ビタミンは摂り過ぎても大丈夫?~脂溶性ビタミンの過剰症に注意
回答:脂溶性ビタミンの過量摂取は危険
ビタミンには「水溶性」のものと「脂溶性」のものがあります。 「水溶性」のビタミンは、多少摂り過ぎたところで尿として排泄されるため、身体に蓄積することはありません。
「脂溶性」のビタミンは、身体に蓄積しやすいため、必要以上に摂取すると副作用を起こす恐れがあります。
なにごとも”過ぎたるは及ばざるが如し”です。何かのビタミンが良いと聞いたからといってそればかり摂るような偏った食生活や、必要以上にサプリメント等で摂取するようなことは控えるようにしましょう。
ただし大原則として、ビタミンは1日や2日過剰になったり不足したからといってすぐに大きな影響が出るものではありません。過剰状態や不足状態が長く続くと、過剰症や欠乏症を起こす恐れがある、というものです。
詳しい回答①:水溶性ビタミンは、こまめに摂取する必要がある
「水溶性ビタミン」には以下のようなものがあります。ビタミンC(アスコルビン酸):『シナール配合錠(一般名:アスコルビン酸 + パントテン酸)』
ビタミンB1(チアミン):『アリナミンF糖衣錠(一般名:フルスルチアミン)』
ビタミンB2(リボフラビン):『ハイボン(一般名:リボフラビン)』
ビタミンB3(ナイアシン)
ビタミンB5(パントテン酸):『シナール配合錠(一般名:アスコルビン酸 + パントテン酸』
ビタミンB6(ピリドキサール):『ビタノイリン』や『ノイロビタン』に配合(後述)
ビタミンB7(ビオチン):『ビオチン散(一般名:ビオチン)』
ビタミンB9(葉酸):『フォリアミン(一般名:葉酸)』
ビタミンB12(シアノコバラミン):『メチコバール(一般名:メコバラミン)』
※その他、複数のビタミンB群が配合されている医薬品の例
『ビタノイリン(一般名:フルスルチアミン + リボフラビン + ピリドキサール + ヒドロキソコバラミン)』
『ノイロビタン(一般名:オクトチアミン + リボフラビン + ピリドキシン + シアノコバラミン)』
これら「水溶性」のビタミンは、まとめて摂取しても身体に蓄積できません。毎日欠かさずこまめに少量ずつ摂取する必要があります。
そのため、『シナール』や『アリナミンF』、『ビオチン』、『メチコバール』などの水溶性ビタミンの薬は、1日3回に分けて服用する必要があります。
多少多めに摂取しても、尿として排泄されていくため、あまり大きな副作用もありません。大抵の場合、ビタミンB群を摂り過ぎでも尿が黄色くなる程度です。
しかし過剰状態が長く続くと、他のビタミンやミネラルの吸収に影響したり、神経障害や味覚障害、炎症、嘔吐・下痢などを起こす恐れもあります。ほどほどにしましょう。
詳しい回答②:脂溶性ビタミンは、不足と過剰の両方に注意する
「脂溶性ビタミン」には以下のようなものがあります。ビタミンA(レチノール):『チガソン(一般名:エトレチナート)』
ビタミンD(カルシフェロール):『アルファロール(一般名:アルファカルシドール)』
ビタミンE(トコフェロール):『ユベラ(一般名:トコフェロール)』
ビタミンK(フィロキノン):『ケーワン(一般名:フィトナジオン)』
これら「脂溶性」のビタミンは、身体に蓄積しやすい性質を持っています。そのため過量摂取すると副作用を起こす恐れがあります。
※「脂溶性ビタミン」の過剰症
・ビタミンAの過剰・・・皮膚・粘膜の乾燥、脱毛、肝障害、口唇炎 1)
・ビタミンDの過剰・・・高カルシウム血症、腎障害 2)
・ビタミンEの過剰・・・ほとんどない
・ビタミンKの過剰・・・高ビリルビン血症 3)
1) チガソンカプセル 添付文書
2) アルファロールカプセル 添付文書
3) ケーワン錠 添付文書
薬剤師としてのアドバイス:偏った食事や、大量のサプリメントに注意すれば問題ない
よく、過剰摂取に対して物凄く神経質になる方がおられます。しかし、「脂溶性」ビタミンであっても、たまたま1日少し摂取量が多かったからといって、すぐに過剰症を起こすというわけではありません。あくまで、”過剰摂取が長く続くと、あまり良くない”という解釈で問題ありません。敬遠し過ぎて欠乏症になってしまっては本末転倒です。
しかし、ビタミンAに限っては非常に作用が強いため、多少は神経質になる必要があります。ビタミンAが豊富に含まれるイシナギやアンコウの”肝”を大量に食べるだけでも、ビタミンA過剰による食中毒を起こすことも知られています。
また、ビタミンA製剤である『チガソン』には特殊な注意事項がたくさんあります。
※『チガソン』の注意事項 1)
女性:催奇形性があるため、投与中及び投与中止後少なくとも2年間は避妊する
男性:精子形成に異常を起こす可能性があるため、投与中及び投与中止後少なくとも6ヶ月間は避妊する
男女共通:投与中及び投与中止後少なくとも2年間は献血を控える
+αの情報:ビタミンの形は様々なので、名前も色々ある
ビタミンには「誘導体」のように、似た形でも同じようにビタミンとして機能するものがあります。そのため、例えば「ピリドキサール」も「ピリドキサミン」も、どちらもビタミンB6である、といったことが起こります。物質名が違うからまがい物、というわけではありません。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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