も存在しません。
回答の根拠:『マグミット』の作用機序
『マグミット』などの「酸化マグネシウム」製剤には、酸を抑えることで胃粘膜を守る効果(制酸作用)と、腸内で水分を集めて便を柔らかくする効果(緩下作用)があります。
※制酸作用
酸化マグネシウム(MgO)は、胃酸(HCl)を中和することにより制酸作用を発揮します。
MgO+2HCl→MgCl2+H2O
この重炭酸塩や炭酸塩は水分を集める性質があり、これによって腸管内容物を軟化させます。また、水分を集めることで腸管内容物は膨張するため、それが腸管を刺激し、排便を促します1)。
1) マグミット錠 添付文書
このように『マグミット』は血液中に吸収されることなく、「酸化マグネシウム」という物質が排泄されるまでの過程、その道中で起こす化学反応によって効果を発揮します。
そのためCmaxやT1/2など、薬の効果の指標になる体内動態データはありません2)。
2) マグミット錠 インタビューフォーム
血液中に吸収されない薬
多くの薬は、消化管などから吸収されて血液中に入り、全身をめぐることで効果を発揮します。しかし『マグミット』のように、消化管内だけで作用する目的の薬であれば、吸収される必要はありません。
※消化管から吸収されない薬の例
『ビオフェルミン』・・・整腸剤。腸内に善玉菌を供給することが目的
『バンコマイシン』・・・抗生物質。腸管内を殺菌する目的で内服することも
薬剤師としてのアドバイス:ごく微量の吸収に留意する
「吸収されずに効果を発揮する薬」であっても、ごく微量は血液中に吸収される可能性があります。特に、微量元素は「微量」で作用があることから、特に気を付ける必要があります(例:「亜鉛」と「銅」のミネラルバランス)。
そのため、長期間に渡って使い続けていた場合には、吸収された「マグネシウム」が身体に何らかの影響を与える可能性はゼロではありません。
『マグミット』の添付文書にも、長期使用した場合の「高マグネシウム血症」に対する注意書きがされています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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