『リフレックス』ってどんな薬?~NaSSAとSSRI・SNRIの作用機序の違い、眠気や太る副作用
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回答:1週目から効果が得られる、新しい抗うつ薬
『リフレックス(一般名:ミルタザピン)』は、これまでのSSRIやSNRIとは全く異なる作用によって、飲み始めの1週目から効果を得られる新しい抗うつ薬です。
うつ病の治療でよく使われる薬には、『パキシル(一般名:パロキセチン)』などのSSRIや、『サインバルタ(一般名:デュロキセチン)』などのSNRIがあります。
しかしこれらの薬は、飲み始めてから効果が現れるまでに2週間以上かかることがあり、これが薬を飲み続けられない大きな要因になっています。
その点、『リフレックス』であれば飲み始めた週から効果が得られるため、その後も飲み続けやすく、確実な治療を行うことができます。
また、『リフレックス』には眠くなったり、食欲が増えたりする副作用がありますが、これによって睡眠薬を減らす、基礎体力をつけるといったように、副作用をうまく利用する方法もあります。
回答の根拠①:「NaSSA」の特徴~SSRI・SNRIとの違い
『リフレックス』は、「ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(Noradrenargic and Specific Serotonergic Antidepressant:NaSSA)」に分類される、新しい抗うつ薬です。
従来のSSRIやSNRIと比べると、以下の大きな違いがあります。
①直接「ノルアドレナリン」や「セロトニン」を放出させる (作動性)
②「セロトニン」を正しい受容体へ導く作用がある (特異的)
この2つの作用の違いによって、SSRIやSNRIよりも速く、より高い治療効果が得られると考えられています。
1.直接「ノルアドレナリン」や「セロトニン」を放出させる (作動性)
『リフレックス』は、脳のシナプスにある「α2受容体」を遮断(ブロック)します。
この「α2受容体」は、「ノルアドレナリン」や「セロトニン」の放出に対して”ブレーキ”をかけています。この「α2受容体」を『リフレックス』が遮断すると、”ブレーキ”が外れます。
その結果、「ノルアドレナリン」や「セロトニン」の放出量が増えます1)。
1) リフレックス錠 インタビューフォーム
シナプスへの再取り込み(=回収)を阻害することで、間接的に「ノルアドレナリン」や「セロトニン」の量を間接増やすSSRIやSNRIとは異なり、『リフレックス』は「ノルアドレナリン」や「セロトニン」の量を直接増やす作用があります。
そのため、より速い効果が得られると考えられています。
実際、『リフレックス』は治療開始1週目から抗うつ効果を発揮することが確認されています2)。
2) 臨床精神薬理.12:289,(2009)
2.「セロトニン」を正しい受容体へ導く作用がある (特異的)
「セロトニン」の受容体には、いくつも種類があります。
不安などの感情に関係し、うつ病の病態にも深く影響しているのは「5-HT1A」の受容体です。
ところが、単純に「セロトニン」の受容体を刺激するだけでは、「5-HT2」や「5-HT3」といった別の受容体にも作用し、薬の効果が分散してしまいます。
『リフレックス』は、「5-HT2」や「5-HT3」といった別の受容体を阻害する作用があります1)。これによって、抗うつ薬として必要な「5-HT1A」への作用を間接的に高めることができます。
そのため、他のSSRIやSNRIと比べて抗うつ作用を高め、吐き気や下痢などの副作用を減らすことができると考えられています。
実際、『リフレックス』は数ある抗うつ薬の中でも、最も有効性が高い薬として評価されています3)。
3) Lancet.373(9665):746-58,(2009) PMID:19185342
薬剤師としてのアドバイス:副作用の眠気や食欲増加は、うまく利用する
『リフレックス』は、副作用の眠気や食欲増加が高い頻度で起こります。しかし、これらの副作用はうまく利用することもできます。
強い眠気をうまく利用すれば、一緒に使う睡眠薬を減らすことができます。
食欲増加をうまく利用すれば、うつ病で低下している基礎体力を取り戻すことができます。
このように、『リフレックス』は眠気や食欲増加の副作用が多いことがよく指摘されていますが、その副作用は必ずしも望ましくないものになるとは限りません。
ただし、自動車運転などの作業が必要な場合や、太ることが気になる場合などには適していません。治療する上で、気にならないこと、気になることは医師・薬剤師に伝え、自分にとって最適な薬を選ぶことをお勧めします。
+αの情報:『リフレックス』と『レメロン』
『リフレックス』と『レメロン』は、どちらも有効成分は「ミルタザピン」の薬です。販売会社が違うと商品名も異なるため、一見すると別の薬のように見えますが、実際は全く同じ薬です。
こうした名前だけが違う併売の薬は他にも色々あります(例:『シングレア』と『キプレス』)。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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